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    実用的なCAD設計


Computer Aided Design は文字通り、「コンピューター補助による設計作業」、から来ているのですが、用途によって機能は異なっています。大きく分類すると、
 建築CAD
 機械CAD
 電気回路CAD
などが代表的なCADですが、CADの境界線は厳密に決められている訳ではありません。ただし、電気回路CADは、接続されていない部品の検査や、ネットリスト(端子接続情報)の生成などの機能を持っていて、回路パターンの設計に必要なデータも生成するなど、単に回路図を表示するだけの機能では無いという特徴があります。
これに比べ、建築CADと機械CADは、基本的には似ていて、付加機能上での違いがある程度といわれています。

さて、建築あるいは機械CADですが、どの入門書を見ても、作図機能の説明に終始しているようです。確かに、作図(製図)機能は重要な機能ですが、それはCAD機能の一部分でしかありません。

ここでは、CADをもう少し使いこなして、少々厄介な作図法とか、計算式を立てることが面倒な力学上の解析を、CADを使って求める方法などを通して、CADの可能性を少しでも広げてみたいと思います。



固定直線に接する支点運動する円

図1


図1で、円Aの半径は a で、点 o を中心として支点回転運動します。
線Lの位置は固定されています。
円Aを図左方向に振り、Lに接触する位置を求めます。

図2


直線Lを選択し、オフセット作図機能を選び、Lの右側を指定して、円Aの半径の寸法を入力します。つまり、Lから距離 a 離れた位置に補助線 L' を作図します。

支点 O を中心に、円Aの中心を通る補助円 A' を作図します。

補助線 L' と補助円 A' の交点を P とします。OA-OP の角度 T をCADを使って測定します。

図3


円Aを角度 T回転移動すると完成です。




固定円に接触する支点運動する円

図4


円Aの半径は a で、点 o を中心として支点回転運動します。
円Bの半径は b で、位置は固定されています。
円Aを図左方向に振り、円Bに接触する位置を求めます。

図5


円BをCADで選択し、オフセット作図機能を選び、Bの外側を指定して、円Aの半径の寸法を入力します。つまり、Bを中心に半径 a+b の補助円 B' を作図します。

支点 o を中心に、円Aの中心を通る補助円 A' を作図します。

補助円 B' と補助円 A' の交点を P とします。OA-OP の角度 T をCADを使って測定します。

図6


円Aを角度 T 移動すると完成です。





力の合成

図7


上図のように二つの力があって、この合力を求める問題はCADの得意とするところです。
先ず、各力とも、力線の長さを力の割合に修正します。25Nなら25mm、50Nなら50mmというようにです。
線長の修正は何れかの始点を中心として値分の半径で円を描き、線を選択してから 調整→長さ のような操作でできます

図8


F1の上にF2の合力を作図する方法は、平行線のコマンドを選び、F1の終点を選択して、F2の長さを入力します。
あるいは、コピーコマンド→平行コピーでF2の始点を選択してからF1の終点を指定してもOKです。
こうして出来た補助線L1の終点に向かってOから合力の線を引き、平行寸法を引き出します。例図では66.6Nとなっています。



力の方向と可動方向が異なる力

図9


力が掛かる方向と、機構が動ける方向が違う場合も、有効な力はCADで簡単に求められます。
まず、力の方向へ、力の大きさの相当した長さの線を描きます。

図10


力線の始点Oから、動ける方向の線に平行な補助線L2を描か、または平行コピーします。
線→垂線 で、力線の終点からL2に垂線を描きます。
Oから垂線の交点までの平行寸法を作図します。

【注】 「押す方向と動ける方向が直角なら力はゼロになってしまう」 という原則を頭の中に描いておくと、補助線の方向を間違えなくて済みます。




着力点が異なる力

図11


図11のように、壁面に紐で吊るしたレバーの先端を下側に荷重をかけた場合、紐にかかる張力はどのくらいになるか?
こういった問題は、モーメントの釣り合いと、紐とレバーの角度から計算する比較的簡単な問題ですが、日頃同じ問題を解いている訳でもない人間にとっては、立てた式が合っているか不安になってしまう場合もあります。
CADを使うと、計算式を立てずに視覚的に近似値を求めることができます。

図12


CADで力やトルクを求める場合は、微小変位法を使います(微小といっても、数学の微分ではありませんから、作図しやすい程度の小さい寸法/角度の変化という意味です)。

図12で、黒く描かれたレバーと紐は、図11で使った図ですが、青いレバーと紐は、レバー先端を下に1mm押し下げた時、紐がどれだけ伸びるかを、作図で求めた図です。レバーの下1mmにオフセット直線を引き、支点を中心として先端を通過する円を作図し、同じく紐が架かった位置の変位点を作図で求めます。紐が伸びる前の位置と、伸びた後の位置の平行寸法を作図します。

入力と出力の仕事量は同じですから、

 入力位置の変位 × 入力の圧力 = 出力位置の変位 × 出力の圧力

比で表すと、

 入力位置の変位     出力の圧力
  ------------   =   ---------
 出力位置の変位     入力の圧力

です。 上の場合、紐に掛かる力はレバー先端へかけた力の、 1/0.468 ≒ 2.14 倍ということが分かります。入力が5Nなら10.7Nの張力が発生するという訳です。



負荷に必要なトルク

図13


図13は、モーターから変速機を介して、ドライブされるカムが、カムフォロワーを揺動する力Fを求めるCAD作図です。

先ず、カムを、負荷を求めたい角度位置、例えば、最大負荷が発生すると考えられる位置にします(実線カムの位置)。
次にカムを微小角度振って作図します(1点鎖線)。

回転したカムに接するカムフォロワの位置を作図し、揺動弧長を求めます(例図では1.903mm)。

この微小角度に相当するモーターギヤの回転角を減速比/増速比で計算して作図します。
モーターギヤ中心から、半径10mmで、回転角に相当する弧を作図し、弧長を作図します(例図では12.566mm)。

 モータートルク(N・cm) × 12.566 = F × 1.903

からFを求めることができます。あるいは逆に、必要なモーターを選定することができます。
考え方は前例と同じです。一般的に式を立てることが困難な機構でも、作図に基づいて、力やトルクの近似値を求めることができます。

【注1】 ただし、機構部の摩擦が無視できない程大きい場合は、効率を計算に入れる必要があります。例えばギヤの場合は、1段あたりの効率は 0.9〜0.95 と考えます。

【注2】カムフォロワが接する位置のカム外形が円形や直線の場合は、前出の方法で接する位置を求めることができますが、それ以外の曲線の場合は、図形を拡大して目視で位置を求めるしか無い場合もあります。しかし表示される図形が簡略表示されている場合もありますので、あまり微小過ぎる変位は避けた方が無難です。



カムの簡易設計
図14


カムの本格設計には工学計算ができる専用ソフトが必要とされますが、通常のCADでも、精密カムは無理ですが、レーザーまたはワイヤーカットで加工できる簡易板カムなら設計することができます。

図は、カムフォロワを、ほぼ等速運動させるカム。 カム基礎円、ストローク幅、カム有効角を決め、分割角度毎に点を作図します(図の白い点)。例ではストローク 38.48 、有効角260°。 分割角度10°あたりの増分は1.48mm。
内側の点1、2、3 を通過する接円を作図し、1-2間の円弧のみを残し、他は削除します。
同様に、点2、3、4を通過する接円を作図し、2-3間の円弧のみを残し、他は削除します。
上図は、点8、9、10通過する接円の作図です。 図15は、円弧8-9付近の拡大図

図15


各円弧の中心座標と、各点の座標を指定して図面化します。
分割を細かくする程、仕上がりは良くなります。
等速でないカムも遷移図を元に設計することができます。






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