3D CAD
機械図面でも建築図面でも、図面を作図ためには一般のCADで十分で、むしろその方が適しているのですが、形状を立体的に把握する必要がある場合、以前は模型を作るしか手がなかったのですが、現在では3D
CADがこれを可能にしています。これに加え、3Dプリンタの普及が3D CADの可能性を更に広げていくものと思われます。3D CADのもう一つの重要性は力学のシュミレーションでしょう。3次元解析は2D ADでは当然厄介な分野です。応力による変形や座屈、熱反応や振動、流体の運動などが解析できる可能性を3D
CADは有してします。
ところで、従来の3D CADは速度も遅く、機能面でも厳しいものがありましたが、高速な64ビットPCの普及とともに 3D CAD もやっと高いレベルで使える
ようになってきているようです。
Autodesk
Fusion 360 の無償体験版は、年間売上10万ドル以下のユーザーなら、30日の試用期間が表示されている枠をクリックして、愛好家としてサインアップすることで、試用期間後も使い続けることができる高性能CADです。
ただし、Fusion の最大のハードルは、その操作方法の複雑さでしょう。同社の英語版入門ビデオを見ただけで自由に使い回せるほど簡単ではありません。加え、その翻訳マニュアルは日本語文字で書かれてはいますが理解するには厳しいものがあります。
2D CADは、「円」を選び → 「中心と半径で描く」を選び → 中心座標と半径を入力
などのように、促されるデータを入力するだけで簡単に作図できたのですが、3D CADの場合は、球やトーラスなど、予め用意され幾つかの立体形状(フォーム)以外は、かなり作図操作が厄介で、そこに要求される幾何学知識も文字通り次元の違うレベルが要求されることになるでしょう。
しかし、2D CADでさえ、製図法こそ確立されているものの、レイヤを使って図面化していく手法は今だ統一されていない現状を考えると、3D CADが未開の世界であってもしかたないかも知れません。
そんな訳で、ここでは、なるべく基本的な操作を中心に試してみます。当たり前ですが、CADのすべての機能を使いこなすのは無理で、また必ずしも必要ではありません。偶然できた操作が、再現できない、といった時もあきらめずに、あれこれ試してみるのが、唯一の近道のようです。
◆Fusion 360 でできる作業
Fusion 360 の基本的な作業は3D図形を作成する「モデル」ですが、「モデル
▼」と表示されている
▼の部分をクリックすることで、他にできる作業が表示されます。
体積のあるソリッドモデルを扱う「モデル」に対し、
パッチ作業は、体積の無い、表面だけを扱うCADです。直接ソリッド化することが困難な形状であっても、パッチ作業により、表面を切ったり接合した後に、これをソリッド化することで、三次元化の可能性がより広くなります。
シートメタルは板金加工のCAD。
レンダリングと
アニメーションは設計を高度に視覚化するツールですが、
シュミレーションは加重による変形と座屈破壊を再現します。
図面は製図CADです。3D CADで作成した図形を基に投影図(ただし第一角法)を作成することができます。
モデル 作業で使えるツール
↓元に戻る
主要なツールは
スケッチ | 作成 | 修正 | アセンブリ | 構築 | 検査
と
選択 です。
各ツールの
▼ マークをクリックすると、実際に使えるツールが出てきます。
大雑把にいうと
スケッチ で立体図形の基礎となる二次元図形を描き、
作成 で、それを立体に変え、
修正 で、立体を手直しして
アセンブリ で、立体と立体を組み立て
立体が持つ特異点や平面、軸などを取り出すのが
構築で、
立体を測定するのが
計測
そして、加工すべき図形を選ぶ操作が
選択
ということになります。
ただし、必ず、二次元図形をスケッチしてから立体を作成しなければならない、という訳ではなく、定型の立体は直接作成することもできます。
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スケッチツール: 3D図形の元になる二次元図形を作図します。
▼を押すと次のようなスケッチで使えるツールが表示されます。
作成ツール: 基本的にはスケッチされた二次元図形を元に三次元図形を作ります。
▼を押すと次のように作成で使えるツールが表示されます。
注)ソリッド(中実)立体は中が詰まっている立体。
下の例は円を回転してできた中空の球。見かけはソリッドの球と似ていますが中の立体が透けて見えています。
フォーム ツール: 作画平面上に直接三次元図形を生成し修正します。
作成したフォームを修正で変形
「フォームを終了」ボタンで終了
修正ツール: できた立体を部分的に変形したり、移動、コピーなどをします。
構築ツール: 図形の情報を示す点や軸、あるいは面を作ります。
スケッチ ツール
3次元図形の元となる2次元図形を作画します。
◆スケッチを作成
スケッチを開始するにあたり、スケッチする作画平面をクリックして選択します。
「スケッチを作成」ツールを使わずに直接、直方体や球を作成しようとすると、自動的にこの機能が挿入されることになります。
【スケッチとは?】
作図する平面はスケッチ平面、または作業面と呼ばれます。
スケッチ図とは、円柱なら円、四角柱なら四角形というような、立体図形の基礎となる2次元図形です。
立体化するためにスケッチに描かれる図形は立体の断面ですから、通常は閉じた図形です。
無論、立体化を目的としない二次元スケッチ図を描くこともできます。
スケッチ図は、ポイントすると青く表示される線や中心などの特異点を押さえて移動変形させることができます。
3D化する領域は選択して青色にします。下の例は、大きな長方形の中に小さな円をスケッチし、長方形の内側と円の外側の領域を選択ツールでクリックしたものです。これを押し出して長くすると、円柱状の中空空間を持つ四角柱が形成されます。
なお、スケッチされる作業面には方眼が表示されます。図形が立体化されても、この方眼はスケッチ図が描かれる面であることを表しています。
図形のスケッチが終わり、立体化が完了し、OKした後でも、スケッチする面を変更して、例えば、立体図形の何れかの面にスケッチすることもできます。
その場合は、
「スケッチを停止」ツールを使って現在のスケッチを停止してから、「スケッチを作成」を改めて実行し、スケッチする図形の表面をクリックします。そうすることで、スケッチ平面が正面に向いて、ここにスケッチすることができます。
ただし、部分平面でもあれば作画できるのですが、曲面にスケッチすることはできません。
左は四角錐台の斜面に円をスケッチした後、それを横から見た図です。斜面に方眼ができています。
下図は、その円を押し出して立体化した例です。
図形の表面でなく、後述の構築ツールにより作られたオレンジ色の平面にもスケッチすることができます。
スケッチを停止ツールを使うと、デフォルトのスケッチ平面が有効になります。
球やトーラスなどの立体図形は、スケッチなしで直接、作成することができますが、この場合もスケッチ平面という概念は使われているようです。
【画面の表示】
立体図形(コンポーネント)に接近したり、遠ざかるのはマウスのダイヤルを使います。
画面下に表示されている次のアイコンは画面の表示に関するコントローローラーです。
画面移動: 画面を手で掴んで、見やすい位置に移動します。
表示設定: →表示スタイル→シェーディング隠線エッジ表示
グリッドとスナップ: 定ピッチで図形を吸い込ませる場合はスナップを使います。
図形の向きを回転させるには、画面右上のサイコロ状のハンドルを使います。
サイコロ面には 上下左右前後 の6面があり、押さえて任意に回転させることができます。
また、サイコロの面や稜をクリックすることで、画面を特定方向に向けることができます。
【選択の使い分け】
選択ツールは多用するツールです。画面に選択すべき図形が一つだけならよいのですが、たくさんあったり、重なり合っている図形の中から、目的の図形だけを選択するのが困難な場合もあります。そんな場合は選択ツールの
▼ を押して、選択フィルタを指定します。下はコンポーネントかボディを選択できるようにした場合です。
【図形の特異点】
スケッチ図には、中心点を始め、図形としての特異点が表示されています。
また、輪郭線はポイントすると×で表示されます。
これらの特異点の情報は、後にも使いたい情報ですが、現状では図形の立体化の際に消えてしまうため、残したい場合は、加工物のケガキ線のようにスケッチ図の中に描き込んでおくか、または別途、立体化しない二次元スケッチ図を作っておく必要があります。
◆線分
マウスの左のボタンをクリックすると、線分の開始点が描かれ、次のクリックで、一本の線分が決定し、次の線分の開始点となります。ボタンを押さえて移動すると円弧を描くことになります。
途中、特異点が拾われると下図のように青い破線が現れたりします。
閉じた図形にするためには第1点の小さな丸に合わせてクリックします。
図形を閉じないで、線分のまま終了するには、右クリックで表示されるコマンドの中の OK を押します。
◆スロット
長丸を作ります。
一点目で長さの始点、2点目を押して長穴のスパンを決め、引きずって半径寸法を決めます。
なお、例に表示されているのは形状記号で、R、水平(垂直)、平行、などです。
◆スプライン
クリックした点を曲線で結びます。
◆フィレット
引かれている線分と線分の角を丸めるのがフィレットです。
◆トリム
スケッチされた図形と図形を交点位置から削除するのがトリムです。
◆破断と延長
スケッチされた図形を交点で切断するのが破断
破断された図形をつなぐのが延長です。
◆スケッチ寸法
スケッチ図に寸法を入れます。
辺の長さは、その辺をポイントすると青色に変化するのでクリックして、寸法表示位置まで移動して、決定のクリックをします。
辺がない寸法や、角度は、shift キーを押しながら寸法を決める2か所の図形をクリックして指定します。
なお、スケッチ寸法はスケッチを停止すると消えてしまいます。
◆オフセット
スケッチ図形に対し、指定する間隔で内側、ないし外側に図形を描きます。
【スケッチパレット】
スケッチ作業を開始すると、下のようなスケッチパレットが表示され、作画を補助します。
スケッチパレットが表示されない場合は、ツールバーのファイル → 表示 → 規定のレイアウトにリセット で呼出すことができます。
オプション
スケッチグリッド: スケッチ平面にグリッドを表示するか否かを指定します。
スナップ: スケッチ平面のグリッドにスナップ(吸い込み)するか否かを指定します。
拘束
ふたつの図形の向きや位置を合わせます。
例えば、線Aと線Bを直角にしたい場合は、直交の拘束ボタンを押してから、線Aを指定し、次に線Bを指定すると、線Aを基準に、線Bが回転して直行するように移動します。
なお、これによって、一方が他方に拘束されるため、一方だけを自由に移動することはできなくなります。
一致: 位置合わせ
同一直線上: 同じ線上に配置する
同心円: 円の中心を一致させる
平行: 一方の直線を他方と平行にする
直交: 一方の直線を他方と直角にする
接線: 線を円に接するよう移動する
中点: 注)shift キーを押しながらポインタを中点に接近させると表示される
作成ツール その1
スケッチ図を基に立体図形を作るのが作成ツールです。
◆押し出し
スケッチで「円」を作り、これを選択し、「作成」 ツールで 「押し出し」 ます。
押し出しハンドで押し出し高さ、テーパーハンドルで角度を調整します。
ボックスの選択項や値入力で形状を決めることもできます。
【プロファイルとは】
人物紹介で言う ”プロフィール Prifile” です。その人の横顔(輪郭)です。
3D CAD ではスケッチの輪郭が Profile です。
◆回転
スケッチで長方形と、長方形から離れた位置に縦方向に線分を描き、
表示されるボックスのプロファイルとして長方形を選択し、軸として縦の線分を選択すると、
◆スイープ
円をスケッチし、
スケッチを停止
円と直交するスケッチ面を選び スケッチを作成する で
スケッチ
▼ → スプライン
作成
▼ → スイープ
で、下図のように、プロファイルに作画した円を選択し
パスとして、作画したスプラインを指定すると
ただし、無理な形状のスプラインを作るとスイープできませんので注意してください。
構築 ツール
図形そのものを描くのではなく、図形の位置情報を示す点や軸、あるいは面を作り出すツールが構築ツールです。ただ単なる意匠デザインのためには、このツールはあまり重要ではないのでしょうが、製図機能を重視する場合は欠かせない機能です。
構築によって作られる点、軸、面は分析や計測に利用されるだけでなく、新たな図形作成のために利用されます。ただし、製図用 2D CAD には豊富な作図コマンドがありますが、Fusion360の以下の各種構築機能は必ずしも十分とはいえないでしょう。直接的に目的とする図形情報を構築できない場合は、より基本的なスケッチ図法を組み合わせて高度に使いこなす技量が要求されるかもしれません。
◆円/円錐/トーラスを通過する軸
◆円/球/トーラスの中心点
◆オフセット平面
円の中心の点や、多角形の角の点、円筒の中心軸、平面から隔たった(オフセット)面、などを取り出すことができます。
下は、作図された円柱から
A: 構築 →
円/円錐/トーラスを通過する軸
B: 構築 →
円/球/トーラスの中心点
C: 構築 →
オフセット平面 (ここでは円柱の側面から平行に隔たった平面)
を使って取り出した例です。
こうして作られた軸や面は何れも選択することができ、実際の図形と同様に取り扱うことが可能となります。
特に、オレンジ色の面は作画平面として使ったり、切断の作業平面として使うことができます。
◆
3点を通過する面
◆
傾斜平面
線や軸に対し指定角度で傾斜する面を作ります。
◆
点で面に接する平面
球やトーラスなどの表面に点で接する平面を構築するのは少し厄介です。
ここでは、既に出来上がっている状態のトーラスを例に取ってみます。
スケッチを作成 → 平面を作成する位置のトーラス表面をWクリック →
スケッチ
▼ → 点 (を目的位置に打つ。点はトーラス表面ではなく、内部にできる)
構成 → 点で面に接する面
作った点に続いて構築する面を表示する位置をクリック
注)点はトーラスや球の表面ではなく内部にできるので、構築面は点に最も接近した位置に生成されます。
◆
点上の垂直軸
作成ツール その2
作成ツールのやや難しい使い方です。
◆ロフト
ロフトは異なった形状のスケッチ図から、これを包みこむ立体を作り出すツールです。
下は、スケッチで円を描き、
構築ツールのオフセットで離れた位置に新しいスケッチ面を作り、
ここに長方形を描き、
作成
▼ → ロフト で
プロファイルで円を選択し、shift キーを押しながら長方形を追加して選択します。
ロフトは2面に限定されず、多層に渡るロフトが可能です。
◆リブ
壁面に棚板を取り付ける時、棚の強度を増すために設けるのがリブです。
壁面と棚板に相当するL型形状を線分でスケッチし、押し出して厚みを作っておきます。
新しいスケッチ面をオフセットで棚の奥行の中央付近に作成して、
棚と壁面構造の内部から支え部にかけて、三角形の補強リブ(下図、青色に見える部分)をスケッチし、
作成
▼ → リブ をすると下図のような画面が現れます。
深さオプションで、深さを選択し、
2個のハンドルで、厚さと深さを指定します。
三角リブではなく、中抜きされた筋交いリブもできます。
◆コイル
◆ねじ
ナットならポリゴンで六角を必要厚に押し出し、呼び径(タップ下穴径ではなく)の穴を開けておきます。
ねじツールを使い、穴の内面を選択するとねじが切られます。
ボルトの場合も同様に、ねじを切る軸を予め用意しておきます。
ねじのタイプなどの詳細も選択することができます。
フォーム
フォームツールは各種立体を簡単に作成でき、それを自在に修正することができるツールです。
寸法を重視しないグラフィック向きのツールです。
例えば、トーラスを少し変形させるだけでこんな立体になります。
図形操作というより、芸術の分野なので、ここでは深く立ち入ることは避けます。
修正ツール
作成された3D図形を細かく修正するのが修正ツールです。
◆フィレット
スケッチ → 作成 でできた図形の角を丸めるのがフィレットツールです。
角をポイントしてハンドル操作、または半径数値を入力します。
3コーナーを選択してタイプをセットバックにすると下図のようになります。
◆シェル
中を指定する厚さのシェル状にくり抜きます。
6面体の1面をシェル指定すると、下図のようになります。
◆結合
ターゲットボディとツールボディを「結合」、「切り取り」、「交差」の演算をします。
結合
切り取り ターゲットに6面体、ツールに円柱を指定。 OKすると赤くなった部分が切り取られます。
交差 黄色いツール部分も消え、重なっていた部分が残ります。
◆ボディを分割
トーラスを分割する位置に作業平面を作り、
修正 → ボディを分割 で分割ツールに作図平面を指定してOKすると分割されます。
【注】 分割しただけでは、コンポーネントは互いに独立していないので、一方だけを削除するような操作はできません。
一方を 修正 → 移動 すると、別なボディとなるため、削除できるようになります。
◆移動/コピー
下の例は、楕円を回転軸を中心として60°回転させた立体を、移動/コピーツールで選択し、「コピーを作成」にチェックを入れて120°回転し、再度、同じ操作をした結果です。コピーを作成にチェックを入れなければ移動になります。
アセンブリ ツール
立体図形のコンポーネントとコンポーネントを、CAD上で位置決めして組み立てるのがアセンブリツールです。
組み立てられる部品はボディではなく、コンポーネント(ブラウザの項を参照)である必要があります。
下の例では、コンポーネント1とコンポーネント2は、予め作成されているものとします。
ジョイントツールを使い、コンポーネント1の穴の手前側部分をポイントしてクリックします。
続いて、コンポーネント2の手前の面をポイントして同様にクリックします。
位置決めの用意ができると下図のように位置決めマークが表示されます。
用意が完了すると、栓がアニメのように移動してきて、板の穴に入り込み、組み立てが完了します。
もちろん、栓が大きすぎて穴に入らない場合は、組み立ては途中で停止してしまいます。
なお、組み立て方として、剛性(硬く締結)、回転(回転できる)、スライダ(スライド可)、のようなタイプがあります。
検査 ツール
3Dの図形を測定したり、コンポーネントの干渉を検査します。
◆計測
下図は、3D図形の頂点と頂点間の距離の計測です。スケッチの寸法と違い3次元空間での距離を測ることができます。
◆干渉
選択したコンポーネントが、干渉(衝突)しているか否かをチェックします。
計測する複数のコンポーネント全体を選択し、 検査 → 干渉 で 計算を指示すると、干渉部分が赤く表示され、その体積がわかります。
ブラウザ
同じように見える立体図形でもFusionで扱われる立体は必ずしも同じではありません。
例えば、上の二つの円柱、左はボディの円柱で、右はコンポーネントの一部のボディです。
外見上、この二つに円柱は同じように見えますが、実は異なっていて、左の円柱は、図形だけの存在ですが、右の円柱は、隣の球と組み合わされた、コンポーネントという仕組みの一部になっています。
言わば、”コンポーネント”は他の図形との結びつき方など、目に見えない情報までを含む表現なのに対し、”ボディ”は形状だけの情報です。
そして、このプロジェクトに扱われている図形間の関係を表示しているのが画面上にツリー構造で表示される 「ブラウザ」です。ファイルで言えば、ディレクトリに当たります。
上のブラウザ例で言えば、一番上の段の
▶(未保存) が、このの新プロジェクトで、名前は未だ付けていません。
プロジェクトの子供たちは一段右に下がって
▶マーク(正確には直角三角形)で示されています。
▷を押すと、更に詳細な構成を開いて見ることができます。
ボディの構成要素は1ケで、
ボディ1 は(大きい円柱)
コンポーネント1-1 の構成要素は2ケで、
ボディ1 は(小さい円柱)
ボディ2 は(球)
というのが、このプロジェクトの構造です。
これらの、「コンポーネント1-1」のように振られた名前は、わかりやすい名前に変更することができます。
◆図形の表示/非表示
操作のアクティブ/非アクティブ
ブラウザを使い、図形を表示するか否か、あるいは図形操作をするか否かを切り替えることができます。2D CADでのレイヤ操作に共通する点があります。
電球マークを点灯させると図形が濃く、または薄く表示されます(下例のコンポーネント1 [直方体と円柱]とコンポーネント2 [球])。
電球マークを消灯すると図形はまったく表示されなくなります(下例のコンポーネント3 [見えませんがトーラス])
ブラウザの●ボタンを押すと、図形は濃く表示され、図形の操作が可能となります。この状態をアクティブと言います(下例のコンポーネント2 [球])
ところで、プロジェクトにある全図形を個別のボディで表現するのではなく、コンポーネントとして扱うのは、その必要性があるからです。 例えば、
自動車の -
エンジンの -
ピストンユニットの - ピストンリング
のように分類する仕方は、これが関連するパーツの系列であって、まとまった単位で製造されたり交換されたりする重要な単位だからです。こういった単位は製造上ではユニットとも呼ばれますが、Fusionではコンポーネントと呼ばれています。コンポーネントは、無関係なパーツのよせ集めではなく、機能上、もしくは、製造上で、重要と考えられるパーツ、およびその組み立て方の集合ということができます。
また、複雑で高度な機能を持っていなくとも、それを他の仲間の部品と共に、コンポーネントとして扱う必要性がある場合は、ボディではなくコンポーネントとしておく方が便利です。
なお、実際の部品でも、Fusionの場合でも、上位のユニット/コンポーネントが”
親”で、下位が”
子”という関係にあります。コンポーネントの親子関係は、マトリョーシカ人形のような入れ子構造、正確に言えば、大きなマトリョーシカ人形の中に、更に複数のマトリョーシカ人形、といった構造が許されています。
【注】コンポーネントという概念は重要で便利な概念ですが、異なった担当者により、異なったプロジェクト間でコンポーネントが共有される場合は、管理の仕方によってはバージョン変更が困難になる可能性があるため、要注意です。
◆新しいコンポーネントの作り方
新しいプロジェクトを開始した後、
作成 → 新規コンポーネント
とすると、下のような画面が開きます。 ここで、できるのは、まだ中身の無い空のコンポーネントです。
名前を記入して、新しいコンポーネントに命名することができます。
親が選択済となっていますが、ここで言う親は、このプロジェクトのことです。
アクティブ化は、その図形を表示して操作できる状態にすることを意味しますから、通常はチェックします。
OKすると、ブラウザには中身が空のコンポーネント1が出来上がります。
コンポーネント1をアクティブにした状態で、次に、作成 → 直方体 で直方体の板を作り、この表面を選択し、2個の穴あけました。
それが下の図です。
また、コンポーネント1の名前を「板A」に書換ました。
ブラウザを見ると、板Aは、プロジェクト(未保存)の子になっていることがわかります。
下は、作成→新規コンポーネント で、新たなコンポーネント”ブロックA”を追加し、ねじ穴を加工した図です。
なお、作図に際して、スケッチや作画平面を作るとブラウザに残っていきますので、不要な場合はブラウザを右クリックして削除を指示します。
【コンポーネントの追加と移動】
上は、プロジェクトの下に
プロジェクト
└コンポーネント1
└コンポーネント2
└コンポーネント3
のように、子、孫、ひ孫、 までのコンポーネントをぶら下げて作った状態です。
ここで、コンポーネント1の子コンポーネント、つまりコンポーネント2の兄弟コンポーネントの作り方を考えてみます。
そのためには、コンポーネント1をアクティブにした状態で新規コンポーネントをクリックします(下図)
これで、下図のようにコンポーネント1の下に新しいコンポーネント4ができました。
コンポーネントを削除する場合は、該当するコンポーネントの名(下例ではコンポーネント2)を右クリックして、削除を実行します。
【コンポーネントの位置を移動】
下に示す部分を押さえてドラッグすることで、コンポーネントの所属位置を変更することができます。
コンポーネント4はコンポーネント1の子でしたが、プロジェクト(未保存)の位置でドロップすると、下のように、プロジェクト(未保存)の子になったことがわかります。
◆ファイルの保存
ファイル→名前を付けて保存 により、データはAutodesk社のサーバにアップロードされます。
もし、PC内にローカルで保存する場合は、 ファイル→エクスポート で 「ローカルコンピュータに保存」をチェックして、保存先のフォルダを指定します。
アップロードしたファイルをダウンロードするには
データパネルを表示 をクリックして、で該当するプロジェクトを選択します。
ローカルPCに保存したデータは、 ファイル → ファイルからデザインを新規作成 でファイルを選択します。
この場合、プロジェクト名は”無題”になってしまうため、保存する際はもう一度命名する必要があります。
◆右クリック コマンド
下図はトーラスに打った点を右クリックした時に表示されるコマンドです。
図形を消す「削除」と、入力の完了の「OK」と、「移動」は使うことが多いコマンドです。
下は、コンポーネントである円柱の側面を選択してから右クリックした時に表示される画面です。表の中のフィーチャー編集をクリック
◆代数演算式と
関数
数値に変えて代数演算式が使えます。
( ) 括弧
^ 累乗
- 単項マイナス
* 乗算
/ 除算
+ 加算
- 減算
sqrt( ) 平方根
PI 円周率
線分での入力例
2D CAD では、線分をN等分するようなコマンドがありますが、Fusion には用意されていません。しかし、計測した寸法と演算式を使うことで、間接的にそれが可能になります。
なお、 Fusionで使える演算式や関数はAutoDesk社として統一されているようでもなく、現在のところ、詳細は不明です。
パッチ 作業で使えるツール
ソリッドモデルは体積のあるモデルを扱いますが、パッチ作業は、厚みの無い面を扱います。
面は切ったり貼り合わせることが比較的容易なため、ソリッドモデルでは困難な形状を加工することができます。パッチ作業完了後、作成→厚み で ソリッド化にすることができます。
パッチ作業を行うためには、ツールバーの左端の「モデル」の表示をクリックして、「パッチ」を選択します。
◆パッチ
閉曲線である面の切り口にパッチを当て、閉じることができます。
下は、円を押し出し、その切り口を 作成 → パッチ で選択し、パッチを当てた例です。
接続/接線/曲率 の何れかを指定することができます。
◆ステッチ
隙間のある表面を繕って、繫げます。
下は、上下が開口した壺状の上部に蓋をステッチする例です。蓋と壺には1mm程の隙間があります。
修正 → ステッチ でshiftキーを押しながら、本体と蓋を選択して許容差の値を隙間以下に設定すると、ステッチ可能な隙間が緑色になるのでOKすると、蓋が本体と一体になります。
シートメタル 作業で使えるツール
シートメタルCADを選択すると板金CADに適したツールを選択することができます。
修正→シートメタル規則 で板厚(Thickness)などを設定します。
設定値を変更する場合は、材質の並びの鉛筆のマークをクリックします。
K ファクターは、 (曲げ内から中立軸までの寸法)/板厚 通常は0.4~0.5
Bend Conditions は曲げの条件
Bend radius : 曲げ内R 板厚×1.5 なら Thickness * 1.5 のように指定します。
Relief width : 逃げ切欠き幅
Relief depth : 逃げ切欠きの深さ
Relief remnant : 逃げ切欠きの残り
◆フランジ
基礎となる板金の部分をスケッチで作図しておいてから 作成→フランジ で曲げから先の部分を延長していくことができます。
例として、L字型(横30、縦20)を使います。
L部分を選択すると、設定した厚みが現れます。
曲げを立ち上げるエッジを指定し、曲げの高さを入力します。
曲げ内の高さと、外形の内側を立ち上げるように指定しました。
できた曲げです。
続けるとこのような加工が出来上がります。
なお、完成したら、 修正→展開 で展開することができます。
シュミレーション
◆静的応力
シュミレーションする図形を作成しておきます。
シュミレーション → 静的応力 → マテリアル ここでは鋼を選びます。
拘束 → 構造拘束 で、垂直面を選択すると錠のマークが表示されます。
加重 → 構造加重 下図のように、加重を加える部分を指定し、加える力の大きさを入力します。
なお、加重を掛けたい位置や方向が表示される力の方向と合わない場合は、実際の形状にはなくても、力を受ける面を作り出すことで、それが可能になります。例では加重面の先端部に高さ1mmの座を作っています。
解析 → 解析
クラウドを指定し(ローカルでは荷が重くなるようです)、スタディで解析を開始します。
下図のように解析結果が表示されます。色は安全率を表しています。
加重を増してみました。構造的に弱い部分が、より明確にわかります。
◆構造座屈
静的応力による分析では変形が大きくなるだけで、実際に起こる変形の様子がわかりません。
下は、Fusion 360の構造座屈シュミレーションを使い、1.6mm厚、コの字型鋼板の端部を固定し、反対側の上面に力を加えた時に発生した座屈です。
【注】 Fusion 360は、CADとして高い機能を持っているだけでなく、熱応力、シェイプ最適化など広範囲なシュミレーション機能を持っているようです。ただしこれらの機能をフルに活用するためには、PC自体の装備の充実性や、上位のUltimate版が必要とされるようです。しかし現状のFusion360でも、その持てる機能は驚異とさえ言えます。
◆3D CADの課題
多くの3D CADを試した訳ではありませんが、Fusion360は速度だけでなく、従来の3D CADが不得意としていた多くの弱点を克服しているようです。しかし、それでもなおFusion360、というより3D
CAD自体の本質的な性質からくる原因のためか、3D CADは厄介な問題を抱えています。
その第一は、データの作成が困難という宿命でしょう。我々が3D CADに求めてしまう対象は球や平面だけでなく、かなり自在な三次元図形ですが、天才彫刻家ではない我々庶民は、目の前の立体物のコピーでさえまともにすることはできません。まして3D
CADが用意するツールでをいくら使いこなせたにせよ、それは不可能でしょう。
無論、平面と線分の交点だけでなく、曲面と曲面の交わる線を抽出できるようにする、といった改良がなされれば、fusion360はより強力なツールになっていくでしょうが、そのために犠牲となる操作の煩雑性がどれ程のものになるか、私にはよくわかりません。もうしばらく、3D
CADの進む方向を注意深く見守ってみたいものです。