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    ユニバーサル基板の使いかた


回路基板は製造する時はプリント基板(PCB)化しますが、試作なしでいきなり型起こしするのは危険です。比較的簡単な回路基板でさえ、基板設計費(配置、引き回し)+基板製作初期費用(写真製版)+実装初期費用(実装データ作成)などを含めると、何十万円かはかかるからです。

そこで便利なのが、ユニバーサル基板(蛇の目基板)を使った試作ボードの作成です。ユニバーサル基板は、2.54mmピッチの独立したランドパターンが並んでいる基板です。ランドパターンを利用して、部品や配線をハンダ付けしてゆきます。ランドの穴を利用して、配線を通過させたり、配線を結束することもできます。

ユニバーサル基板を使って、試作回路を組み立てるのは簡単そうに思われますが、無闇にやっていると、後から配線を付ける余地が無くなってしまったり、配線がグシャグシャになってしまい、どうしていいか判らなくなってしまうことがあります。以下は、ユニバーサル基板を使った試作回路の作り方のポイントです。

なお、「ブレッドボード」と呼ばれる一見ユニバーサル基板に似た基板がありますが、ごく部分的な回路実験には使えますが、本格的な試作には適しません。

下は、試作基板の例です。

 部品面

 ハンダ面


1)ユニバーサル基板
写真のような、2.54mmピッチのランドパターン付き両面基板を使います。いわゆる蛇の目基板です。
ガラスエポキシ製、1.6mm厚が一般的です。寸法を金鋸でカットし、ドリルやヤスリで取り付け穴や、変形端子穴を先に加工しておきます。

2)配線材
GND線や電源線は、0.7〜1.0mmの錫メッキ線
配線は、外径0.7〜0.8mm の被覆付き単芯線、または、外径0.8mmのハンダ撚り線(2本の単線が撚られた状態でハンダコーティングされている線材(写真下)が適しています。ただしハンダ撚り線は入手し難いようです。


線材の太さは、被覆付きでユニバーサル基板のホールを通過できる直径(φ0.9)以下に限定されます。
フロン線が一般的に多く使われているようですが、ハンダの乗りが良くないのは我慢できるにしても、少し力が加わると被覆の根元で切れ易く、また、切れたことが発見し難いため、お薦めではありません。

3)部品マウント
試作といっても、実際の基板に近い部品配置で進めることが大切です。部品記号もテプラ入れします。背の低いパーツから先にマウントし、コネクタは基板縁に、方向を揃えてマウントします(方向が揃っていた方が作業ミスを防止できます)

4)GND、電源線
部品マウントが終わったら、錫メッキ線で、GNDとVcc用の電源幹線を「ハンダ面」になるべく直線でひき、途中途中をハンダで点付けします。この幹線は、まだ直接各パーツにハンダ付けする必要はありません。Vccに赤、GNDには黒のマーカーで目印を付け、錫メッキ線を捻って、チェック端子の代わりに立てておくと便利です。

5)配線作業
ハンダ面に配線を引き廻す方法もありますが、線材も部品と考え、部品面にマウントします(写真参考)。これが重要なポイントです。参考書や、ネット上の実例を見てもほとんどの場合、部品をマウントしていない裏面に配線を引き回している例が圧倒的に多いようですが、ハンダ面に配線を盛っていくと、掻き分けても部品端子が隠れて見えなくなり、悲惨な結果になることがあります。

配線の基本は、部品の端子(リード線)に隣接するホールに、部品面側から先端の被覆を向いた線を差込み、線と端子にハンダ付けするという方法です。こうすることで、半田面はほぼ露出状態になるため、信号をチェックしたり、後から配線を修正したりすることも容易になるのです。

配線の被覆剥きはストリッパーを使えませんので、線切り専用の小型ニッパーを使います。他に使うのはピンセット、先端内側にギザが無い超小型プライヤ、先端が細いハンダコテ(できれば電力2段切り替え式)、糸ハンダ(無鉛ではない通常品)、コテ先拭き取りスポンジ箱付きコテ台、あったほうが便利なのは、ハンダ吸い取り(電動ポコポコ機はかなり高額、押し込みポンプ式は要熟練)、ハンダ吸い取り機に代えて、ドライヤー式のヒーターを使う方法もあります(フラットパッケージICを外す時は必須アイテム)。他にあったほうが便利なのは、フラックス(サンハヤト製)

線の先端2〜3mmの位置で、被覆の一部だけをつまむようにして挟み、切れ目を入れてから、ニッパーを裏返しに使って、被覆を引き剥きます。(ニッパーの「裏側」の定義は不明ですが、要は、基板から突き出た余分のリード線を短く切る時とは逆向きに刃を使います)

剥いた線の先端を、ピンセットでLまたはU状に変形させます。線の先端を予備ハンダで濡らます。曲がった線の先端をハンダするパーツのリードに引っ掛け、ハンダ付けをします。コテ先を先ず、ランドとリードとフックした線の接合部に押し当て、1〜2秒加熱します(時間は部品熱容量にもよりますが、)。 熱が上がったら、糸ハンダを送りこんでハンダを溶かします。ハンダが流れてホール内にも吸い込まれたら、先ずコテを離し、次に気持ち遅れて糸ハンダを離します。コテを先に離す理由は、フラックスが飛んでしまわないようにするためです。フラックスを表面に残すことで、絶縁膜が形成され、ツヤのあるハンダが完成します。

1端のハンダができたら、線をルートに這わせ、凡そ形を整え、必要な線長で切ります。予め、引き回しのコーナーコーナーに太めの錫メッキ線で1cm程度の柱をハンダで立ておくと、線材の成形が容易にできます。
線材の切断の時、線が短い時は、逆の手で、小型プライヤーで線の根元を押さえておきます。
他端を同じ要領でハンダします

ひとつの部品端子に、2本までなら線を直接ハンダ付けできますが、それ以上本数が増える場合は、最初の1本の線は被覆を長く剥いて、複数のランドをハンダで繋げて使います。

配線はバラバラにならないよう、ルートを決め、適宜釣り糸で結わえます。

6)チェック
いわゆる、衣と身が浮いたテンプラがないことを確かめたら、ハンダ付けが済んだ回路図に蛍光マーキングを入れます。

7)完成チェック
火を入れる前に、GND-各電源間の導通をチェックします。電解コンデンサの充電時間を待っても異常に抵抗値が低い場合はGNDとVcc系をどこかでミスしている可能性が考えられます。
火を入れる場合は、まず、電源コネクタ以外は全て外した状態で、テスターでVcc電圧を測りながら電源を入れます。正常な電圧が出てくることを確認します。(正常値が出てこない場合は即電源を落とし、心静かに落胆することを勧めます。間違いを見つけるコツは、このページでは残念ながら不可能です。)


◆小型CPU
DIPまでなら手作業でマウントできますが、小型サイズのCPUなどは直接マウントできないため、下図のような変換基板を使います。





◆試作基板のココロエ
試作基板の作成は、根気との勝負です。気が短い人間には不適と思いきや、釣りに似て、短気でせっかちな人間の方が、実は適しているかもしれません。 間違いを起こしたくないというセッカチ気性が、一箇所ハンダ毎に3回確認して、その度に回路図に赤鉛筆の消込をするという、殆ど傍目には非効率でムダな作業を貫くことができるからです。 ただ、ハンダに費やした時間以上に、ウォーキングに時間を浪費しなければ身が持ちません。




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