用紙搬送


搬送ローラー
搬送ローラーの最も一般的な材質は NBR ゴム硬度90°です。量産の場合はコストを抑えるため、ローラー表面のゴム厚はなるべく薄く成型してハブは樹脂成形しますが、少量生産の場合は以下のようにします。

ローラー内径は軸径に対し-0.1mmに成形し、外径は+0.2mm程度大きく成形し研磨仕上げします。ローラーを軸へ圧入して使用します。
安全のためローラー両サイドにはEリングを挿入します。軸へ圧入組立てする際は、石鹸水を使用して挿入を容易にします。乾燥後は石鹸成分が接着材効果の役目を果します(当然,界面活性剤の液体洗剤は不可です)。以前はゴム焼付けが主流でしたが現在ではあまり使われていないようです。外径の誤差は用紙の斜行原因になるため要注意ですが、その度合いはローラーが複数列の場合は非常に複雑になります。

薄膜タイプでない通常の搬送ローラーの耐久性は極めて高いため、溶剤、ノーカーボン紙等を使用しない限り、10年程度の耐久性に問題はありません。なお、極少ロットの場合は成型無しのウレタン・ローラー研磨が安価です。

ガイド板
用紙すくい角は30°または20°、これより角度が大きいと用紙折れの危険性が増します。
大量生産品では用紙との接触面積を少なくするためにリブを多数配します。これは静電気の影響
を防止する意味もあります。金属製のガイド板は通常t=1のSPCC、SECC,A5052材を使用しますが、コの字状に曲げて機体側板に直接ネジ止めすると、幅寸法に誤差がある場合、ガイド板が変形し、用紙走行に悪影響を与えることがあります。少なくとも片側はフロートさせる等の手段を採用します。両サイドをフロートさせても良いが、騒音が増す可能性があります。

用紙詰まり(ジャム)が発生する最大の原因はガイド版のエッジに用紙が引っ掛かることから起こる紙折れが原因で起こります。用紙端位置から、ガイド板エッジを3〜4mm以上確保することが必須です。用紙が詰まらない場合でも、紙のコーナー折れが発生しますので重要なポイントです。用紙サイズが多数ある場合など、特に厄介で、場合によっては危ない場所に無理にローラーを配置するよりも、無くした方が搬送の信頼性が高まります。1枚の用紙の、最低2か所が常にローラーによって把持されていて、かつ引っ掛かりがなければ、ジャムもスキューも発生しない筈なのです。

従動ローラーは通常安価なTOKベアリングなどのプラスチック外輪のボールベアリングを使うことができます。ただし、転がり軸受けボは高速回転では、滑り軸受けに比べて騒音が大きくなりますので要注意です。

用紙を一定の速度で搬送するだけなら、従動ローラーの加圧力は数10gFもあれば十分です。(プリンターなどの搬送力と競合しない限り)なお、軽荷重の場合は気にしなくていいのですが、用紙がスリップしないよう強い力でグリップする必要がある場合は、ローラー痕が残らないよう、従動ローラー側のローラー幅を大きくします。また、大きな力でゴムローラーを加圧するとローラーが変形して、搬送速度が変化したりしますのでこれを防ぐには、駆動ローラー側の表面をローレット加工した金属またはプラスチックのローラーを使用し、従動ローラー側にゴムローラーを採用する場合もあります。


ベース型ガイド穴

通常Fig1のように、ローラー部のガイド板には折りを入れますが、ベース型の穴だけでもかなり
信頼性の高いガイド板はできます。無論用紙エッジ付近には使えません。コスト的にはこの方が
 有利です。ただしシワの多い用紙などには使えません。

R搬送ガイド板

用紙の搬送方向を変換する場合は曲がった搬送ガイドを使います。内Rの最小値は、通常PPC用紙で30mm程度です。Rの入り口、出た直後に搬送ローラーを配するのが原則です。ただし、20〜30mmピッチで多数のRガイドと搬送力を付加するローラーを組み合わせた場合は8程度でも搬送方向を転換することができます。ただし、入っていく用紙にタワミがあると、用紙後端部でシワになってしまうため、搬送路を絞って給紙するか、従動ローラーの加圧力を弱くして、適度に用紙が逃げられるようにして、シワが累積しないようにすることが大切です。

給紙斜行防止1



積載された用紙束から、用紙を分離搬送する場合、大きな問題となるのは用紙が斜めに給紙されやすいことです。給紙ガイド板で用紙を規制しても効き目が無い場合が多くあります。その多くの原因は、給紙ローラーを2個以上並列に使っていることにあります。一見、斜行を発生し難い複数ローラーが実は搬送力のアンバランスのため、斜行の原因になっています。

Fig4は、斜行修正機能がある給紙機構です。給紙ローラーは中央に1組だけとし、その後部のレジストローラーは2組配します。給紙ローラーは1組だけなので、搬送が開始された用紙は容易に搬送方向を振ることができる状態にあり、給紙ガイドに無理なく案内されて進行することになります。もし、最初の給紙ローラーが2組以上あると、給紙される際、ローラー圧力のアンバランス等が原因で斜行が発生した場合、給紙ガイドで規制することは困難で、用紙は斜めに搬送されてしまうことになります。

一方後続のレジストローラーは給紙開始時は回転を停止しておき、給紙ローラーから用紙先端が2箇所のレジストローラー間に到着した時点で回転を開始します。もし給紙された用紙が若干斜行していた場合、用紙はレジストローラーにならって斜行が修正されてから再度搬送が開始されることになります。搬送不安定な1本ローラーとレジストローラーの特性を絶妙に組み合わせた斜行防止機能を有した給紙機構です。


給紙斜行防止2



前の搬送装置から排出されてきた用紙を、斜行せずに受けて搬送する機構です。
2つの装置間で用紙搬送を受け渡しする場合がありますが、斜行が発生しやすく、どちらの装置に原因があるのか不明の場合が多々あります。

原因は、搬送ガイドが無い状態の受け渡し部で、用紙が不規則に撓むことにあります。用紙が硬くて、撓みが発生しなければいいのですが、実際は、ガイド口部では必ず撓みが発生し、しかも左右不均衡に撓むのです。

このため、ローラーが2組とすれば、撓みの少ない用紙側のローラーに用紙が先ず到着し、遅れて撓みが多い用紙端が入紙してくることになります。

その上、二つの装置間で用紙を受け渡す場合、後続装置の搬送速度の方を上げないとシワが発生するため、後続装置は用紙を引っ張り加減で受けるため、斜行して入って来た用紙のスキューを増幅することになってしまいます。

これを防止するために、入り口部の搬送ローラーは、駆動側のローラーの摩擦係数 < 従動ローラー側の摩擦係数とし、かつ複数の従動ローラーを回転軸に固定します。そして、支障がない限り搬送速度を上げます。

こうするこどで、受け渡し部で不規則に発生した用紙の撓みは、駆動ローラーの引っ張り作用で引き伸ばされることになります。用紙後端が前装置の排出ローラーを離れるまで、用紙の速度は前装置の搬送速度に同期し、離れた瞬間に後続装置の搬送速度に同期します。

駆動ローラーはデルリン等の摩擦係数が低い材質で、従動ローラーは硬度が低いゴムローラーで構成するのがいいでしょう。


◆用紙分離 

印刷機などでは、空気圧を利用して用紙を1枚だけ吸い上げて搬送するサッカー方式が主に使われていますが、以下ここでは小型装置に適したフリクション(摩擦)式を取り上げます。

用紙分離機構1



用紙の長さがほぼ一定で、比較的短いシートの分離搬送に適した機構です。

給紙台ローラーは最下層の用紙を送り出す効果を持ちますが、主力の搬送力は給紙ドラムに組み込んだウレタンゴム(ゴム硬度60〜80°)の給紙摩擦部材の回転によります。
給紙台の角度との兼ね合いもありますが、給紙台ローラーは不要の場合もあります。

給紙補助ローラーは用紙が給紙され易くするための錘の役目を持つだけですから回転するローラーである必要はありません。

給紙摩擦部材を給紙ドラムよりやや突出した状態にすることで、用紙を取り込みし易くすると共に用紙束に振動を与えることで連続給紙効果を高めています。

給紙摩擦部が回転してくる度に給紙ドラムに接した用紙が1枚給紙されます。なお、給紙ドラムと重送防止部材は接するのではなく、若干間隙を持たせることで、用紙の傷みを防止します。

ダブルフィード防止は、透過光量の検出や検出長さでおこないます。紙幣識別装置では搬送途中に磁気インク検出やパターン認識を行い、その識別結果により排出先トレイを切り替える動作が行われます。


用紙分離機構2



厚紙やカードなど比較的厚いシート材を分離搬送するに適した機構です。

用紙サイズは比較的自由ですが、積載枚数が少ない時や、過剰になると給紙困難になる場合があります。

用紙は下層から搬送されます。送りローラーはEPDMゴム硬度40°程度の、円形ではなく、突起がある形状で、用紙に振動と、間歇的な押し出し力を与えることで、より安定した給紙が可能となります。

給紙ゲートは、用紙の厚みよりやや余裕のある間隙で構成されます。ゲートの長さは用紙幅に対し十分短くしてゲート以外の場所は広い間隙にします。

ゲートの材質は、金属や硬度の高いウレタンゴムなど、摩擦係数の小さなものにします。ゲートを用紙通過部の傾斜角は重要で用紙を導入を案内できる限り、立ち上がり角が急な角度にしなければなりません。角度が浅いと複数用紙がゲートギャップに入り込んでロックする可能性が高くなります。

積載用紙の後端は図のように跳ね上げて、用紙がなるべく浮いた状態で受けられるように構成します。

機構はやや複雑になりますが、上例の給紙ゲートに換え、上部を摩擦パッド、下部を分離ローラーで構成することもできます。


用紙分離機構3



伝票用紙のような薄い用紙からハガキ程度の厚さの用紙までを分離搬送するに適した機構です。

小さい用紙から大型用紙まで、サイズに対する適合性は極めて高い機構です。分離ローラーに適した材質は EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)ゴム硬度40°ですが、摩滅しますので、交換可能なように片軸で支持します。分離性能に悪影響を与えないよう、強固に支持される必要があります。

なお、分離ローラーは用紙が分離搬送され始めて、搬送ローラーに把持されたことがセンサーに検出された時、ローラー駆動はOFFしますが、用紙後部が分離ローラーに架かっている限りは従動的な回転がされる必要がありますので、軸にワンウェイクラッチを使用します。

摩擦パッドはウレタンゴム(ゴム硬度80°)、一定の圧力(100g〜250)で分離ローラーに加圧されるようにしますが、追従性が良くかつ、摩擦パッドがスキップして騒音を発生しないように支持される必要があります。

ピックアップローラーは、首振り運動ができるように支持され、用紙高さが下がってきたら給紙レベルセンサーで検出し、リフトを上昇させて、用紙高さが一定になるように制御します。ピックアップローラーの用紙に対する必要な加圧力は用紙の種類によって異なりますので、調整可能な機構とします。

なお、上図の摩擦部材は1箇所の1段分離方式ですが、2段ないし3段、またはR面で分離する方法もあります。この場合、分離ローラーの直径は大きなものになります。

給紙される用紙が摩擦パッドに入り込む角度は、あまり離性能には影響してきませんが 10°〜15°付近が良いとされています。


ところで、分離ローラーとピックアップローラーをクラッチで、搬送ローラー駆動から切り離すこと無く、連続回転したままで用紙を分離する方法もあります。(下図参照)分離ローラーとピックアップローラーの距離間隔Lが、重送が発生する危険を持つ距離に関係してきますから、搬送ローラーによる引っ張り速度Vf2を、分離ローラーとピップアップローラーの周速度Vf1より大きい速度にすることで、用紙が搬送される間に重なり長Lを引き離すことが可能となります。





バルク給紙機構



通常、用紙は1枚毎に分離して搬送するのが常ですが、シュレッダーのように、複数枚数の用紙を給紙したい場合があります。

スパイク状の突起が表面にある送りローラーで送る方法もありますが、取り扱いが危険であり、一方、長いベルトコンベア状の装置で徐々に速度と、厚みを規制して均して行く方法は、装置が大掛かりになり、オフィスには不適です。現在市場に出ている自動給紙シュレッダーは殆どが、用紙の分離性能を甘くした機構、つまり重送が起こり易い程度の機構でしかないため、せいぜい2〜3枚しか給紙できないものになっています。

Fig9】のバルク給紙機構の特徴は用紙後端を押すローラーにあります。その位置を可変させることで、異なった用紙サイズに適合できます。形状は円形ではなく、複数枚の用紙を押し出せる形状とします。フィードローラーとゲート摩擦パッド間は一定枚数の用紙が通過できるような一定ギャップを構成します。

ゲートの摩擦パッドはウレタンゴム硬度90°。フィードローラーはEPDM ゴム硬度40°程度が適していますが、大きな負荷が加わりますので、空転、横ズレが無いように固定される必要があります。この摩擦パッドは消耗品ですから交換可にします。

ゲートのすぐ後方には、用紙束を搬送する従動加圧ローラーを配します。なお、用紙後端を押す手段や、補助搬送手段はローラーに限らず往復運動するリンクや、ベルト様の方式でも可能なことは当然です。

この方式によるシュレッダーは、ある程度の枚数のステープル止めにも対応可能で安定した無人運転が可能です。


◆摩擦を利用する用紙分離
単純化した理論では、摩擦係数は圧力や、表面粗さには影響されない値とされていますが、実際の摩擦はもっと複雑な様相を呈しています。また、静止摩擦係数と動摩擦係数の違いも、単純なものではありません。わからないことの多い摩擦現象ですが、実際にはタイヤと地面の摩擦や、ブレーキにも、我々は命を預けているのが実情です。また、地震も結局は大陸プレートと地殻との摩擦現象なのでしょうが、いつどこで滑るかは、科学でも占いでも歯が立ちません。


ところで、固体の形が崩れないでいられるのは、分子間に作用するイオン結合や水素結合など、全て電気的な結合力ですが、この固体同士が、互いに圧接して滑る時の現象を大きく分ければ、


 A:噛み合っている部分の分子構造が破壊して滑る。
 B:噛み合っている凹凸部分の分子構造が弾性変形で外れて滑る。
 C:双方の面に属していない微細な粒子がコロの役目をして滑る。



の3種類の摩擦現象が別々に、あるいは、時には同時に平行して起きていると考えられます。材質にもよりますが、その滑りに要する力(摩擦力)は一般的に
  A>B>C
です。模式図で表すと下図のようになります。



耐久性より摩擦力が優先されるレース用タイヤや、消しゴムでは、Aの摩擦現象が重要な役目を果たしています。ソロバン玉やトランプカードに使う滑り粉ではCの摩擦作用が利用されています。
耐久性と適度な摩擦力を求める場合はBが主体になります。


耐磨耗性ウレタンゴム等は、長い鎖状の高分子が網目状に共有結合されているため、摩擦に際して分子が弾性変形しながら、引っ掛かったり、外れたりして抵抗力を生んでいるものと思われます。分子構造を保ちながら滑るため、このBの摩擦現象は、Aの摩擦現象に比べ、摩擦部材の寿命は格段に長いものとなります。

しかし、同じ材質のウレタンゴムであっても、型によって成型したり、極めて平滑に研磨した結果、表面に光沢が出ると、用紙に対するウレタンゴムの摩擦力は、ゴム表面に光沢が無い状態に比べ、明らかに強くなるという、不思議な現象が現れます。このため、新しい分離パッドに交換したら、用紙の分離搬送ができなくなった、というような障害がしばしば発生します。

これは、表面に光沢がある状態のゴムは、表層の平滑なゴム分子が、互いに緻密に絡み合い、分子が動き難いため、Aの摩擦状態に近くなっているため、と考えられます。やがてゴムの表面が破壊し、微細な凹凸になると、Bの摩擦状態になり、摩擦力が低下すると考えられます。

なお、同じ素材であっても、発泡ウレタンゴムの場合は、表層の分子の拘束力が弱いため、初期摩擦係数が高くなることはありません。ただし、構造自体が脆くなるため、ライフは短いものになってしまいます。


次に、摩擦現象Cですが、これも用紙分離の難関で、用紙といっても、パルプだけでできている訳ではなく、上質紙の場合は特に、インク滲み防止のための微細な粉体が繊維間に充填されており、プラスチック紙の場合は、用紙同士が密着してしまうことを避けるため、シート間に微粉末シリカが散着されています。こういった粒子がコロの役目をして、突然摩擦係数を低下させてしまいます。


用紙分離機構において、安定した摩擦を持続させるためには、AとCの摩擦現象が起きるのを防止することが重要です。
有効な方法は、摩擦パッドや分離ローラーの表面に細かい溝を多数形成することです。分離ローラー側の溝は搬送方向に直角、またはこれに近い角度、摩擦パッド側の溝は搬送方向と平行、またはこれにに近い角度で、多数形成します。






こうすることで、微粉末は溝に沿って、効率的に排出され、摩擦面に留まって摩擦係数を下げてしまう現象を防ぐことができます。更に、この溝、というより溝の角部は、別な効果を持っていて、摩擦パッドの表面を、比較的短かいランニング時間で、AからBの摩擦面に変えてしまう効果があります。平滑面のままの摩擦パッドは、数万枚ランニングをしても、用紙分離性能が十分でない場合がありますが、溝付き摩擦パッドは数十枚のランニングで十分というデータもあります。

なお、ウレタンゴム摩擦部材の寿命は極めて長く、数百万枚の分離にも耐えられることが実証されています。ただし、ウレタンゴムには、加水分解には強いが、耐油性が低いポリエーテルタイプと、耐油性は高いが、加水分解に弱い、ポリエステルタイプ、の2種類があるため、用途環境を十分に考慮する必要があります。
なお、ウレタンゴムの耐熱性は比較的低く(約80℃)。硬度は50〜95。



◆紙
印刷などに適した用紙は主に広葉樹から作られるパルプを主原料としていますが、インクの滲みを防止するための表面サイズ材(スチレン樹脂等)や、繊維の隙間を埋める填料(滑石/炭酸カルシウムなど)が使われていて、普通紙でも重量の15〜25%はパルプ以外であるとされています特に、アート紙などの高級紙になると、クレー(微粒粘土)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイトなどの顔料が表面に厚く塗布されています。
用紙が高速で擦れる部材が摩滅するのは、これら、紙の表面に使われる鉱物のためです。
また、ノーカーボン紙に使われる化学物質は、NBRやウレタンゴムを短期間で劣化させてしまうことがあります。




紙の坪量と連量の換算
製紙業界では連量と呼ばれる、原紙1000枚あたりの重量を使います。しかし、四六(シロク)判と呼ばれる原紙の寸法は 788×1091mm(0.86m2)ですが、菊判と呼ばれる原紙の寸法は 969×636mm(0.616m2)という異なった大きさが使われます。
一方、用紙を扱う装置では、紙の1平方メートル当たりのグラム数(メートル坪量)を使います。
連量からメートル坪量への換算は、
四六判は メートル坪量(g)= 連量/(1000×0.86)
菊判は  メートル坪量(g)= 連量/(1000×0.616)



◆主な用紙重量と厚み
           g/m2   mm

トレーシングペーパー
  42   0.045
PPC(軽量)     64   0.09
千円札        87   0.09
PPC(厚手)     81   0.11
小切手       126   0.13
はがき       190   0.23



摩擦係数(対紙)
紙:紙      0.35〜0.45

紙:UR(80°)  0.5〜0.6
紙:EPDM(40°) 0.88〜0.92



ゴム硬度の目安
30° 指先でもへこむ柔らかさ
35° 輪ゴム、虫チューブ
40° 消しゴム
50° タイヤと消しゴムの中間の硬さ
70° 爪が立つ硬さ、タイヤ
90° 爪が立たない硬さ、野球の硬球





静電気の影響

異なった材質の2物質間に摩擦が発生すると、一方の材質は負(-)に他方の材質は正(+)に電気を帯び
ます。これは帯電と呼ばれる現象です。場合によっては、接触していた2物質が離されるだけでも帯電することがあります。絶縁体でも金属のような導体でも帯電は起きます。(接地されている金属の場合は、大地の静電容量が極めて大きいため、帯電は表に出て来ませんが)

この帯電は、静電気と呼ばれ、同極の電荷間には反発力が働き、異極間には吸引力が発生します。用紙がローラーやベルトで搬送されるも際も静電気が発生し、特に乾燥した環境においては、用紙は高い絶縁性を持つため、帯電した静電気は容易には放電しない状態になり、吸着力がジャムを発生する原因にもなります。

用紙搬送ガイド板を金属にすると静電気の影響が無くなるかというとそうではありません。帯電した用紙がグランドに接続されたガイド板に囲まれると、用紙の電位は低下していまいます。ガイド板と用紙間の静電容量をCとすれば V=Q/C  V:電圧 Q:電荷量 C:静電容量つまり、用紙がガイド板に接近するとCが大きくなり、電圧は下がってしまうことになります。

電圧が下がると放電はできず、電荷は残ったままになり、吸着力は電荷量に拠りますから、吸着力は低下し難くなります。特に摩擦を利用した用紙分離機構では用紙は著しく帯電することになります。用紙吸着による用紙詰まりだけでなく、機器の誤動作、CPU暴走、さらにはデバイスの破損に至るケースもあります。

装置全体が大きく、かつ、大地から浮いている場合は、大きな静電エネルギーが蓄積されるため、放電に際しては電気回路にも大きなコモンモードノイズを発生することになります。残念ながら日本の100V系電力線は大地アース線がありませんので、帯電した電荷は逃げ場が無く、限界に達した際の放電ショックは大きなものになり、誤動作や回路素子破壊の危険性が高くなっています。

大きな装置では、せめてSG(シクナルグランド)とFG(フレームグランド)は太い線で結合すれば、放電により装置電位が激しく揺れても、回路電位も装置と共に揺れることで、相互間の電位ショックは減少します。弱電回路技術者はSGをFGに落とすことを気持ち悪いと感じる人が多いのですが、ここは落とすべきです。


用紙搬送を静電気の影響から避けるためには、
@金属の平面ガイド板はなるべく避ける。
A搬送面にリブを設け、用紙とガイド板の面接触を避ける。
B自己放電型除電ブラシを用紙に軽く接触させて除電する。

などの対策をとります。Bの除電ブラシは、カーボン繊維またはステンレス繊維などの既製品があります。搬送路に若干空間を作り、除電ブラシを組み込むだけでもある程度効果的に除電できます。イオン発生式の除電装置は、放電針から紙面まで程度距離が必要ですが、自己放電型の除電ブラシは、ブラシ先端が軽く用紙に接触するように設置します。

なお、除電ブラシはフレームグランドに接地しなくとも、ほぼ問題ない効果が得られます。これは、摩擦帯電の場合は、摩擦部材側が+で用紙が−といった、単純な帯電ではなく、同じ紙が+―斑になって帯電しているため、帯電斑、相互間での放除電が進むためと考えられます。






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