LTspiceで回路設計
LTspiceを使って、基本的なトランジスタ回路や、OPアンプ回路を研究してみます。
なお、本稿で採用している半導体素子は手元にあるSpiceデータを利用したもので、必ずしも回路に最適な半導体という訳ではありません。



  第一章 トランジスタ回路

トランジスタには、バイポーラ型、電界効果型(FET)、酸化金属膜電界効果型(MOSFET)があります。
MOSFETはモーターや電源などのパワースイッチング回路に、FETは入力段の高インピーダンス回路に、バイポーラ型は高周波回路や汎用増幅回路に使われることが多いのですが、明確な区分がある訳ではありません。

また、トランジスタには二つの極性があります。NPN型(2SC型や2SD型)と、N型(2SK型など)の電荷キャリアは電子が、PNP型(2SA型や2SB型)と、P型(2SJ型など)のキャリアは正孔(電子が抜けた穴)が担います。電気の動作としては対称的なのですが、正孔より電子の方が軽快に動けるため、どうしてもNPNとN型のトランジスタの方が種類も多く製造されています。
正負電源が対称なプッシュプル回路にする場合はNPNとPNPの特性が揃った互いにコンプリメンタリなトランジスタを使います。
CMOSと呼ばれる半導体は、コンプリメンタリなPMOSとNMOS半導体を同じモジュールに組み込んだ半導体で、デジタルICやLSIの主役になっています。

トランジスタの電極名称は、主な電子部品と使い方を参照してください。



◆エミッタ接地回路1
青:入力信号 オフセット電圧1V、サイン波1V 1kHz 緑:出力信号電圧


上図のような、エミッタ接地回路はトランジスタ回路の最も基本的な回路で、エミッタ をグランドに接地として使う回路です。入力信号(V3) はベース に加えられて、エミッタからグランドに流れます。なお、電源電圧は5V(V1)です。

トランジスタのベース-エミッタ間は、約0.7V以上の電圧が加わると電流が流れ始めますが、大きな電流が流れてトランジスタが破損してしまうのを防ぐため、電流制限抵抗R1をベースの前に入れています。

入力信号電圧をVinとすると ベース→エミッタ に流れるベース電流Ib は 

  Ib = (Vin-0.7)/R1

入力信号電圧が1Vの場合は

  Ib = (1-0.7)/10k = 0.03mA

です。 さて、電源電圧を負荷抵抗R2を介してコレクタ に加えると、ベース電流Ibのhfe倍(100倍前後)のコレクタ電流Icがコレクタからエミッタ方向に誘発されて流れます。 Ibが 0.03mAの時は、

  0.03mA×100=3mA

が Vcc→R2→コレクタ→エミッタ→グランド へと流れる訳です。

従って負荷抵抗R2の両端には

  V = 3mA×10kΩ = 30V

の電圧が発生する筈ですが、実際は電源電圧は5Vなので、飽和電流

  5V/10k = 0.5mA

が流れた状態で、GNDから見ればOUTにはほぼ0Vが出力されます。

このことは、上図の入力信号電圧(青)と出力信号電圧(緑)の信号を比べて見てください。入力電圧が0.7V付近になるとトランジスタがONして、出力は約0Vになっています。Vinが0.7V以下の場合はトランジスタはOFFして、Vccの電圧5VがそのままOUTに出力されています。
この場合、トランジスタは増幅というよりスイッチのような働きをしているのが分かります。

【解説1】ここで言う「エミッタ接地」は、厳密に言うと、エミッタをグランドに直接接続することではありません。エミッタを電位基準と考え、ベースから入力信号を加え、コレクタから出力を取り出す方式をいいます。ベースを基準にして、エミッタに入力を加え、コレクタから出力を取り出すベース接地回路方式、コレクタを基準にして、ベースに入力を加えてエミッタから出力を取り出すコレクタ接地回路方式(エミッタ・フォロワ)があります。
少し話が込み入りますが、基準電位は、固定電位とは限りません。入力や出力電位を利用して、自身の基準電位を引っ張り上げたり、逆に下げたりするような回路も用いられます。

【解説2】最も一般的な半導体のシリコンは、順方向電圧として0.6〜0.7Vの電圧が必要です。最低限この電圧を加えないと電流を流すことができません。同じ半導体でもゲルマニウムは0.1V程度の順方向電圧で電流が流れるため、微小信号を受信するためのゲルマニウム・ラジオのような用途に使われます。アナログ回路ではこの順方向電圧の存在は要注意的な存在ですが、デジタル回路では動作の安定のために有利な性質になっています。

2SC1815】東芝の2SC1815は高耐圧で電流容量が多いため広く使われてきたトランジスタですが、既に製造中止品となっているため、その代替品が問題視されてきましたが、台湾のメーカーUTCから「2SC1815」として互換品が発売されています。VCEO 50V, IC 150mAも同じです。コンプリの「2SA1015」も出ているようです。



◆エミッタ接地回路2
青:入力信号電圧 緑:出力信号電圧

エミッタ接地回路1では出力信号が歪んでしまい、スイッチのような動作しかできません。エミッタ接地回路2は、リニア増幅回路の例です。
エミッタ接地回路1と違う点は、ベースの前に抵抗R2とR3が入っている点と、エミッタとグランド間にR5が入っているところです。

トランジスタのアナログ回路を設計する時、最初に決めるのは、無信号時のコレクタ動作電流です。例に用いた2SC2669は小信号の高周波用トランジスタでIcが1mA前後で使用するものですが、今回は

 動作電流 Ic=0.7mA

程度で使うことにします。
なお、図には出ていませんが、電源電圧(Vcc)=15V です。

次に、ベースに与えるバイアス電圧を計算します。
R5(2KΩ)に 0.7mA 流すのですから、エミッタの電位は

  2kΩ × 0.7mA = 1.4V

になる筈です。コレクタ→エミッタ間に電流を流すためには、ベースの電位をエミッタの電位より、0.7Vくらい上げる必要があります。つまり、ベースは

 1.4V + 0.7V =2.1V

にする必要があります。R2とR3を使って

  15V × (R3/(R2+R3)) = 2.1V

に近い抵抗値を求めます。低い抵抗にすると、入力インピーダンスが下がり、消費電力も大きくなるので、通常はR2は数十K〜200KΩ程度を使いますが、今回は100KΩとすると

  15V × R3/(100+R3) = 2.1V
  R3/(100+R3) = 0.14
  R3 = 16.3 KΩ

R3は乱暴ですが切のいいところで20KΩを使うことにします。トランジスタのベースには、

  15V×(20K/(100k+20k)) = 2.5V

のバイアス電圧が加わる準備ができたことになります。さて、バイアス電圧が0.7Vを越えるとベースからエミッタ→グランド方向にベース電流Ibが流れ始めますが、このベース電流はVccからR4→コレクタ→エミッタ→R5→グランド方向にIbの数十倍以上のコレクタ電流Icを誘発することになります。

すると、R5の働きでエミッタの電圧は上昇しますが、エミッタの電圧が上がり過ぎて、(ベース電圧-0.7V)の値に近づくと、今度はIbが流れ難くなりなってしまいます。つまり、トランジスタはOFFの方向に変化してしまうため、Icはそれ以上増加できなくなります。どこで釣り合うかというと、

  エミッタ電位 + 0.7V = ベース電位

となる点です。つまり、エミッタ電圧は

  2.5 - 0.7 = 1.8V

ですからR5には

  1.8V/2k = 0.9mA

のIcが流れた状態になります。R4の両端電圧は

  10k×0.9mA = 9V

これはグランドからみれば

  15 - 9 = 6V

が釣り合い点です。入力信号が入ると、このバランス点を中心に動作することになります。

なお、上の回路は入力側にも出力側にもカップリング・コンデンサをいれて交流回路としています。C1を入れてバイアス電圧を一定に保つことが重要です。入力コンデンサが無い状態で、0Vからずれたオフセット電圧が入力されると、トランジスタは正常に動作できなくなってしまいます。

なお、トランジスタの特性(Ic-Vbe)は、とてもリニアとは言えないのですが、どうしてこの回路はリニアに動作しているのでしょうか?それは、バイアスをかけて、Icがやや流れている状態を動作点としていることもありますが、もうひとつ別な理由があります。

R5に入れた抵抗に発生する電圧(出力電流により発生する電圧)が、ベース側の入力電圧を打ち消す方向になるため、出力電流が勝手に大きくなろうとすると、それは入力電圧を下げる方向に動くため、結局出力は勝手には増大できず、入力電圧にほとんど比例した出力電流しか流れないような現象が発生するのです。

【解説】この方法は負帰還(ネガティブ・フィードバック:NFB)と呼ばれ、電子回路技術の中でも特に重要な技術です。出力の一部を逆相にして、入力に返すと、増幅率が過大な部分は、より大きな負帰還信号が入力側に返される結果、増幅率は抑えられ、逆に増幅率が低下した帯域では、負帰還信号が小さくなるため、増幅率は大きくなる。結果、広い帯域でフラットな増幅率が得られるという、手品のような手法です。

帰還を逆相ではなく、正相にすると、正帰還になります。正帰還量が多いと、本来の入力信号が消えても、同じ状態がキープされるようになります。デジタル回路のフリップ・フロップにメモリーとして使われている技術です。超再生検波受信回路は、受信した弱い検波信号をもう一度同調回路に戻すという離れ業に近い方法で高感度を実現した回路です (周波数分離機能が劣化するため現在はスーパーヘテロダイン式に取って代わられたが、)。
また、発信回路は、帰還する量と位相を適度に調整することにより、安定した発振が持続するようにした回路です。

帰還法は、重要な手法ですが、不安定化の要素でもあるので、注意が必要です。



◆エミッタ接地回路3
青:入力信号電圧 緑:出力信号電圧

この回路はエミッタ接地回路2の変形です。エミッタ側のR1に並列にコンデンサC3を入れることで、交流的な負帰還量を減らしています。このため、増幅率が増大していることが分かります。直流上の特性はほとんど変わっていません。



◆FET増幅回路
青:入力信号電圧(20mV) 緑:出力信号電圧

上の回路はNチャンネル接合型FETを使った増幅回路です。

FETは電界効果型トランジスタと呼ばれ、バイポーラ・トランジスタがベースに注入される電流を増幅するのに対して、ゲートG(矢印側電極)に加えられる電圧によってドレインD(上側の電極)と、ソースS(下側の電極)間を流れる電流を制御するトランジスタです。

上図のNチャンネルFETは、記号で表しているように、下のソース電極から上のドレイン電極までの間にキャリア(電子)が流れるチャンネルがあるトランジスタです。ゲートが未接続の状態でもドレイン-ソース間のチャンネルは導通状態になっています。

チャンネル間に電子を流し難くする、つまり、ドレイン(D)とソース(S)間の抵抗値を増すためには、ゲート電極に矢印とは逆方向の電圧を加えます。回路のソース(S)とグランド間にR4(1k)+R1(2k)、計3kΩの抵抗が入っていますから、Vccから電流が流れ込んでくると、ソース(S)の電位は上昇します。一方、ゲート(G)はR3を通してグランドに接続されていて電圧は0V (何故なら、電流が流れないため電圧は発生しない) ですから、ソース極から見るとゲート極はマイナスの電圧、つまりゲートの導通方向とは逆の電圧が加わる状態(逆バイアス)になるため、ドレイン→ソース間の導通チャンネルは狭められ、抵抗値がある程度増加した状態になります。この時入力信号が加わるとD-S間には動作点を中心として出力電流が変化することになります。なお、C2は交流的負帰還量を下げてゲインを上げています。

前例のエミッタ接地回路2やエミッタ接地回路3は、固定したバイアス電圧を利用していましたが、この回路は、自身の出力電流を利用して、自身の入力電圧を制御するため、自己バイアス方式と呼ばれています。
この回路の動作原理は真空管の増幅回路と類似しています。



MOS-FET回路
緑:入力電圧 青:L1(10Ω)に流れる電流

パワーMOS-FETは、スイッチング電源や、モーターON-OFFなどのパワー回路によく用いられる素子です。酸化金属皮膜を使い金属製のゲートと導通チャンネル間を絶縁しています。NMOS型とPMOS型があります。

図のN型MOS-FETはドレインとソースがN型半導体で構成され、ゲートの下側を含む全体はP型半導体でできているため、そのままではドレイン-ソース間には電流が流れません(図記号上でも、ドレインとソース間のチャンネル接続が切れています)。

チャンネルを導通するためには、ゲートに(+)電圧を加えることで、チャンネルにキャリアである電子(-)を引き寄せて、チャンネルに電流が流れるようにしてやります。素子によりますが、上例のゲート電圧は1.8V付近でONしています(G-S遮断電圧)。
また、ゲート電圧を飽和させてドレイン-ソース間がONした時の抵抗値をD-S ON抵抗といいます。

なお、記号からも分かるように、MOS-FETのゲートは、ドレインやソースから絶縁された、一種のコンデンサーですから、鋭い信号を加えると大きな充放電電流が流れてしまいます。R2のような電流制限抵抗をつけるのはこのためです。


 バイポーラトランジスタと同じようにMOS-FETにも相補型半導体があります。N型MOS-FETに対するP型MOS-FETがそれに当たります。マイナス電源を使用したり、プラス電源であっても負荷をGND側に入れたい場合に使うことができます。
下はプラス電源で負荷をグランド側にする回路例です。PチャンネルのMOS-FEはNMOSと逆動作ですが、トランジスタQ1で反転するため、上の回路と同様に、入力信号がONの時に負荷に電流が流れます。





【解説】 MOS-FETは大電流を制御するのに適しているため、パワー回路に使われている一方、CPUなどの大集積回路にも使われています。NMOSとPMOSを同じシリコンウェハー上に形成したコンプリメンタリ型のCMOSを使ったデジタル回路(下図参照)は、素子容量への充放電以外の消費電力をほとんど抑制することができるため、可能な限り集積度を上げることで、高速性能と低消費電力化を追求しています。





◆エミッタ・フォロワ+定電流負荷回路
 周波数帯域

エミッタから出力を取り出すエミッタ・フォロワ回路はコレクタからではなく、エミッタから出力を取り出す回路です。コレクタ電位を基準して使うことから、コレクタ接地方式とも呼ばれます。

この回路の特徴は、ベース電圧を加えると、コレクタ電流Icが増加して、これがエミッタ電位を上げてしまう点です。これは、ベース電流を増加させようとしても困難である、つまり、入力インピーダンスが非常に高い回路だと言えます。入力インピーダンスが高いと、信号源の電流容量が小さくても、電圧が低下することなく信号を受けられるということです。

また、この回路には電圧増幅作用はありませんが、大きな出力電流を取り出す電力増幅作用があり、高周波特性に優れています。

なお、Q2は、エミッタフォロワを更に効果的に働かせるための補助トランジスタです。R1の両端に発生する電圧は、V(R5)=V(R1)+0.7V となる値に強いられるため、Q2のコレクタには定電流しか流れないのです。Q1のエミッタには振幅の大きな出力電流が流れこむ一方、変化する交流成分はQ2側に流れ込むことが拒まれるため、out側にこれを効率良く吐き出すことがとができるのです。



◆ソース・フォロワ回路


FETをソースフォロワ回路で使用すると、極めて高い入力インピーダンスが得られます。
ドレイン電流により、R1に自己逆バイアス電圧が自動的に発生し、ゲート電圧はソース極に対して負電圧になります。



◆バッファアンプ
 周波数帯域


DC〜広帯域のダイヤモンド回路の電力増幅用バッファアンプです。PNP型とNPN型のトランジスタを組み合わせることで、全てのトランジスタがエミッタフォロワとして動作します。この回路が持つ広帯域特性を十分生かすためには、2SAと2SCのトランジスタはコンプリ型のfTが高いものを使います。



◆ベース接地回路
青:入力電圧 0.2V 2メガHz 緑:出力信号電圧 



上は、ベース接地回路の例。ベースを基準にして、エミッタに入力を加え、コレクタから出力を取り出しています。
高周波数特性が優れているため、無線回路や測定器に多く用いられます。

エミッタ接地式と異なり、電流増幅率は1未満のため、増幅は電圧増幅で行う必要があります。このため、ベース接地方式は、入力インピーダンスが低く、出力インピーダンスは高くなる特徴があり、信号源および受け側のインピーダンスに注意を払う必要があります。

上例では、VccをR2,R4で分圧してバイアス電圧を作ると共に、C1でベースを交流的に接地しています。
R5は、加えた入力信号を、信号電圧に比例したエミッタ電流に変換するための抵抗です。


【解説1】
ベース接地回路は、トランジスタの原型がベル研究所で発見された当時に用いられた方式です.。当初のトランジスタは現在主流の接合型ではなく、今のトランジスタ記号に似た点接触型の構造でした。ベースは平面状の半導体結晶で、エミッタとコレクタの針が接近した位置でベースに当てられていました。
ベースからエミッタ方向に一定以上の電圧を掛けると、コレクタからベース方向に電流が流れ込むという現象が発見されたのです。この現象を利用してショックレーは増幅機能を持たせることに着目しましたが、この考えは、現在の「ベース電流を増幅して、コレクタ電流が流れる」という解釈とは大きく異なっていました。 電流をリニアに増幅できるようになったのは、接合型トランジスタによる高μを使った負帰還回路技術の賜物であって、本来はショックレーが身辺の人に説いたように、エミッタの電圧でコレクタ側の電流をON-OFFするスイッチ素子、というのが元々の姿であったようです。

【解説2】インピーダンスという表現が電気回路には時々出てくる。インピーダンスは、交流を考慮に入れた回路の抵抗値です。回路インピーダンスが低ければ電流は流れ易くなり、回路インピーダンスが高いと電流は流れ難くなります。抵抗値は周波数と関係なく、一定なのに対し、インピーダンスは周波数によって異なった値になるのが普通です。

回路直列に入れたコイルは急激な電流変化を妨げる働きがあるため、高域周波数でインピーダンスを高め、回路並列に入れたコンデンサは、逆に高域でのインピーダンスを下げる。また、半導体回路を使い、アクティブにインピーダンスを上げたり、下げたりすることができます。

エネルギー伝達効率を考えると、送り手の回路インピーダンスと受け手のインピーダンスが等しい場合が最も効率が良い。また、接する二つの伝送系のインピーダンスが等しい場合、信号波の反射が起きないため、高周波回路ではインピーダンス整合が重要です。

一方、エネルギー伝達効率は無視しても、電圧の大きさを、正確に伝えるのが重要な場合は、「高インピーダンス受け、低インピーダンス出し」が使われる場合が多い。入力インピーダンスを高くして、信号源から大きな電流を吸い込まないようにすることで、信号電圧の低下を防ぐのである。出力インピーダンスは逆に低くして、後ろに接続される回路に電流を食われても、電圧がなるべく低下しないようにするためです。

ただし、信号の情報を電流の大きさで扱う場合は、当然これとは反対の回路手法が有効となる場合もあります。

【解説3】増幅という言葉は少し曖昧です。、トランスで電圧を上げるのは昇圧とは言いますが、電圧の増幅とは言いません。増幅という場合、少なくとも「電圧の変位量と電流の変位量の積の絶対値」が増大することが必要なのです。積の絶対値を出力電力といいます。増幅作用を主に電圧エネルギーによるか、電流エネルギーによるか、中間を使うかは、求められる事情によって変わってきます。一般には、電圧増幅が多いのですが、電圧の変動が回路のキャパシタンスなどの原因により、好ましくない影響がある場合は、主として電流増幅を使います。


CR結合、トランス結合
緑:入力信号電圧 50mV ikHz  青:出力信号電圧


最新の回路技術だけでなく、以前の回路を学ぶのも無駄ではありません。

上の回路の初段と2段目は、CRで結合され、DC的には独立性が保たれている。また、最終段は出力トランスが用いられ、8Ωとか16Ωのスピーカーに出力が送られている。
上の回路はトランジスタのため、必ずしもトランス出力でなくてもいいのであるが、出力インピーダンスが高かった真空管の時代は、トランスに分があった。






◆差動回路
緑:入力信号電圧(50mV1kHz) 青:出力電圧 赤:R6,R7の接続部電圧 水色:Q1のコレクタ電圧

トランジスタは温度に対して敏感で、僅かな温度変化で出力電流が変化してしまう欠点(ドリフト現象)があります。これを解決するのが差動回路です。差動回路では特性の揃った二つのトランジスタのエミッタを接続して、双方のトランジスタへの入力信号の差分を増幅する回路です。

入力IN1が加えられていない状態を先ず考えると、Q1とQ2のベース電圧は0Vですから、双方のエミッタ電圧は共に-0.7Vです。もしIN1の方のから信号電流が流れ込むとhfe倍の電流がQ1のコレクタからエミッタに流れようとします。するとR1の上側の電位は上昇しようとしますが、一方Q2側から見れば、R1の電位上昇はQ2のコレクタ電流を減少させることになります。つまり、Q1とQ2はシーソーのような動作を強いられていることになります。

このように、差動回路では、二つのトランジスタを流れる電流が同時に増えたり減ったりする動作が抑制されます。つまり、温度ドリフトのような現象は抑制されることになります。一方、二つのトランジスタに加わる差分の信号は抑制されることなく増幅することができます。

上の回路で、入力信号が無い時は、双方のベースは0Vで、R6とR7の接続点(信号色:赤)はほぼ-0.7Vで釣り合います。

  (15V-0.7V)/8kΩ ≒ 1.8mA 

が動作電流です(トランジスタ1個当たりでは0.9mA)。負荷抵抗は、動作電流が0.9mAの時にVccの半分程度になる値にします。

  R=(15V/0.9mA)÷2=8.3KΩ ≒ 8KΩ

なお、R7とR8は各々のトランジスタに負帰還を掛けています。増幅率が若干落ちる代わりに、直線性が向上します。
C1は信号成分のみを取り出すカップリングコンデンサです。


単電源差動増幅回路 
緑:入力信号 赤:出力信号



普通、差動回路は正負両電源を使って構成されますが、上は単電源の増幅回路。
負帰還を使い、R2,R3で動作点を1/2電源電圧にシフトし、増幅率はR5とR6で決めています。

なお、R6を取り除き、C1とC2を直結するとデジタル動作する回路として考えることができます。R2、R3がスレッシュレベルを決めます。




差動回路+カレントミラー回路
青:入力信号電圧 0.5mV 1kHz  緑:出力電圧


上の回路では、D1のLEDで約2.5Vの定電圧を作り、R1を流れる電流値、つまり差動回路の電流値の和を安定化しています。
差動回路の上の回路はカレントミラー回路と呼ばれる回路です。カレントミラー回路は、一方の回路に流れる電流と同じ電流が、もう一方の回路にも流れるようにした回路で、上の回路では、Q7に電流が流れてR7に発生する電圧が、Q6に流れる電流がR6に発生する電圧とバランスが取れように作用するため、Q6に流れる電流は、Q7の電流をミラーに映したような動作をすることになります。

差動回路側は、左右の回路に流れる電流値の和が等しくなるように働き、カレントミラー回路側は、逆に差が出ないように働く結果、変動出力分は、そのほとんどが出力側に押し出されることになります。
このため、固定抵抗負荷の回路に比較して、ずっと大きな増幅率を得ることができます。
ただし、この回路は周波数特性を見てわかるように、100kHz付近から特性が劣化しています。

【解説】回路に流れる電流の強さにあまり左右されずに、安定した電圧を簡単に作る方法のひとつは、ツェナーダイオードを使う方法です。ツェナーダイオードは、逆電圧を上げていくと、ツェナー降伏と呼ばれる現象が発生し、ほぼ一定の電圧で電流が流れ始める性質を利用したもので、6〜24V程度の定電圧ダイオードが各種発売されています。〔降下電圧×電流〕の電力は熱になりますから、消費ワットには要注意です。もうひとつの方式が、上例の発光ダイオードを順方向で使う方法です。通常のシリコンダイオードも0.7V程度の順方向電圧がありますが、発光ダイオードは更に高く、1.5〜3.5V程度の安定した電圧を発生することができます。
なお、一定電圧ではなく、一定電流が流れる機能のダイオードが定電流ダイオード(CRD)です。構造としてはFETのゲートとソースを短絡したものが使われています。


◆差動回路+カスコード回路


青:入力信号電圧(20mV 1kHz サイン波) 緑:出力信号電圧


Q4、Q5は差動回路が効果的に動作するための補助トランジスタです。ベースを定電圧部に接続することでQ4Q5のエミッタ電位、つまり差動トランジスタのコレクタ電位が変動するのを抑えています。この回路はカスコード接続とも呼ばれ、Q1、Q2を高い周波数帯域まで動作させることができます。
トランジスタの高周波特性を劣化させる最大の原因は、コレクタ-ベース間の静電容量Cobです。コレクタに出力される電圧変化が、ベースに逆相の信号として回り込むのですが、その効果は電圧増幅率倍で増大するため(ミラー効果)トランジスタの増幅率は特に高域で大きく落ちてしまうことになります。しかし、Q1やQ2のコレクタ電位が変動しないように規制してやれば、このトランジスタのCobの影響は表に現れない筈です。上の回路では、補助トランジスタQ4、Q5のベースを定電圧に拘束することで、Q1、Q2のコレクタ電圧を一定化しています。なお、Q4、Q5自体はベースが定電圧化されたベース接地回路ですから、これらのトランジスタのCobの影響も表に現れません。カスコード接続は実に巧妙な回路です。周波数特性はグラフのように10MHz付近まで延びています。
なお、このカスコード接続+カレントミラー回路を併用することで、高域まで高いゲインを得ることができますが、回路条件設定はかなりシビアになってしまいます。



差動入力DCアンプ回路
青:入力信号電圧(0.5V 100kサイン波) 緑:出力電圧

オーソドックスな差動増幅+プッシュプル・エミッタフォロワ出力回路です。差動回路と出力段は、結合コンデンサーを使わず、直接結合していますから、DC領域まで信号を扱うことができます。この回路方式は高級なオーディオ・アンプにも使われています。

Q17とQ23は、無信号時の出力レベルを0Vに近づける働きをしています。しかし、この回路で最も大きな働きをしているのはR11とR5による負帰還ループです。上の回路では3段増幅により極めて高いゲインを得て、その出力を入力側に戻して負帰還をかけることで、増幅率をR5:R11=20倍に抑え、リニア特性を向上させ、かつ無信号時の出力レベルを0V付近に押さえています。

回路ゲインを闇雲に上げて、負帰還さえ深くすれば良いかというとそうでもなく、裸特性が良くなければ安定した結果は得られません。各段毎の回路が正常に機能しないと、最終的にも不安定な動作になってしまいます。



完全コンプリ差動回路

青:入力信号電圧(青:入力 0.1V 100Kサイン波) 緑:出力信号電圧

上は、完全対称なコンプリ差動回路+エミッタフォロワ・プッシュプル出力回路によるディスクリート・アンプ。
完全対称コンプリ回路は、差動回路を含む全段が、GNDに対して上下対称となるため、広いレンジに渡って安定した動作が可能となります。
なお、例では、回路全体でフィードバックをかけ、増幅率は100にしています。



トランジスタ・パワーアンプ


OPアンプを使うことで比較的容易にオーディオ用パワーアンプを構成することができます。OPアンプで電圧増幅をして、バッファアンプで電力を増幅しています。回路図のSPはスピーカです。OPアンプは特殊なものでなく、汎用が使えます。重要なのはドライバー段のトランジスタと最終段のパワートランジスタです。上の回路例では適切なPNPトランジスタのspiceモデルがなかったため、仮想の2N3055コンプリ型モデルで代替しています。
(この件は、先例のアンプでも同じで、例に用いたトランジスタでは大きな電流を取り出すことができませんので、パワーアンプ用途には適したトランジスタを使う必要があります。)



MOSFETパワーアンプ
緑:スピーカー端子出力電圧


やはりOPアンプを使ったパワーアンプですが、出力段にコンプリメンタリなMOSFETを使っています。
LED(D1)とトランジスタ(Q5)に約2.5Vの定電圧を発生させ、MOSFETにアイドリング電流を流しています。なお、アイドリング電流は100mA程度になるよう半固定抵抗VR1kを調整することで、低出力時はA級、高出力時はAB級で動作させています。
歪み率は0.01%/1Wと優れた値を示しています。パワーMOSFETは入手し易いため実用的な回路といえるかもしれません。



FETによる定電流回路
赤:Vccの電圧   緑:R2を流れる電流 青:R3を流れる電流


FETはゲート-ソース電圧VGSを0Vにした時に最大飽和電流IDSSが流れます。この性質を利用して定電流回路を作ることができます。
左の回路はVGS=0V、右のように抵抗を使うことで電流値を絞ることができます。
電源電圧(赤)が変化しても電流値は一定になっていることがわかります。
定電流ダイオードにはこの原理が使われています。



マルチバイブレーター
青、緑:LD1,D2のED電流


トランジスタ2個によるマルチバイブレーター。
電源投入後、C1とC2には電荷が蓄積されていないため、1R→C1→Q1ベース および R2→C2→Q2ベース へ電流が流れるが、先に充電電流が減少した側(例えばQ1)のトランジスタがOFFすると、そのトランジスタのコレクタがHになり、これが反対側のトランジスタQ2をONさせることになります。
これにより、R3→C1→Q2コレクタ→GNDに充電電流が流れ、Q1のベース電圧押し上げていきますが、Q1がONすると、Q1のコレクタ電圧は急降下し、これがC2を通してQ2をOFFさせることになります。
この動作がQ1、Q2間で繰り返される結果、マルチバイブレーター回路は一定周期で発振することになります。



単安定マルチバイブレーター
赤:トリガ信号 緑:out


単安定(モノステーブル)マルチバイブレーターはタイマーとして動作する回路です。
時定数は約 0.75・C1・R1


TTL発振回路



TTLゲートのインバーターを使うと簡単に発振させることができます。上の回路は74LS04を使った回路。
74LS00の二つの入力を結合して使用しても構いません。CもR1、R2の値も相当広い範囲から選択することができます。
LTspiceで発振させるにはちょっとしたコツがあり、ゲート素子を右クリックしてSpiceLineにVhigh=5V Vlow=0V Vt=2.5V のようにTTLの動作レベルを規定する以外に、片方のゲートにのみ Td=10n のように立ち上がりを遅延させてやる必用があります。実際のゲートには不均衡特性があるため発振が開始されるのですが、LTspiceのモデルには二つのゲート共全く同じに出来ているため、バランスが崩れないため発振が開始できないのを回避するためです。



CR発振回路



トランジスタ1個によるCR発振回路です。出力を複数のCRで位相をずらして、自身に帰還をかけることで発振させる帰還型発振回路です。
安定した発振をさせるにはCRによる位相のシフト具合と、バイアスの設定がポイントになります。



弛張発振回路



弛張発振回路は、竹筒の中に水を注いでいくと水の重みで竹筒が倒れて水が一気に流れ出して、カーンと竹筒が石を叩く「ししおどし」に例えられる発振回路です。

コンデンサC1にチョロチョロ流れ込む電流の経路は赤い線で示しています。そして一気に流れ出す電流の経路は黒い線で表示してます。

R1からC1に電流が流れて来ると、コンデンサC1に電荷が蓄積され、Q2のベース電圧@は直線的に徐々に上昇していきます。この電流はLED-D1からグランドに流れ込みますが、この少ない電流ではまだLED両端にほとんど電圧を発生させていません。

しかし、やがてベース電流が流れ始めると、その100倍近い電流がQ1のエミッタ→Q2のコレクタに流れ、そのまた100倍近い電流がLEDのD1に怒涛のように流れ、LEDはフラッシュ点灯することになります。

ここで注意したいのは、普通、シリコンは順方向電圧として0.6V〜0.7Vが加わらないと電流は流れ始めないとされていますが、実はそれより低い電圧では全く流れないかというとそうではなく、ベース電圧が60〜80mVを越えたあたりから、ベース電流が少しでも流れ始めるとそれが雪崩のように増加していきます。

しかし次ぎの瞬間、LEDのアノード側に発生した2Vを超える電圧AはC1を通じ、黒い線で示す方向に放電電流Bを逆流させるので、Q2のベース電圧@は一気に落ちて、トランジスタはOFFに戻るという訳です。Bのグラフからは読み取れませんが、コンデンサを上から下に流れてくる電流は14μA程度ですが、上への電流は114mAに上っています。

なお、LEDのアノード電圧Aを見るとわかるように、極性コンデンサを使う場合は、コンデンサC1は下側に+極を使います。

このLEDを使った弛張発振回路は広く知られている回路ですが、欠点はデューティー比が悪く、ヒゲ状パルスしか得られないことです。次の回路はこれを改良したもので、R3により逆充電時間を長くしています。出力信号を得るためのR2は充放電双方を満足する値にする必要があります。






LC発振回路
右上:ゲートA1入力電圧 右下:out電圧


汎用ゲートICの74HCを利用して発振回路を構成することができます。上は74HC04をを使ったLC発振回路。
発振周波数 f は
 f = 1/(2π√(LC))
 C=C1・ただし C=C2/(C1+C2)
この回路は広範囲の周波数で動作するため、周波数カウンタを使ってコイルのインダクタンスLの簡易測定用として利用されることがあります。



AMトランスミッタ回路
左上:搬送波FFT  右上:搬送波 右下:変調されたANT出力



コルピッツ型発振回路は、Q1のエミッタの出力信号をC3からベースに正帰還させて発振させています。R2,R3で適切なバイアスを加えて動作点を安定させます。この発振出力を、V2から入れる音声信号でAM(振幅変調)しています。
AMラジオで受信することができます。ミュージックプレーヤなどのイヤホン出力なら直接V2へ入れることができます。マイクの場合は後述するOPアンプなどで信号を増幅してからV2へ接続してください。



FMトランスミッタ回路
青(V2):音声入力電圧 赤:可変容量ダイオードのカソード電圧 緑:アンテナ電圧

可変容量ダイオードに逆バイアスを掛けて、カソード-アノード間の容量を共振回路のコンデンサとして使います。(この図では周波数の変調は見えていませんが)
V2から、音声信号を入力します。マイクなどの場合は別途増幅回路が必要ですが、ミュージックプレーヤーの出力なら直結することもできます。

0.2μHのコイルL1は、線径1mmの銅線を使い、巻きの外径10mm、巻数5回、コイル長さ7mm程 で作ることができます。
2SC2347など、600MHz以上のトランジスタなら使うことができます。FMラジオで受信することができますが、あまり出力を上げると、法規に抵触しますの注意が必要です。



ハートレー型発振回路
緑:ANT出力電圧


ハートレー型発信回路は共振コイルの分割点で回路を揺振する発振回路です。
上はEETをつかった回路。spiceモデルはLTspiceに付属している2N4117を使っています。
なお、LTspiceの初期化で共振回路が極端な振幅にならないよう .ic V(in)=0 として押さえています。
f=1/(2π√(LC)) =1637kHz

ちなみに下図はバイポーラトランジスタでのハートレー発振回路。







  第二章 OPアンプ回路

OP(オペ)アンプは、極めて高い利得(ゲイン)を持った増幅回路ICで、高性能な差動回路等から構成されています。
多数のトランジスタを組み合わせてアンプを作るのはかなり困難ですが、OPアンプを使うと容易に各種回路を構成することができます。

OPアンプは、operational amplifier(演算増幅回路)から来ていて、「オーピー・アンプ」と読むのが正しいとする説もありますが、最近でオペアンプと呼ばれることが多いようです。

代表的なOPアンプは、電源として+15Vと-15Vのような2電源を要し、入力信号として+入力と-入力端子を持っています。+入力の電圧を上げると出力電圧も上昇する方向に変化し、-入力端子は逆動作となります。

【注意】数多く使われるOPアンプは、各社で共通性のある型番が使われている場合が多く、殆ど互換性があります。
一般的なOPアンプを大別すれば、
 汎用OPアンプ: 741, NJU7044M , NJM2043DD
 単電源OPアンプ: LM358 , NJM2902N , OPA2353UA、
 高速OPアンプ:LM7171 , NJM2137D , LM6361N
 オーディオOPアンプ:LME49740NA , NJM4580MD , NJM4560DD

特殊な用途で無い限り、殆どのO汎用Pアンプはメーカーや型番に関係なく使うことができます。
ただし、高周波用、超高速動作型、オフセット電圧調整型などを使う場合は、それなりの注意が必要です。
以下はOPアンプを使う代表的な回路例です。



◆OPアンプ反転増幅回路
 緑:入力電圧  青:出力電圧


OPアンプによる反転増幅回路です。入力と逆相の信号が出力されます。
入力信号(V3)はR3を通してOPアンプの-入力に加えます。R1で負帰還をかけてますので、増幅率はR1/R3となります。



◆OPアンプ非反転増幅回路
 緑:入力電圧  青:出力電圧


入力信号を反転しない出力が得られます。
増幅率は(R1+R3)/R3



◆単電源反転増幅回路
 青:入力電圧 緑:出力電圧 赤:仮想グランド電圧

OPアンプは通常+電源と-電源を使いますが、単電源でも工夫により正負両電源アンプと同じように使えます。
上例は5V単電源で動作するOPアンプ回路です。
R4,R5で中点電位を作り、U2のボルテージフォロワ出力で仮想グランドを作りだしています。U1のOPアンプはこの仮想グランド上で信号を増幅します。
なお、一般的に「単電源OPアンプ」と称されるOPアンプは片電源で使った場合、入力電圧が0V付近まで動作可能なものをいいます。



インスツルメーション・アンプ
青:V4入力電圧100mV 100kHz (V3=0V)   緑:out電圧

インスツルメーション・アンプは測定器などに使用される増幅回路です。対称的な抵抗値は揃った精度のものを使います。
V3とV4は差動入力として動作します。
増幅率は (1+2(R2/R1))・(R6/R4)



◆微分回路
 緑:入力電圧  青:出力電圧

  入力信号を微分する回路です。微分周波数はR2とC1で決まります。 f=1/(2πCR)



◆積分回路
 緑:入力電圧  青:出力電圧

入力信号を積分する回路です。積分周波数はR1とC1で決まります。 f=1/(2πCR)



コンパレーター
青:入力電圧 緑:出力電圧

コンパレーターは電圧比較専用のOPアンプです。4回路入りのLM339や2回路入りのLM393は、5V単電源でも使えるコンパレーターとして広く使われています。フォトセンサーなどの入力処理には欠かせません。比較電圧の設定はR1とR2の比で設定します。OPアンプの+入力端子と-入力端子を逆に使うと出力を逆相にすることができます。
LM339は、オープンコレクタなのでプルアップして使います。また、コンパレーターは入力インピーダンスが高いため、比較電圧回路や、前段のセンサー回路への接続は容易です。
なお、LM339は、オリジナルのLTspiceには組み込まれていないため、LTspice入門のページを参照して組み込んでください。



ヒステリシス・コンパレーター
緑:入力電圧 青:出力電圧

前例の回路に正帰還を掛けると、入力信号が上がる時のスレッシュレベルと、下がる時のスレッシュレベルを変えて、ヒステリシス効果を持たせることができます。信号がゆっくり上下するような回路において、小さなノイズなどが乗って誤動作する危険性を防止するために使います。



CR発振回路

先のページのトランジスタによるCR発振回路に比べ、OPアンプを使うと、より安定した発振動作が得られます。



反転整流/非反転整流回路
緑:入力信号電圧 青:反転整流出力  赤:非反転整流出力


ダイオードには順方向電圧と呼ばれる一種の不感帯があるため、シリコンダイオードの場合は約0.7V以下では電流が流れません。このため小レベル信号の整流はできませんが、OPアンプを使うことでこれを克服することができます。
上は、信号を反転しないで整流する回路と、反転整流する回路です。



◆バンドパス・フィルタ
 周波数帯域

一定の周波数帯域を通過させるバンドパス・フィルタ。 微分回路(ハイパス・フィルタ)と積分回路(ローパス・フィルタ)の組み合わせです。
fL = 1/(2πC2R5) = 1/(2π×0.01×10-6×10×103) = 1.59KHz
 ただし R3=R5
fH = 1/(2πC1R1) = 1/(2π×0.001×10-6×1×103) = 159KHz
 ただしR1=R2



◆バンドパス・フィルタ


フィルタを帰還回路の中み組み込むと更に切れの良いバンドパスフィルタになります。
カット周波数は同じく 1/2πCR 。上の回路はfL、fH を共に同じ周波数(1KHz)に設定。



◆絶対値アンプ
 青:入力電圧  緑:出力電圧

入力電圧を絶対値に変換する回路です。R3と他の抵抗の比が適切でないと+側と-側の入力電圧が正しく絶対電圧に変換されません。



◆ピークホールド回路
 緑:入力電圧  青:出力電圧

V3の入力電圧のピーク電圧を保持して出力します。保持電圧はR3、C1の時定数で低減しますが、V4にリセット信号を加えて強制的にリセットすることもできます。



◆三角波発振回路


三角波発振回路の出力をコンパレーターで受けるとPWM(パルス幅変調)出力が得られます。これはサーボ制御やDCモーター制御に応用することができます。



◆ウィーンブリッジ発振回路


R9は5K程度の可変抵抗器で、発振が安定し、かつ波形がサイン波になるように調整します。



◆矩形波発振回路
緑:出力  青:OPアンプ-入力  赤:OPアンプ+入力
aka :

OPアンプによる矩形波発振回路です。Ltspiceの初期化でC1に10mVを掛けて発振しやすくしています。




  第三章 その他の応用回路


◆555発振回路
 LED電流

555は各社から発売されている非常にポピュラーなタイマー/発振専用ICです。
上の回路は555で発振させ、LEDを大電流で間歇駆動しています。
R5=RA R4=RB とすれば 555は
 H出力時間
  0.7×(RA+RB)×C
 L出力時間
  0.7×RB×C
 周波数
  f= 1.44/(RA+2RB)×C
で動作します。
【解説】普通、時間に関する処理はMPUのタイマー機能を使うのが常識ですが、割り込み応答の遅延が問題になったり、CPUが動作できない状態においても確実に動作する必要がある重要な機能に関しては独立したタイマー回路を採用します。上例の回路も、MPUが動作しないデバッグ中やリセット中にLEDに大電流が流れ続けて破損する障害を防止します。



◆555 ワンショット回路
青:入力トリガ信号 緑:出力信号

555は図のように使用するとワンショット(モノステーブル)動作となります。前項で得られたショートパルスを伸張したり、長時間タイマー動作をさせることができます。 トリガは負論理で働くので、例は解り易くするためトランジスタで反転しています。出力は正論理で得られます。動作時間は 1.1×R1×C1  (上図では 1.1×0.12M×4.7u =0.62 sec)
CMOSタイプの555を使用する、とかなり長時間タイマーも可能です。


555 リトリガー回路

555をワンショットで使うと、周期より短いトリガー入力があった場合でも、タイマーを再延長する機能(リトリガー)機能が無いため出力がとぎれてしまいます。リトリガー機能付きの74HC123を使うのも手ですが、555を利用する場合は、C1のチャージをTRIG=Lで放電させる回路を付加します。上はコンパレーターを使った例 (トランジスタ2SA型のEをC1側、CをGND接続でも可能です)

フォトMOSリレー



DC信号によりACパワーを制御するには従来リレーが使われていましたが、現在はSSR(ソリッドステートリレー)が使われることが多くなっています。NMOSはゲート電圧がゼロでもS→D方向へは導通してしまうため、このように2つのS極を互いに逆向きに接続することでG-S間にON電圧を超える電圧が加わらない限り、回路は導通しないことになります。
なお、SSRのON制御はLEDと複数の直列フォトダイオードが使われますが例ではLTspiceのビヘイビア電源で代替えしています。B1に5Vが加わることでAC回路がONします。



コッククロフト・ウォルトン回路

コッククロフト・ウォルトン回路による、AC100V50Hzからの昇圧回路。巧みな回路で、交互に流れる電流をダイオードで切り替え、コンデンサー群で電圧をポンプアップしています。
実際の使用に当たっては、危険が伴うため十分な知識と注意が必要です。


高圧パルス発生回路



同軸ケーブルなどは、LとCが局在でなく、分布しているため、分布定数回路と呼ばれます。上は分布定数回路を使った高圧パルス発生回路。
1m当たり4μHで230pの同軸ケーブル×10m に価するCとLの回路にしてある。得られたパルスは約1.6kV、4μs。実際の同軸ケーブルでは段差の無い綺麗な波形が得られれます。

高圧パルス回路はノイズシュミレータにも使われます。接点は水銀リレーが適していますが、スパークギャップ(点火プラグ)で代用も可能。スパークギャップの場合は、高圧電源は10kv以上必要。

実適用に当たっては十分な知識と注意が必要です。







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