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LTSpiceで電源回路


電子回路で使う電源を作り出すのが、電源回路。 スイッチング電源として販売されているような大容量の電源を作るのはかなり大変なことであるが、ここでは比較的簡単な電源をLTspiceで検討してみる。


シリーズ レギュレート式 安定化電源
緑:V1  青:Vz 赤:Vout


上はトランジスタによる簡単な安定化電源回路の例。負荷として、500Ωの抵抗を接続してある。
D1は定電圧ダイオード(ツェナー・ダイオード)。R1を通してD1に逆電圧をかけると、D1には安定したツェナー電圧が発生する。 D1に流す電流は、ツェナーによるが2〜10mA程度となるようなR1を使う。これにより、V1→R1→ベース→エミッタ→負荷(R2)に向かって電流が流れるが、ベース電圧は、ツェナーによってほぼ5Vに安定化されているため、
 出力電圧=ツェナー電圧 - (エミッタ―ベース電圧)
 5.46V   = 6.3V -  0.84
となったところでバランスが取れる。 通常Vbeは0.6〜0.7であるが、この例ではやや高く出ている。

この方式は、負荷に対して、制御素子(トランジスタ)を直列に入れるのでシリーズ レギュレート式と呼ばれる。
ツェナーと負荷で消費される以外の電力はQ1で発熱するため、トランジスタQ1には、放熱板を付ける。



シリーズ レギュレート式 安定化電源2
青:V1   緑:出力電圧




3端子レギュレーター


LTspiceのpowerの中には出来合いの3端子レギュレーターが準備されている。上は5VレギュレーターのLT1086-5。
トランスと平滑コンデンサの条件を変えて、リップル量の確認もLTspiceを使うと容易にできる。



3端子レギュレーターの出力電圧変更


固定電圧用3端子レギュレーターを使っても電圧を変えることができる。
上図は5V3端子で8Vを得る方法。
GND端子から流れ出す電流が極小の場合、R2とR3の値の計算は容易だが三端子によっては1〜6mAと大きいため、R3は半固定VRを使って調整する。なお、上例の回路図には省略しているが、安定化のためにはADJ端子から0.1μのパスコンでGNDへ落とす。






トランジスタでフィードバックの負担を減らす方法。R2、R3は可変抵抗器を使用することができる。



降圧型 DC-DCコンバータ
入力:DC12V  緑:Vout


DC電圧を下げる DC-DCコンバータの例。 負荷としてR2(60Ω)を接続。

555で発振し、約42kHzで、MOS-FET(M1)のゲートをON-OFFしている。ONした時、電流は出力電圧を上昇させるが、インダクタL1が入っているため、急には増加できず、12Vに向かって、徐々に増加していく。MOS-FETがOFFになると、D1を通じて、なおも同方向に電流が流れ続けようとするため、出力電圧は下がっては行くが0にはならない。

R7,R3,Q1は一種のフィードバック回路で、出力電圧が高くなり過ぎると、MOS-FETのゲート電圧を落とす方向に作用している簡易的な電圧安定化回路である。

例では12Vを約6.2Vに降下させている。 このチョッパ型電圧降下回路は、シリーズ レギュレート式と異なって、余った電力を発熱で捨ててはいないため、小電流なら、放熱板は不要である。

D1で使用しているダイオードはショットキー型と呼ばれ、逆耐圧は比較的低いが、順方向電圧が低く、高速スイッチング動作ができるダイオードである。



LTC1625



LTspiceに標準で入っている降圧型コンバーターを使うと、簡単に設計できる。
上はLTC1625による12V-5Vコンバーター。OUTから分圧してVosenseに帰還をかけることで電圧を調整できる。



昇圧型 DC-DCコンバータ
入力:DC5V  緑:Vout


この回路の基本的な構成要素は前例の電圧降下型DC-DCコンバータと似ている。ただし、インダクタL1とMOS-FETおよび、ダイオードD1の接続は異なっている。

MOS-FETがONすると、L1からGND方向に大きな電流が流れ始める。電流が大きくなった時、MOS-FETをOFFすると、インダクタを流れる電流は方向を変え、D1から出力方向に向かうことになる。このエネルギーはL1のインダクタンスが大きいほど大きなものになり、電源電圧を越す電圧にもなる。流れを急に堰き止めた水が、それまでの水面高さより上昇するメカニズムと同様である。
R7,R3, Q1,Q2は簡易的な出力電圧安定化回路である。トランジスタは1段でも或る程度の安定化効果はあるが、ダーリントンとした方が高い効果が得られる。出力電圧の調整はR3を可変抵抗器にすることで可能。



下はトランジスタに替えコンパレーターを使った回路例。出力電圧の安定性が向上する。




【注】 上例の降圧型、あるいは昇圧型DC-DCコンバータは電圧を変換するのにトランスは使っていないが、インダクタに蓄えられるエネルギーを利用している点では通常のスイッチング電源と原理的には同じである。
大きな電力を得るためには、高い周波数と、大きなコアと太い巻き線が必要になるが、高速になるとMOSFETのスイッチング効率が低下するため、スイッチング周波数は数10kHz程度がよく使われる。
555を使うコンバーターやスイッチング電源はあまり見られないが、安定した発振が簡単に得られるため、見直されても良い方法ではないだろうか。上例のような回路で市販のインダクタ(φ14、L18)を使うことで、出力15〜30W程度のコンバーターを構成することができる。




LT1615



LTspiceに入っている昇圧型コンバーター LT1615
例は、3.3V-20V コンバーター



定電流電源(吸い込み型)



一般的に安定化電源というと、大きな電流を取り出しても電圧が低下しにくい定電圧電源を言うが、負荷の重さが変わっても同じ電流値が流れ続けるよにする回路は定電流回路と呼ばれている。例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池の充電は、電池の電圧が特定値以下の間、定電流で充電することが多い。こうした用途に用いられるのが定電流回路である。
数mA程度の定電流はツェナーダイオードやダイオードの順方向電圧とトランジスタ1個による簡単な回路で十分であるが、もっと大きな定電流が必要な場合は、ブースター回路が必要になる。
上例は、負荷L1に1Aを流す定電流回路。抵抗R1の電圧降下が、コンパレーターU1の+入力の比較電圧値と同じになるように電流が流れる。電流値はR3とR4を可変VRにするか、あるいはR1の値を変更するで変えることができる。R1とQ1は放熱をする必要がある。
もっと小さい電流の場合はダーリントン接続ではなく、シングルトランジスタまたはOPアンプだけでも済む。



定電流電源(吐き出し型



これは電流吐き出し型の定電流回路。
P型MOSFETを利用して電源電圧V側に電流検出抵抗R1を入れている。
回路例のFDS4559-PのVGS(ゲートしきい値電圧)は-3VであるがMOSFETにより-1〜-3.5Vと差があることに注意。




絶縁トランス型 非安定化スイッチング電源
トランスは、漏れ磁束が無く、結合係数kが1の場合、電圧は巻き数比Nに比例し、インダクタンスはN2に比例しますが、詳しくはスイッチングトランスを参考のこと。

下はフォワード回路方式の原理回路のシュミレート。スイッチング周波数は50KHz
白:L2トランス出力電流
水色:L1トランス入力電流
赤:MOSFET ドレイン電流
ピンク:MOSFET ドレイン電圧
緑:24V出力電圧



R5,C2のスナバ回路は、R5に発生する熱とMOSFETの耐圧の双方の兼ね合いで決める必要がある。
フォワード式は、L1に流れる電流と逆方向の誘導電流がL2に流れていることがわかる。

これを実用的な回路にしたのが下図。24V出力は電流を1A取り出した場合、かなりリップルが出ているがモーターやソレノイドであれば通常差し支えないため、回路電源だけを5Vに安定化している。7805に代わって降圧型5端子を使えばもっと効率を上げることができる。













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