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機械系汎用 QCAD
フリーな2D-CADとして、Jw_cad、RootPro CAD,HO_CAD,鍋CAD、AR CAD など、数多くのCADが発表されていますが、何れも一長一短があって迷うところです。
QCADはスイスのAndrew Mustun氏によって開発されたオープンソースのCADで、決して有名ではありませんが日本語にも対応しており、使い方次第ではかなり高い機能を示してくれます。図面のPDF出力と、DXFファイルの読み込み、書き込みが可能です。
なお、ここで使用したQCADは 3.27.6 です。
●QCAD インストール
ダウンロードQCAD
この中から適したOSを指定してダウンロードします。ただし、ここでインストールされるのはTrial版なので、そのまま使い始めると15分で使えなくなってしまうため、以下の操作をしてQCADを無料版に改造する必用があります。
エクスプローラーを起動して
C:\Program Files\QCAD\plugins の中の
@ QCADDWG.dll
A QCADPOLYGON.dll
B QCADPROSCRIPTS.dll
C QCADTRIANGLATION.dll
以上四つのファイルを削除します。これでQCADはフリー版として使い続けることができます。
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メニューバー その機能
ファイル: ファイルの読み書きや図面の印刷をします。
編集 : 選択した図形の削除やコピーなどの編集ができます。
ビュー: 表示するツールなどの選択ができます。
選択 : 図形を選択する方法を指定します。
描画 : 各種図形や文字を描きます。
寸法 : 寸法を入れる
修正 : 図形や文字の修正ができます。
スナップ: 図形の特異点をスナップ(吸い込み)します。
情報 : 図形の情報を調べます。
よく使うメニューは画面左端のツールバーに配置されています。
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画層(レイヤ)の操作
CADは何層もの透明板を重ねたような構成のレイヤに図形を作図します。
任意のレイヤの 表示/非表示/書換えロック は画層リストから設定できます。
画層リストが未表示の時は ビュー→画層リスト で表示します。
眼のマークをクリックして濃くするとレイヤ表示。薄くすると非表示
上の例は、P102のレイヤをクリックしてアクティブ(書込可)にした状態。
レイヤ0とレイヤP201が表示レイヤ、その他のレイヤは非表示。
錠のマークを濃くするとそのレイヤはロックされて書き換え不可になります。
一番上の見出し欄の眼を濃くすると全レイヤ表示、薄くすると全レイヤ非表示
+をクリックすると新しいレイヤの追加、
-をクリックすると選択されているレイヤの削除
鉛筆マークをクリックすると、選択されている画層の名前、線色、線種を変更できます。
レイヤリストの並びは画層名の文字列順でソートされるため、
U012A のような画層名にして
U : そのパーツが属するユニットの記号
012: パーツ番号
A : 線種記号 (A外形線/B隠れ線/C中心線/D寸法線 のように区分)
というように、関連する部品やユニットのレイヤが連続して並ぶようにするのがコツです。
(線幅)線幅は外形線が太線、隠れ線は太線または細線、その他が細線で、太線と細線の線幅比は2:1とされてます。明確な決まりはありませんが
太線:1mm 細線:0.5mm (A1以上)
太線:0.7mm 細線:0.35mm (A2)
太線:0.5mm 細線:0.25mm (A4、A3)
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描画メニュー
何れもわかりやすい作画機能ですから迷うことはないでしょう。
線分→2点間の線分 は連続線分を兼ねているので、目的の線分ができたら右クリックで中止します。
Alt キーを押しながら線を描くと水平または垂直線が描けます。
線分の水平線および垂直線は平面図から側面図や平面図を作図する時に頻繁に使用します。
円の半径や直径のように、値で入力するコマンドは下図のように表示される入力欄に数値で入力します。
ハッチングは選択された図形の端点と端点が一致している必用があります。端点が離れている場合は、修正の分解や面取りを使って、完全に図形を閉じてから選択してハッチングします。円は特に、修正→分解で円弧にしてから他図形と面取りで接続する必要があります。
ハッチングの標準的なパターンは ANSI31、尺度0.3、角度0
テキスト
描画→テキスト で表示される画面でフォント、文字の高さ、位置合わせを指示し、入力画面に文字を入力したら位置を決めます。日本語の場合は日本語フォントを選びます。
テキスト入力の終了は右クリックです。
なお、一旦入力した文章を変更する場合は、 修正→テキスト編集 テキストを選択します。
どういう訳か、シンプルテキストのチェックを入れた状態で入力して、ファイルを保存すると、テキストの位置が原点に移動してしまいます?チェックは外しておいた方がよさそうです。
〔注〕この解説の中には使っていませんが、QCADの実行中にしばしば「エンティティ」という語彙が出てきます。直訳すると「実体」ですが、点、線、円、楕円など、「図形要素」のことです。
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スナップメニュー
スナップは図形の特異点を拾う方法です。例えば、線の端点、線の中央点、円の中心点、などです。
スナップメニューでどのような特異点を画面に表示させて、これをクリックした時に使うかはスナップメニューで選択します。
下の例ではスナップは自動になっています。自動は、端点、中間点、円の中心などが自動的に検出されるモードです。
スナップ→フリー と ビュー→グリッドoff でスナップは完全に無効となります。
なお、グリッドの間隔は、 編集→図面設定→一般→グリッド で設定されています。
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選択メニュー
操作したい図形を選択状態にしてから、どうするかを指示するのがQCADの特徴です。選択コマンドはどのような条件で図形を選択するかを決めます。
輪郭選択は図形の輪郭をクリックして選択します。
上の選択条件の中から何れかの方法を選ぶと次のような「モード」を選ぶ表示が現れます。
これは、選択を続いておこなった場合の働きを現わす図で、例えば長方形範囲を選択した場合、
左から2番目のモードは範囲が+され、三番目は−、最後のモードは×となります
なお、輪郭選択すると、端点が接続された線分が全て選択されてしまいます。物体の外形の輪郭を一体として操作する上でこれは便利なのですが、輪郭の一部形状だけを変更したい場合などは逆に困ってしまいます。こんな場合は、長方形範囲選択を使うと囲まれた範囲内の図形のみを選択できます。
例えば、選択後に Delete キーを押すと、選択された図形が削除されます。修正→回転メニュー を使うと選択した図形を回転させることができます。あるいは、編集→コピー をすると、選択した図形を OSのクリップボードに取り込み、その後で、編集→貼り付け するなど、選択は各種操作の起点となります。
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修正メニュー
選択された状態の図形を修正しますが、図形を選択してない状態でも、下図のハイライトの項目の操作はできます。
移動/コピー
図形選択後に、移動/コピーを指示すると、画面の一番下に 「基準点」 という表示が現れ、次の操作が促されます。この操作指示は各種の操作で参考になるので利用してください。
基準点を指定して、目的位置まで図形を移動し、オリジナル図形を残すか消すか指示します。
回転、縮尺
も同様の操作ですが、縮尺は中心点を指定後、”ファクター”に0.5のような縮尺の比を入力します(下図参照)。
オフセット (選択なしで直接操作できます)
座標基準 0,0 からの距離、あるいは、ある部品から3mm離れた場所にその部品を配置する、、等、このコマンドは新たな部品を置く際に多用される重要な操作です。
面取り (選択なしで直接操作できます)
二つの線を交点で角の面取りを実行します。
面取り寸法は下図のようにトリム寸法欄に数値を入力します。図面記号 C3 は長さ1,2とも3mmです。
2線トリム (選択なしで直接操作できます)
2本の線の交わりの有無に関わらず、交点で角を落とします。寸法0の面取りと同じです。オフセットと共に多用される重要な操作です。
トリムと伸長 (選択なしで直接操作できます)
最初にクリックした第一の線(またはその延長線)の位置まで、2番目にクリックした線を延長(または短縮)します。
分割 (選択なしで直接操作できます)
分割する線や円を指定してから分割する点を指定します。ただし、分割しても線には隙間ができませんから、隙間を作るためには
隙間を分断を使います。
伸長/縮小 (選択なしで直接操作できます)
画面上部の「増分」欄の値の長さだけ、指定する線長さが+または-されます。
ストレッチ (選択なしで直接操作できます)
一点目と2点目で囲んだ長方形の領域に含まれる図形の端点を、3点目の基準位置から4点目の位置まで引き摺って変形します。ある領域に含まれる図形全体をそのまま移動し、他領域に掛かる図形を変形する場合に使用します。
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寸法メニュー
水平や垂直などの寸法を入れようと寸法コマンドをクリックすると、下図のような「
スケール」入力を促す画面が表示されます。これは図形に縮尺寸法を入れることを可能にする大切な機能です。
例えば、Φ20の円を、縮尺ファクター0.5で1/2の大きさに縮小してから
この直径を、スケール1:2で寸法記入すると、下図の右のような結果となります。
つまりこの機能は、1/1の原図を基に、これを自由に拡大縮小してから、逆数の縮尺で寸法入れすることで任意の縮尺図を描くことができることになります。ビルのような建造物から腕時計の歯車の寸法図までを同じA4の図面にすることができることになります。
寸法公差(許容差)
寸法の許容差は下図のように上の許容差、下の許容差欄に入力します。
公差は左端の入力欄に 20H8のように入れます
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情報
寸法を作成せずに画面で図の情報を知ることができます。
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図形のレイヤ間移動
予め、ビュー→ツールバーとウィジェット→ウィジェット でプロパティエディタにチェックを入れて、プロパティエディタを表示しておきます。
下はレイヤ0に描かれた二つの円をレイヤ層1へ転送する例です。
転送元の図形を選択するとプロパティエディタに、図形の画層が0であると表示されます。(下図)
プロパティエディタの画層番号をクリックして転送先のレイヤ(例では層1)を選択します。(下図)
これで、選択した図形は元のレイヤから、移動先のレイヤへと移動します。
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図形のファイル間コピー
コピー元のファイルと、コピー先のファイルを開きます。
コピー元のレイヤ名とコピー先のレイヤ名が同じものを使い、
コピー元の図形を選択状態にして→編集→コピー
ファイルをコピー先に切り替えて
編集→貼り付け→位置を決定、Escキーで終了
(コピー先のファイルにコピー元と同名のレイヤが存在しない場合は、自動的にコピー元と同名のレイヤが作成されます。)
(ファイルAのレイヤXを、ファイルBのレイヤY へコピーする場合は、
ファイルAの レイヤX →レイヤ0 へ移動
ファイルAの レイヤ0 → ファイルBのレイヤ0 へコピー
ファイルBの レイヤ0 → レイヤY へ移動
という少々回り道の方法と採ります。レイヤ0はファイル間コピー用として空けておくと良いでしょう。)
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印刷
用紙は 編集→図面設定→印刷のページ で、用紙サイズや向きを設定します。
ファイル→印刷プレビュー で印刷位置を合わせ、良ければ ファイル→印刷 をします。
スケールは寸法の項で説明した方法により行い、印刷は1:1で行いますが、ここで縮尺することもできます。
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図面枠
参考のためにA4表題欄の例を下に添付します。部品図の図面ページに図形と寸法、図番などを入れ、表題欄と重ねて印刷します。
表題欄.zip
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三面図の作成
3DCADは立体図形を平面上に表現するCADですが、2DCADは三面図と呼ばれる図法で立体を図面化します。
三面図の狭義は正面図、側面図、平面図の三つの図ですが、それは空間が三次元で構成されていることと無関係ではありません。物体の形状を3組の図形情報で表す点で三面図は必用条件を備えていると言えます。
CADを使うことは現在では当たり前になりましたが、CADをどのように使って三面図を作るかという基本技術は意外にも知られていないようです。
下図は、第三角法による平面図と側面図を元に平面図を作図する例です。
参考レイヤに、正面図の原点(0,0)、そして装置サイズに合わせて側面図と平面図の原点を0,0から等距離に作図しておきます。
先ず正面図を作図し、次に正面図の水平位置と側面図の原点を参考に側面図を作図します。
次に、 0,0 を中心にして側面図の図形を 90°回転コピーした図形から延ばした水平線と、正面図形から上に伸ばした垂直線を参考に、平面図形を作図します。
こうした手法で、レイヤ毎にパーツの原図を作成していきます。
原点から見て、側面図は0°、平面図は90°方向の投影図ですが、部品図にバラス場合は、これら3面図を元に、任意の角度の投影図を描くことができます。基本的な手法は上例に準じますので試してみてください。
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QCADの特徴
QCADは必ずしも高速では無いため、データが重くなってくるとレイヤ切り替え速度などが遅くなってきます。速度低下を避けるには、
1)原図ファイル(寸法を入れてない現寸の三面図)と、原図を元に
作成した部品図ファイル(用紙に合わせて縮尺を調整し、寸法を
入れた図面)は別にする。
2)部品図ファイルも部品番号が1〜50、51〜100、101〜150、、
のように小分けにする。これは、図面訂正で発生する旧図を図枠より
大きめの領域外に移動して保存しておくためにも重要です。
等の対策をした方が良いでしょう。
処理速度から見た場合、RootPro CADの方が速く、コマンドも使いやすいのですが、用紙への出力を便利にしたいがための配慮が災いして、練習用には良いとしても実用には難があるようです。
QCADも、任意のレイヤから他のファイルのレイヤへの直接コピーが不自由な点、あるいは、ひとつのレイヤの線種がひとつに限定されるなど、AutoCAD的な不自由さがあるのですが、フリー版でもdxfファイル書き込みができるなど、やや有利の感があります。
版数 3.27 の時点では未だ幾つかの不完全な点があるようです、早い時点での修正改良が望まれるところです。