回路図CADの使い方

電気回路専用のCADは、製図CADなどとは根本的に違う機能を持っています。製図CADを工夫して使っても、配線や抵抗、コンデンサなど、それらしい図はもちろん描けるのですが、回路CADは単に図形を作成するだけに止まらない機能を持っています。

その第一の特徴は、部品のシンボルを内蔵していることです。各種電子部品のシンボルを呼び出して配置し、それを配線で接続する機能があるのです。無論、新しいシンボルを編集する機能もあります。

第2の特徴は、出来上がった回路のチェックが自動的にできること。未接続な端子や不適切な接続が無いか検査する機能があります。

もう一つの重要な特徴は、全ての部品間の接続状態をネットファイルとして出力する機能です。これにより、回路図と基板パターン双方のネットデータの突き合わせによる自動チェックが可能になります。

ごく小さい基板は手書き設計でもできますが、やや規模が大きな基板になると、この回路図エディタCAD無しでは不可能とさえ言えるでしょう。

回路図エディタとしては、ORCAD が有名ですが、BSch3Vはフリーながら優れた日本製回路図エディタです。
 ネットリスト作成ツールのnl3
 部品ライブラリ作成ツールのlcov
 部品番号振りなおしツールのnut3w
 部品リスト作成ツールのpl3w
と合わせて、回路基板設計には欠かせないツールです。



BSch3Vの操作画面

 【ファイル】
  新規作成、開く、上書き保存、等通常のファイル操作です。
  印刷オプションで図面枠やパーツの印刷の有無を設定できます。

 【設定】 → ライブラリ
  パーツのライブラリを指定します。
  BSch3Vを c:\ にインストールした場合は c:\BSCH\LIB に、
   analog.lb3 (アナログIC)
   consw.lb3 (コネクタ、SW)
   digital.lb3  (デジタルIC)
   discrete.lb3 (GND,Vcc,R,VR,L,C,Tr,D,LED,FET,,等)
   logic74.lb3 (74シリーズIC)
  の各ライブラリが予め用意されています。
  また、別のライブラリのフォルダを作り、設定でaddすることもできます。


 【パーツ】
  パーツのボタンをクリックして、編集画面でもう一回クリックするとライブラリの
  中のパーツを選択する画面が現れます。
  OKでパーツを編集画面に置くことができます。

 【選択】
  パーツを選択状態にします。選択されたパーツは位置を動かすことができます。
  また、選択したパーツを右クリックして以下の操作ができます。
   切り取り
   コピー
   アトリビュート
     番号入力  (例 R1、U5)
     値または名前の入力 (例 4.7k、LS00)
     使用ブロックの番号選択 (7400のように複数ブロックがある時)
   ミラー (鏡反転)
   回転

 【ドラッグ】
  左クリックで範囲を指定し、配線したまま、引き回すことができます。

 【バス線】
  バスラインを引きます。

 【配線】
  単線を引きます。
  なお、接続されていない端子はDESCRETEライブラリのNOCONNECTONの×記号を使います。

 【接合点】
  単線と単線の交点を接合します。

 【バスの入り口、単線の入り口】
  バスラインからバスラインへ接続したり、バスラインへ単線を接続します。

 【タグ】
  配線の行き先タグをつけます。

 【ラベル】
  バスラインから分かれた単線にラベルをつけます。
  同一ラベル名の信号線は互いに接続された状態になります。間違って同一名を付けても当然ながら
  エラー検出されませんので要注意!

 【コメント】
  注釈です。説明文にも使いますが、ラベルの代わりに単線に信号名を振って置く場合にも使います。

 【破線】
  回路の線ではなく、連動スイッチの関係や、シールドなどを表示します。


     BSch3Vで作成した回路図




パーツリスト作成ツール(PL3W)
BSch3Vで作成した回路図から使用部品のパーツリストを作成します。
RefでCE3ファイルを指定し、Executeすると、csvファイルができあがります。csvファイルはExelで
読み込むことができます。

部品番号振り直しツール(NUT3W)
回路を作っていくと部品番号の位置があちこちに跳んでしまいますが、このユーティリティで再配置できます。
参照でファイルを指定し、実行します。

ネットリスト生成ツール(NL3W)
BSch3Vで作った回路からネットリスト(.net)を作ります。推奨フォーマットは telesisです。
なお、エラーレポート(.rpr)も同時にできますので、 Unconnect 等がないかどうか確認してください。
回路図上では繋がっているように見えても、端子部分で線が重複していて未接続の場合があります。
出来上がったnetリストは、基板レイアウトした結果のネットリストとデータ比較して間違いないことが
確認できます。

net ファイルの例

★パーツのリストが並べられ
 $PACKAGES
 ! 0.1u; C1
 ! 0.1u; C2
 ! 0.1u; C3
 ! XG4C-1431; CN2
 ! JS-1120-03; CN3
 ! LM2575-5.0; IC2
 ! RCH-875 330uH ; L1
 ! 2SC1815; Q1
 ! 10K; R10
 ! 10K; R11
 ! 22Ω; R12
 ! 22Ω; R1
 ! G3M-203PL DC5; SSR3
 ! 20M; X1
 ,,,,,,,
★ここから接続回路のネット情報です
 $NETS
 VCC; C1.1 C2.1 C3.1 C4.1 C5.1 ,
 C6.1 CN2.1 D2.2 D3.2 IC1.10 ,
 IC2.4 L1.2 R1.1 R2.1 R4.1 ,
 R5.1 RA1.1 RA2.1 RL1.L1 RL2.L1 ,
 SSR1.3 SSR2.3 SSR3.3
 N00000; Q1.C SSR1.4
 N00001; CN3.1 CN4.1 D5.1 SSR1.1
 N00002; CN5.4 CN7.3 RL1.C SSR1.2 SSR2.2 ,
 SSR3.2
 N00003; Q2.C SSR2.4
 N00004; CN3.3 CN4.3 D5.3 SSR2.1
 N00005; Q1.B R7.2 R9.1
 GND-2; C1.2 C2.2 C3.2 C4.2 C5.2 ,
 C6.2 C7.2 CN1.6 CN1.1 CN1.7 ,
 CN1.14 CN1.3 CN1.10 CN1.12 CN2.5 ,
 CN2.2 D1.1 D4.M IC1.11 IC1.31 ,
 IC2.3 IC2.5 Q1.E Q2.E Q3.E ,
 Q4.S Q5.S R3.2 R9.2 R10.2 ,
 ,,,,,,,,,,,,,,,,
 R11.2 R14.2 R15.2 X1.2
 N00006; Q2.B R8.2 R10.1
 N00007; Q3.B R6.2 R11.1
 N00008; Q3.C SSR3.4
 N00009; D3.1 Q5.D RL2.L2
 N00010; Q5.G R13.2 R15.1
 N00011; IC1.1 R13.1
 N00012; D2.1 Q4.D RL1.L2
 N00013; Q4.G R12.2 R14.1
 N00014; IC1.3 R12.1
 N00015; C7.1 D4.P IC2.1
 N00016; D1.2 IC2.2 L1.1
 N00048; CN1.4 R1.2
 N00049; CN1.8 R2.2
 $END

基板パターンを生成するCADもネットリストを生成しますので、二つのネットリストが一致すれば回路接続と
基板接続は一致したことになります。
この比較プログラム vfNetDiff も水魚堂岡田氏から供給されています。



部品ライブラリ作成ツール(LCOV)
このツールで新しいパーツを作ることができます。
ファイル→開く
 現在のライブラリを指定して登録部品を読み込みします。
編集→部品の新規作成
  部品名(素子の型番)、部品記号、部品のサイズ指定をすると編集画面が表示されます。
  この時(あるいは編集→部品のプロパティで)パターンの使用にチェックを入れるとツールバーの
  図形を使って、パーツの図記号を描くことができます。パターンを使用しない場合は四角形の枠になります。
ツールバーのPin
  パーツに端子を付けます。
  ツールバーの範囲ボタンを押し、ピンを指定し右クリックのプロパティで、ピン名、ピン番号を入力します。
  負論理のピン(上バー)名は\C\L\K のように\記号を使います。

         LCOVの画面




基板作成の手順
出図
 回路図: アートワーク業者がBSch3を使用していない場合は、回路図はpdfで出図します。
 部品リスト: 相当品あるいは互換品使用の可否を指定します。
 基板寸法図: 外形寸法、取り付け穴位置、パターン禁止域 を指定します。
 線幅、ギャップ幅指定: 大電流が流れるラインやAC系のパターンの注意
 ネットリスト: 逆ネット比較の確認

部品の配置案ができ上がったら、大きな電流または高い電圧系がCPU周辺に接近する可能性がないかを
確認します。OKならパターンを実際に作成してもらい、大電流および高い電圧回路のパターンを再確認し
問題がなければ基板作成GOです。






水魚堂の回路図エディタ BSch3V
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