特許出願の重要ポイント

◆特許を取るまでの流れ
特許法により、産業上の有用な発明をした発明者またはその承継人に対し、発明の公開の代償として一定期間、独占的に特許権が認められます。日本では特許の出願公開制が採られており、出願から1年6ヶ月後に出願内容が公開されます。実際の特許にするためには出願日から3年以内に審査請求をしなければなりません。なお、審査請求をしてもたいがい「拒絶理由通知書」が送られてきますが出願書類の一部を変更する「手続き補正書」や「意見書」の提出で特許査定される場合が多いようです。

◆費用
訴訟を起こす場合、弁護士に依頼しなくとも本人が直接できるように、特許出願も弁理士に依頼することなく、発明者本人が自ら請求することができます。発明者自らが出願書類を作成すれば、出願費用は、特許印紙代 15,000円 + 電子化手数料(1,200円+700円×頁数) 特許事務所に依頼した場合の何十分の一かで済ますこともできます。
ただし、出願後の費用は
審査請求は、 118、000円+請求項数×4,000円
特許が登録できた後は、特許を維持するために
 (2,300円+請求項数×200円) × 3年分の特許料
 4〜6年目は毎年 7,100×請求項数×500円
 7〜9年目は毎年 21,400×請求項数×1,700円
 10〜25年目は毎年 61,600×請求項数×4,800円
がかかりますから、費用対効果が得られないと判断した場合は審査請求を放棄、または特許の維持を諦める判断も必要となります。実際、出願された大多数の特許は審査請求されずに放棄されているようです。何年か前までは審査請求有効期限は7年でしたが現在は3年間に短縮されています。これは放棄される出願が多かったためこれを防止して、とりあえず審査請求の件数を多くしたいという当局の対策(!?)かもしれません。
なお、特許に似た制度に実用新案がありますが、特許制度は名前が示すように「特別に許された権利」であるのに対して、審査請求なしで簡単に取得できる実用新案は、係争に対して必ずしも有効な手段とはなり得ず、そればかりか、有効性を過信すると営業妨害で逆に不利になる危険性もあることを知るべきです。

◆特許の効果と逆効果
テレビで放映される町の発明家の話題はともかく、直接収入に繋がる特許はなかなかありません。特許出願の最初の効果は「特許出願」をうたうことによる競合他社への警戒効果です。競合各社は似た製品を出そうにも警戒する必要が出てくるからです。このため、わざと出願したこと自体が目に付き難い方法で出願したり、用語が検索され難いようにしたりする場合もあります。(これが特許用語の難解さを引き起こした一因でもありますが、)
また、特許取得後は業務提携に際して優位性の効果も期待できます。これは良くない現象ですが、先発グループのメーカーは、互いに持つ特許をつぶし合うのではなく、提携し合うことで、以降の参入メーカーを阻止する傾向が見られます。取得特許の数が多い程新規参入メーカーに対する壁は厚くなってしまいます。
実際多くの特許はこれらの副次的な効果を狙っているものと推測されます。一方、特許を出願することは危険でもあります。明細書の内容からヒントを得て、より効果的な発明が出されたり、抵触しない方法で製品化されてしまうことはよくあることです。また発明の一部または殆どが使われても、これを特許係争で100%勝つことはかなり困難です(特にわが国の裁判においては)。重要な機密は特許出願をしないと言われるのはこの辺に理由があります。これらのことを総合的に判断して出願する必要があります。

◆特許事務所に依頼しないで出願する
特許は発明者自らが出願できますが実際は特許事務所に依頼するケースが殆どだと思います。自分で出願する発明者が少ない理由は幾つかありますが、そのひとつは、特許明細書作成のハードルの高さだろうと思われます。特許明細書は往々にして、発明が簡単にまねされないよう、故意に難解な語彙を用い、理解を妨げるために必要以上の長文が使われる場合が多々あります。これらの例文を見ていると自分にはとうてい書けないと思ってしまったとしても不思議ではありますん。
もうひとつは、特許事務所の経営上の理由によるものと推測されます。5枚で済む明細書が20枚になれば必然的に売上げが増すことになりますし、もっと短く書いてくれというクライアントは普通はいません。(特許事務所の方々ゴメンナサイ)
しかし、特許明細書は難文である必要はありませんし、長ければ良いというものでもありません。最低限度必要なテンプレートに従って作成すれば誰にも作成可能です。

特許情報プラットホーム
特許の調査は、特許庁外郭の特許情報プラットホームでできます。

 【使い方】
「特許・実用新案」をクリックして、
ワード欄に調べたい文字を入力します。
 例 【ABC株式会社 プリンター】
「AND」か「OR」の条件を選んで、検索実行を押します。
見つかった件数が多すぎたら、続けて検索条件を追加します。
適当な件数になったら、一覧表示 を押します。
見たい項の特許を押すと、簡易表示されます。
画面下の「表示中の特許の詳細表示画面を表示する」を押すと、要約と請求の範囲が表示されます。詳細な表示内容が見たい場合は、画面上の表示内容の種類を指定すると、発明の細部まで引き出すことができます。

キーワードの選び方が重要なポイントです。最も大きな障壁は、技術用語が統一されていないことです。そればかりか、検索を避けるために、故意に難解な用語か、逆に平易すぎるワードが使われている場合は、まともに検索することができません。ある特定の会社の、特定分野を調査する場合は、会社名と、技術用語で絞るのではなく、発明者の氏名で絞ると確実に検索できる場合が多いようです。専門分野の担当者は特定されている場合が多いからです。

何れにしても、虎ノ門の特許庁を頻繁に訪問しなければならなかった頃と比べると隔世の感があります。
また、電子図書館は膨大なデータを無料で取り出せる、開発のアイデアの宝庫でもあります。


◆特許を出願する
電子出願も可能ですが頻繁に出願しない場合は、用紙を使った出願の方が簡単です。
出願書類は
 1) 特許願
 2) 明細書
 3) 特許請求の範囲
 4) 要約書
 5) 図面
これらの書類をホチキスで綴じ、書留で
  〒100-8915 東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
  特許庁長官 殿
宛発送すれば後日、電子化のための手続きの案内が送られてきますので費用を振り込めば完了です。

◆「特許願」の作成要領
用紙:A4
文字:
 10〜12ポイント
 1行40字詰め 1ページ50行以内
 余白は少なくとも 上6Cm 下2Cm 左右2Cm  ただし左右余白は2.3Cmを越えないこと。
全書類をステープラー左綴じ

詳しくは、下記HPを参照してください。

特許願書の書き方


◆特許明細書のポイント
特許明細書にはおおよその記述パターンがあります。パターンに従って文を構成するだけで構いません。文学作品ではありませんから同じ接続詞を繰り返し使ってしまっても構いません。
【発明の名称】
 (名称に関して特に決まりはありません)
【技術分野】
 〜の分野に係わる〜。
【背景技術】
 従来の技術は〜であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
 従来技術においては〜が困難であった
【課題を解決するための手段】
 〜と、〜と、〜手段を設ける。
【発明の効果】
 本発明によれば〜が可能となるだけでなく、〜の効果も得られる。
 なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において多様な実施形態が可能である。 例えば〜はであってもよい。また〜は〜であってよい。
【図面の簡単な説明】
 【図1】図1は本発明の一実施例
【符号の説明】
 1‥ 案内軸
 2‥ センサー

◆図面の作成例
 図面は横150mm、縦245mm以下の大きさで書きます。

◆特許請求の範囲のポイント
あまり具体的に規定し過ぎると範囲を狭めることになり、逆に抽象的過ぎると特許が取得できない可能性があります。
「案内軸1と、DCモーター2と、、、、とから構成されることを特徴とする、、装置」 のように範囲請求した場合、案内する機構が軸でなく、アングル状であったり、モーターがDCでない場合は抵触しないことになってしまう可能性があるからです。
「案内手段1と、駆動モーター2と、、、とから構成されることを特徴とする、、装置」のように規定した方が安全と考えられます。明細書の中で「案内手段1は軸状もしくはアングル状等の形状であってもよい」とすべきです。特許庁は無闇に適用の範囲が拡大主張されることが無いよう求めていますが、必要以上に限定する必要もありません。何れにしても、特許出願に際しては、この「特許請求の範囲」が最も重要な項目で、ここから書き始めるのがポイントです。明細書の記載を進め、あるいは他の特許調査を進めていくうちに、予定していた特許請求の範囲の記述が不足であったり、不適当であることが判明してくる場合が多々あります。
なお、基本的な発明に関しては請求の範囲1に記載しますが、一部を変形して異なった形態の発明を請求する場合は、「請求項1の記載において、前記〜は〜であることを特徴とした〜装置」のように別な請求項として出願します。一部を変形した請求ではなく、深く関連した発明も複数項として請求できる場合があります。

◆表現について
装置の特徴を規定する方法は、構成要件がAND条件なら
 「〜と、〜と、〜を有する装置」
 「〜と、〜と、〜から構成される装置」
のように列記し、OR条件なら
「〜もしくは〜、あるいは〜」のように、これも明確に規定します。
上の文章の中で”〜”で表した部分は一般的に「構成要件」といいます。発明の中身を構成している要素のことです。構成要件の表現に関しては特に慎重に検討する必要があります。

◆特許用語について
なるべく特殊用語は避けたほうがいいのですが、使うと便利な特許用語もあります。

支軸: 支える軸
自在: 自由に
回動: 回転して動く
滑動: 滑って動く
遥動: スイングする
作動: 定められた動き
摺動: 摺れて動く
追動: 追うように動く
付勢: 勢いを付ける

軸支: 軸で支える
固設: 固定して取り付ける
固着: 固定させる
当接: 当たって接っする
圧接: 押し付ける
圧着: 押し付けて付ける
嵌挿: さしこんではめる
挿着: 差し込んで付ける
冠着: かぶせて付ける
突設: つき出して設けた
架設: 架け渡して設ける
挟持: 挟んで支持する
巻着: 巻きつける
貼着: 貼り付ける
密着: すき間なく付ける
当接: 接する
近接: 接近した

前記: 前に記したところの(一回記述した内容は全て、前記○○、)
該: すでに述べたところの(前記と同じ)
形成: 形作った
近傍: 近くの
案内: ガイドする
手段: ある方法を具体的に限定してしまうのではなく、同じ目的をさまざまな方法で達成できること
     を示唆する場合に使う用語。英文特許でいう Means  
     例:固定手段、 記憶手段、 駆動手段、 加圧手段、




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