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     組立て調整の方法  


電子制御機器に用いられるネジの種類

ネジの省略記号
PはPAN (ナベ)、FはFLAT の略です。 組立図などでネジを指定する場合は
 M3P×8、W+SP    :M3ナベ 長さ8mm ワッシャ+スプリングワッシャ
 M4W×8          :M4ダブルセムス 長さ8m
のようにします。

電子制御機器に用いられるネジは、M2、M2.6(M2.5)、M3、M4、M5、M6 です。 Mはメートルネジを表します。時折、コネクターなど電子部品専用のインチネジがあります。なお、JISではM2.6に替わってM2.5を使うよう旧来から薦められていますが、依然としてM2.6が多く使われています。


ネジの材質は通常、鉄(S)で表面処理は三価クロームが一般的です。キャップスクリューとセットスクリューは表面が黒染のものが多いようです。
シンチュウ(黄銅)製ニッケルメッキのネジは、オニワッシャ(外縁にギザギザのあるワッシャ)と共に、アース接続や、端子接続に用いられます。
絶縁が必要な箇所にはPC(ポリカーボネート)のネジが使われます(日本ケミカルスクリューなどで製造)


ナベネジは従来から最も普通に使われる小ネジです。外観的には劣るため、主に装置内部に用いられます。
このまま使うと振動などで緩み易いため、スプリング・ワッシャ(バネ座金)およびワッシャ(平座金)と組み合わせて用いられます。なお、ワッシャには「並」と、外径が小さい「小丸」があります。

サラネジは頭が90°の皿形状になっています。ネジ頭が突出しては困る部分に用いますが、ネジ止めした部品が動くのを防止するために用いる場合もあります。ただし、サラの形状は一般的にかなり偏芯していますので、精密な位置出しには使えません。

バインドはワッシャなしで使います。直径がやや大きく、座の面がしっかりしています。準外観部にも使うことができます。注意点としては、仮り締めしたネジと本締めしたネジの見分けがつかないため、手作業では不良組立てが発生しやすいことです。自動ドライバー組立て専用と考えてください。

ダブルセムスは、ナベネジにスプリングワッシャと平ワッシャが予め組み込まれているネジです。組立て性が良いため、現場では多く使われています。並ワッシャと、小丸ワッシャがあります。またスプリングワッシャのみが入っているものは、シングルセムスとも呼ばれています。これらのネジは店頭ではあまり見かけませんが、ネット販売で安価に購入することができます。

キャップスクリュー 頭にヘックスドライバー用の六角穴が付いています。ナベネジやサラネジに比べ硬い材質でできていますので、締め付けトルクを大きくすることができます。

セットスクリュー 俗にイモネジとも呼ばれ、ネジがネジ穴の中に潜り込んだ状態になります。ギヤやプーリーのボス部分を軸に固定するために使われます。M2とM3が主に使われ、締め付けはヘックスドライバーを使います。ネジ先端は2種類あって、普通はダブルポイントといって先端中央にクボミがあります。他に、締め付け跡を防止するフラットポイントがあります。ダブルポイントは、軸に締め付けると跡が付き、ギタやプーリーが抜けなくなりますので、軸の一部を平坦に切削するか、ネジ径の幅で、周に沿って深さ0.2〜0.3mmの溝を付けます。

六角ボルト ボルトは通常、建築や建設機械向けの大型ネジですが、M3やM4の小型ボルトも製造されています。用途としては、頭の方からネジを回せない場所に、横方向からスパナで回す方法が採られます。


ネジの適正締め付けトルク
ネジの種類   N・m    (Kgf・cm)
 M2       0.18     1.8
 M2.5      0.36     3.6
 M3       0.63     6.3
 M4       1.5      15
 M5       3       30
 M6       5.2      52
 M8       12.5     125
 M10      24.5     245

上の適正トルクは、意外に弱いと感じられるトルクです。心配のあまり倍以上の力で締めている作業者も多い筈です。このため、ネジがかじってしまい、外すことができなかったり、ガレてしまうケースも多いようです。(逆に、ネジ破損を恐れて極端に弱い締めをする作業者もいますが、)
できる限りトルク設定ができる電動ドライバーやエアドライバーを使うことが望まれます。
プラスチック部品などは、もっと弱い力で締める必要があります。


その他の締結機械要素
スプリングピン: ロールピンとも呼ばれています。φ2、φ3がよく使われます。呼び寸法の穴に打ち込んで、ギヤやプーリーを固定するために使います。全部打ち込まないで、飛び出したピンの部分をフックに使う場合もあります。

平行キー: モーターなどの軸とプーリーを締結するために使います。平行キーの対辺寸法には 2、3、4mm があります
平行キーはそのままでは抜けてしまうため、キーにザグリ穴を入れてボス部からネジ止めしたりすることが必要です。

平行ピン: スプリングピンと似た使い方をしますが、中実ピンなので組立ては楽です。ギヤ側を袋状に成型して、スラスト方向はEリングで止めます。

Eリング: 軸に溝を入れ、略Eの形状のEリングを挟み、軸の横に部品が動かないよう固定します。ミニチュアボールベアリングを組み込んだり、ローラーを軸に止めるために多用します。

Cリング: Eリングより外径が大きい軸に嵌めて使います。軸に溝を入れなくても固定することができますが、脱着するのに専用工具が必要です。


ネジの緩み防止
やや透明がかった青や赤色の「ネジ緩み防止」ペイントがありますが、これらをネジ頭と周囲に塗布しただけでは殆ど緩み防止の効果はありません。赤のペイントは「調整済み、触れるな」の意味の方が重要です。

実質上の緩み防止機能が必要な場合は、酸素遮断による硬化作用を持った緩み防止剤が有効です。 Loctite601 は金属と金属の接合面を短時間で接着することができます。ネジ山に塗布してネジを締めると、短時間で硬化し、ネジを取り外せない程硬化します。 Loctite242 は完全硬化ではなく、ネジを後から取り外すことができる接着剤です。これらの酸素遮断型接着剤は、外気に触れた状態では硬化しないため、ある程度の接合面積がある部分の隙間が必要です。


チェーン/ベルトの張力調整
チェーンや歯付きベルト(タイミング・ベルト)の張力(テンション)は適正に調整するのが困難なもののひとつです。


チェーンも歯付きベルトも、張り詰めた状態で使うことは厳禁です。
プーリーが自由に回転できる状態にして、(あるいは、ベルトの弛みをプーリー間に寄せた状態で)、指でベルトの張りの「遊び」を測ります。スパンの中間部分で、ベルトに伸びを与えない程度の力で上下に軽く振って、その振り幅を測ります。これをベルト(チェーン)の「遊び」とよびます。
張りの遊びは
 チェーン:       L× 0.03〜0.05     (軸間が200mmの場合、6〜10mm)
 歯付きベルト:    L× 0.01〜0.02     (軸間が200mmの場合2〜4mm)

感覚的には、チェーンでは、やや張りに余裕が出た状態で、テンションスプロケットを固定します。
MXLやXLベルトでは、テンションローラー位置を調整して、ベルトに張力が掛かり始める位置に固定します。つまり、それ以上引っ張るとベルトに伸ばす力が加わる手前が最良の位置です。見ても、触れても、この状態と、ベルトに過度のテンションが加わった状態とを見分けることは困難ですから、注意が必要です。あくまで、テンション調整ローラーの位置を動かして行って、ベルトの緩みがちょうど無くなった位置にすることが大切です。


オイル、グリース
潤滑油は機械装置にとって極めて重要です。最近の家電を始め、多くの機種は、一種の使い捨て設計で、6〜7年程経ったら、あちらこちらに問題が出てくるよう故意に設計されています。例えば、ボールベアリングや、含油軸受けの代わりに、プラスチック軸受けを、潤滑油抜きで使っている場合もあります。
一昔前の発動機には、横から残油量が見える蓋付き給油器があちこちに付いていましたが、今では機械装置に注油する習慣は何故かなくなりつつあるようです。数年間だけは、注油なしで装置を動かせる細かい技術が進んだせいかもしれません。

これが災いしてか、多くの技術者は、磨耗という現象に対して無関心になってきているようです。金属と金属が接触した状態で摺れると、必然的に磨耗が発生します。例えば、数十万Km以上走行できる車のエンジンも、ピストン・シリンダーのオイルが切れた途端、数秒以内でピストンが完全に焼き付いてしまいます。ミクロン単位のオイルの膜が金属と金属を隔離して、磨耗や焼き付きから防御している訳です。
ピストンほどではないにせよ、例えば、スプリングとフックの接触部分、摺動部分、滑り軸受け、チェーン などには必ず注油することが求められます。注油は装置寿命を左右する最も大きなファクターです。
オイルは荷重と滑り速度(PV値)に適したものを選びます。


高速、低荷重:マシン油 (サラサラ流れる低粘度)
微細な部分にも浸透できるため、研磨仕上げしたシリンダーや、高速運動するミシンなどの摺動部分に使います。揮発性があるため、定期的に給油が必要です。

中速、中荷重一般オイル (トロッとした粘度)
自転車のチェーンや、通常の機械の摺動部分に使います。

低速、高荷重:グリース (ペースト状の高粘度)
スプリングのフック部や、支点軸部など、摺動速度が遅かったり、荷重が大きい箇所には高粘度のグリースを付けます。黒いモリブデングリスも使われます。


シリコンオイル、シリコングリース
通常のオイルやグリースに比べ酸化しにくく、温度変化に対する粘度の変化率が低く、プラスチックを溶かしにくいという特徴があります。
耐熱、耐寒、耐水性にも優れていますが、浸透力と潤滑性(潤滑膜をキープする力)が通常の潤滑油より劣ります。





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