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機器開発と仕様


1) 開発仕様書

開発仕様書はプロジェクトの主任設計者が自ら作成監修する重要な書類です。
開発プロジェクトの記録であると伴に、製品仕様書、保守マニュアル、取り扱い説明書等の元にもなります。

しかし、残念ながら開発仕様書が作られているケースは多くありません。市場のニーズ、メカ、電気、ソフトを含む全体を理解した上で開発仕様書が作成され、そして内容に変更が生じる度に正確に改定の履歴が残される必要があります。いわば、開発仕様書こそが、メーカーの技術水準のバロメーターなのです。

【注】 「主任設計者」を置くメーカー自体が少ないのかもしれません。ここで言う主任設計者は、役職上の「主任」ではなく、製品開発の目的を追求する「船長」の役目を持つ技術者を言います。製品開発においてタスクチームが組織されることは、よくあることですが、メカ設計から4名、電気回路設計から2名、ファーム設計から2名、のように集められる、寄り合い所帯である場合が多いようです。そのようなチームでは、特にリーダーがいなくても、販売部門、あるいは経営陣から出される幾つかの要求さえあれば、何となく作業が進行してしまうのです。しかし、こういったチームからは、残念ながら独創的な製品は生まれてきません。無論、独創的な製品など不要で、単にこの春流行の色揃えをするだけで売れ続ける恵まれた企業なら別ですが、、


1-1)開発の目的と製品の特徴
製品にとって最も大切な項目です。製品が目標とする市場。
価格/製造コストの目標値、意匠の方向性、性能、安全性、消費電力、環境、操作性、寸法、重量、等々。および犠牲としても構わない項目とその限度

1-2)開発計画
開発日程の概略を線引きします。

  第1次試作、評価
  第2次試作 評価
  量産試作、評価
  マニュアル作成(取説、保守マニュアル)
  発売予定日

  試作開発費概算
  予定販売台数(初年度、以降□ヵ年)
  予定量産原価
  予定販売価格

注)技術サイドと販売サイドの目標値が合致しない場合は無理に合わせず併記

1-3)競合機種の仕様と、新製品の目的仕様の一覧表

1-4)装置の概略図と部分の名称
ある程度眼に見える形で、装置の全体構造を図示します。
センサー、モーター、操作部 等I/Oの位置と記号名も引き出し線で表示します。

記号名は、メカ、電気、ソフト、保守、各方面で共通に使用する重要なキーワードなので開発仕様書で一元的に規定することが重要です。


1-5)I/O表
入力信号
  記号名、部品型番、ロジック(アクティブ)

出力信号
  記号名、部品型番、電圧/電流、ロジック(アクティブ)

操作部信号
  信号名、部品型番、IN/OUT、ロジック(アクティブ)

通信
  信号名、コネクタ型番、プロトコル
  コマンド規定

電源
  入力(電圧、周波数、消費電力、待機電力)
  出力(電圧、電流、ピーク電流)
  電源ユニット型番


1-6)ポート割付表
接続コネクタ型番
ピンアサイン表


1-7)データ フォーマット
装置に使用するデータの規定


1-8)操作仕様
装置の機能デザインともいえる重要な項目です。対人インターフェースとしての操作スイッチ、表示機能、そして表示マークを決定します。スイッチに換えタッチパネルを使用する場合においても、その機能デザインは開発仕様書で管理すべきものです。


1-9)装置の動作
初期化動作の内容
運用動作 と 運用操作方法
ユーザー設定操作 (設定操作への入り方と操作方法)
保守テスト動作 (テストモードへの入り方と操作方法)

【注】この項で規定する内容は、ファームやソフト開発に欠くことのできない項目です。
装置動作が分析的に的確に記述されなければなりません。1-4〜1-5で定めた装置各部の名称記号を使い、言葉でその動作を規定していきます。


1-10)エラー表示とリカバリ操作


1-11)設計データ
設計に係わる全計算書
使用する重要デバイスの資料
実験データ




2) 開発手順
注)以下のフローは基本フローを示しただけであり、評価手直し再設計等の手順を省いています。

2-1)機構設計

基本性能に係わる各種計算
 ↓
意匠検討
 ↓
レイアウト設計
 ↓
デザインレビュー(設計検討会議)
 ↓
部品図作成
 ↓
機械系部品リスト作成(加工部品、購入品)
 ↓
試作部品発注
 ↓
組立図作成
 ↓
マニュアル作成(保守マニュアル、消耗品リスト、取扱い説明書)


2-2)電子回路設計

基本性能に係わる各種計算
 ↓
回路設計
 ↓
電源の検討
 ↓
基板設計(回路図,Net List)
 ↓
ハーネス図作成
 ↓
基板部品リスト作成
 ↓
ハーネス系部品リスト作成
 ↓
アートワーク検討
 ↓
試作部品発注
 ↓
テスト基板の作成


2-3)ソフトウェア設計

アーキテクチャー決定
 ↓
入出力関数作成
 ↓
テスト基板にて入出力機能確認
 ↓
コーディング
 ↓
デバッグ


2-4)梱包設計

外形寸法図作成(重量、荷重受け箇所指定)
 ↓
同梱添付品
 ↓
外箱印刷指示(版下、位置)
 ↓
梱包材選定、発注
 ↓
落下試験



3) 問題解決 NGファアイル
先に上げた開発仕様書と同列に重要なファイルが、このNGファイルです (ファイル名: 製品番_NG )
試作時点から、製造中止以後も、製品に関し発生する、あらゆる問題点を記録するのがこのNGファイルです。
やはり、主任設計者が監修責任を持ち、対処が完了するまで追求されなければなりません。
このNGファイル方式は、カイゼンや、カンバン方式程有名ではありませんが、製品開発における重要な品質管理方法としてF社で取り入れられている方式です。泥臭い管理方式こそが品質を上げる唯一の近道です。

例)
  番  内容                                発生日      対処
  854 電源投入後の起動時に ERR45 が発生する時がある。 2013/10/2
     →再現実験実施10/30まで
  855 側板上角部のエッジが危険                  2013/10/5
     →C面取り                                        済
  856 部番xxxに錆びあり                       2013/10/10
     →内観につき対処不要                                中止

このNGファイル方式を成功させる鍵は、関係者全員が持ち歩くNGカードメモです。問題が生じたその場で、問題をNGカードに書くという習慣が必要だからです。カードはNGファイルに転記済で廃棄します。
NGファイルの各項目は論文ではありませんから、簡潔に短く書くことがポイントです。重要な項目であれば、詳細は別途レポートを作成すれば良いからです。
NGファイルは、関係者間に共有されなければなりません。また社会的責任を伴う事案に関しては、速やかに上層部を通じ公表されなければならないのは当然です。



4) 製品規格 
製品規格は社外に公表する製品のスペックです。製品が持つ主要な、特徴、性能、品質等を記述します。
業種、品種によって、製品規格に求められる項目は大幅に異なりますが、以下はその一例です。

基本仕様: 製品の概要
 機種名      SX25945D
 商品コード    ○○○○○○
 液晶表示部   2.5型TFT
 操作部      タッチパネル
 用紙寸法     L版〜A4
 給紙トレイ枚数  150枚
 自動給紙     あり
 手差しトレイ    あり
 解像度(dpi)    4800(横) 2400(縦)
 重量        8.5kg
 外形寸法     幅:390 奥行き:380 高さ:185


電気特性
 電源        電圧:AC100V±10% 単相
            周波数:50/60Hz
 突入電流     8A以下
 漏洩電流     0.75mA以下
 絶縁抵抗     1次ライン-筐体間10MΩ以上
            2次ライン-筐体間5MΩ以上
 絶縁耐圧     1次ライン-筐体間  1200V/1分
            2次ライン-筐体間
            E ≦ 30V   100V/1分
            E > 30V   E×10(MAX900V)
 電源ノイズ耐圧 ノーマルモード:1200V
            コモンモード:1200V
             5分間正常動作
 静電ノイズ耐圧  接触法 8kV 各外面1回


機械特性
 耐落下      梱包荷姿にて各面1回、床面落下50cmにて異常なきこと
 騒音        55 db (A特性) 以下


設置仕様
 設置空間     前面方向  300 mm以上
            後面方向  50 mm以上
            左面方向  50 mm以上
            右面方向  50 mm以上
 消費電力     制御中   75 W以下
            待機中   5 W以下
 周囲環境         稼動中       休止中
            温度 5〜35℃      -5〜40℃
            湿度 30〜80%RH   30〜80%RH






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