Top Page

    ブリッジ・センサー

交流ブリッジ回路は、以前から知られている回路ですが、これを応用した例は、あまり見ることがありません。ここでは、この交流ブリッジ回路を応用したセンサーを考えてみます。


CRブリッジ・センサー

用紙が2枚重なって給紙されてしまうことを防止する「重送検知」には、一般的に透過型フォトセンサーが使われますが、欠点として、印刷された用紙、特にベタ刷りされた用紙の判定が困難な点が上げられます。また、逆に、透き通ったシート材も検出が困難です。一方、超音波を利用するセンサーも近年実用化されつつあるようですが、反応速度の点に問題があり、装置の価格も上がってしまいます。

CRブリッジ・センサーは交流ブリッジ回路により、電極間の誘電率を検出することで、重送検知や、枚数検知をおこなうセンサーです。原理も構造も極めてシンプルです。

 図1  CRブリッジ・センサー回路と出力波形


図1はCRブリッジ回路センサーの例で、R1、R2、C1、C2がブリッジ回路を形成しています。

OPアンプU6周辺は発振回路で、交流ブリッジ回路に約350KHzの交流を供給しています。周波数は通常、数10k〜数100kHzの範囲内で、コンデンサ容量等を考慮して決めます。例ではOPアンプを使ったCR位相発振回路を使っていますが、他の発振回路でも構いません。ブリッジ回路は、発振周波数の安定性にはさほど影響されません。

交流ブリッジ回路の平衡条件は、
   Zc1・R1 = Zc・R2     (ただし、Zcは、コンデンサcnのインピーダンス)
ですから、抵抗 R1=R2 を使用した場合、C1の値とC2の値に差が生じると、OPアンプU1とU2には、それに応じた差分信号が加わることになります。

ところで、交流ブリッジ回路のコンデンサーのインピーダンスは
   Z=1/(2πfc)
ですから、上の回路のコンデンサーC2のインピーダンスは 
   Z=1/(2π・250×103 ・10×10^-12) = 63.7k
R1,R2は、この値に一致する必要はありませんが、近い値とします(例では47kΩ)

U1、U2、U3はインスツルメーション・アンプ回路を使って交流ブリッジ回路の差分を増幅しています。
U4、U5はピークホールド回路を使い出力波形を得ています。

C1とC2は、共に電極面積が約2400mm、電極間隔2mm、静電容量約10pFの電極ですが、極板は3枚で、共通極板を挟んで、基準コンデンサC2と、用紙搬送路を形成するC1から構成されています。搬送路の極板は用紙詰まりの時、開放できる構造が好ましいのですが、閉じた位置ではしっかりと固定される構造にします。

なお、ブリッジ・バランス微調整のトリマ用コンデンサないしボリュームは図を省略しています。電子ボリューム回路、またはバリキャップ回路を採用すれば、自動バランスをとることもできます。
何れにしても、ブリッジ・センサーの周辺回路は引き回さず、専用回路基板にマウントした方がいいでしょう。

空気の誘電率は、ほぼ1であるのに対して、紙の誘電率は5〜7ですから、電極間の体積比でC1の静電容量が増大することになります。
   用紙を含む誘電比 =  εp ・t /d   +  (1-t/d)
      d=電極間距離 t=用紙厚 εp=用紙誘電比 
用紙1枚の厚さを0.08mm、電極間隔2mm、用紙幅>電極幅、の場合、用紙が無い電極の容量が10pの場合、用紙がある電極は約12pとなります。

図2

図2は、電極間の容量が11pになった時の出力電圧。

図3


図3は、電極間の容量が13pになった時の出力電圧です。
このように、用紙枚数により出力電圧が変化するので、凡その枚数を検出することが可能です。

超音波センサーでは1枚と2枚の差は検出できますが、2枚以上の枚数を識別することはできません。ブリッジ・センサーをシュレッダーに適用して、過剰給紙によるロックを防止することができるはずです。
無論、電極内の誘電物質の量を検出するのではなく、電極自体の距離ないし、移動距離を検出することを目的とすることもできます。

お断り) 当ブリッジ・センサーは動作原理の確認のみで、実機への組込み、及び市販等はされておりません。




LRブリッジ・センサー

図4   LRブリッジ・センサー回路と出力波形


LRブリッジ・センサーは交流ブリッジ回路でインダクタが使われているだけで、基本的には先のCRブリッジセンサーの仲間です。このセンサーは、2組のコイルの透磁比を使って、例えば、コイル近傍の金属などの検出をすることができます。また、コイル内のコアの位置を検出することもできます。

コイルのインピーダンスは
   Z=2πfL
発振回路の周波数は約60KHzを使っていますから、R1,R2は10KΩとしています。

なお、ここで使っているコイルは、直径150mm、長さ10mm、巻き数300回、インダクタンス30mH です。
0.1mHの差により約3.6Vの出力が得られています。









inserted by FC2 system