当サイト管理人著




 <テスターの職人技>

出版社名   :   技術評論社
税込価格:    2,030円
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              電気測定器の使い方

電気系の測定器には数多くの測定器がありますが、以下は代表的な測定器の使い方です。
ちなみに、機械系では「測定器」という言葉が普通使われますが、電気では測定器より「計測器」という表現の方が一般的かもしれません。しかし、双方に根本的な違いがある訳ではありません。











































テスター
電気を扱う上で、ぜひ欲しいのがテスターです。電気を測る専用の計測器としては、電圧計や電流計が多く使われていますが、テスターは1台の中に各種の測定機能が搭載されている便利な測定器です。

「テスター」と呼ばれる測定器のほとんどが持っている最も基本的な機能は、AC電圧、DC電圧、そして、抵抗値 の測定機能の3つですが、これに加えて、ダイオード検査導通検査DC電流AC電流トランジスタ電流増幅率  などの機能を持つテスターがあります。

なお、以上の機能は、どれも、テスターが持つを電流検出機能を使ったものですが、「マルチメーター」と呼ばれる高機能テスターは、まったく異なった測定機能を組み合わせた測定器で、 周波数コンデンサ容量インダクタンス照度音圧温度 などの測定機能を持つものがあります。


テスターを大きく分類すると、メーターの針で測定値を表示してくれるアナログ・テスターと、数値で表示してくれるデジタル・テスターがあります。使い方は、基本的に同じですが、アナログ・テスターは、測定範囲を適正なレンジに切り替えてから測定する必要があります。ほとんどのデジタル・テスターはオート・レンジですから使い方は簡単です。オート・レンジ機能が付いていないデジタルテスターは→マニュアルレンジのデジタル・テスターの項を参照してください。


しかし、テスターは、正しい使い方をしないと、目的の測定ができないばかりか、テスターを破損したり、人体に危険を及ぼす危険性もあるので、テスターに付属してくる取り扱い説明書をよく読み、注意事項を守ることが大切です。


基本的なテスターの機能と用語
テスターリード棒

テスターには赤と黒の2本のテスター棒が付属しています。テスター棒の先端を測定したい2つの電極に当てて測定します。
テスター棒のリード線は、テスター本体に固定されているタイプと、差込式がありますが、差込式の場合は、黒をCOM端子に、赤を+端子に接続して使います。

DC(直流)を測定する時は赤をプラス(+)側、黒をマイナス(-)またはグランド側に当てます。
AC(交流)の場合や、極性の無い抵抗値や導通試験の時は、どちらに当てても構いません。

下の写真は、家庭に来ている商用交流電源のコンセントにテスター棒を当てて、AC電圧を測定しているところです。


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テスターで測定できる最大電圧や、最大電流は  MAX500V MAX600mA のように表示されていますから必ずこれ以下で使わなければなりません。最大電圧とは、電圧測定レンジで測定する時に、2本のテスター棒間に加わる最大電圧です。最大電流は電流測定レンジで測定する時、一方のテスター棒から入り、テスターの内部を通過し、他方のテスター棒に流れる最大電流を言います。当然ですが、テスター棒が濡れた状態にして使ってはなりません。


機能切り替えノブ
テスターには必ず機能を切り替えるノブが付いています。ほとんどのテスターは回転式の切り替えノブです。ノブを切り替えて測りたい機能を選択します。必ず、ノブを正しい計測機能に回してから、テスター棒を測定端子に当ててください

テスターの機能は下のようなマークが付いています。

 直流電圧測定: DCV , V ―
 交流電圧測定: ACV , V 〜
   注)交流と直流は専用の切り替えがある機種と、セレクトボタンで切り替えるタイプがあります。
 抵抗値測定: Ω , OHM
 導通検査: BUZZ , (音のマーク) 
 ダイオード検査: 
  注)抵抗値、導通、ダイオード検査は、専用の切り替えがある機種と、セレクトボタンで切り替えるタイプがあります。
 直流電流測定: mA , A , μA

【余談】テスターが1台しか無いと困ることがあります。それはテスターの不具合が直せないという事態です。テスターのリード線が断線したりすることもあるのですが、かなり困ったことになってしまいます。予備のテスターが欲しいところです。


◆テスターの仕組み

下はテスターの仕組みの原理図です。



図の上のメーター部分は電流計です。アナログテスターの場合はマグネットと指針が組み込まれた可動コイルで作られていますが、デジタルの場合はAD変換ユニットで構成されています。しかし両者共、電流を検出するという働きは同じです。

電流(I)を測定する場合は、テスターの内部抵抗をなるべく低くして、通過電流が流れやすいように、メーターと並列に低い値の抵抗を入れます。

電圧(V)を測定する場合は、逆に大きな値の直列抵抗を入れて、電流を流れにくくしています。僅かな電流しか流れないようにすることで、被測定回路に与える影響を押さえるためです。

メーターのマイナス端子はテスター棒の黒(COM)側に接続されています。切り替えノブのスイッチは、【抵抗Ω】と【電圧V】と【電流I】の3機能を切り替えることができます。電圧と電流測定の場合は赤いテスター棒から入ってきた電流がメーターの+に入り、黒テスター棒側に出て行きます。しかし、抵抗測定は少々注意が必要です。抵抗は内蔵電池を使って、テスター棒間に流れる電流を計測するのですが、メーターの+側に内蔵電池の+側から電流を流さなければなりませんから、接続は図のようになります。すると、テスター棒の赤にはマイナス(-)電圧が、黒にはプラス(+)電圧が現われることになります。
通常の抵抗値を測る場合は、このことは問題にならないのですが、極性のあるLEDや電解コンデンサを測定する場合は、この性質を知っておく必要があります。 ただし、テスターによっては、赤に+電圧、黒に-電圧が出てくるようにしてある機種もあります。
 


デジタル・テスター



デジタル・テスターは数値で測定値をしてくれる便利なテスターです。
上の写真はやや高機能なデジタル・テスターで、電圧(交流/直流)/抵抗値/導通/ダイオード試験/周波数/コンデンサー容量/電流値(直流/交流)/音圧/光の照度、を測定できるものです。


デジタルテスターの簡単な使い方

導通試験(ピーピー試験)
2点間に導通があるかどうかを調べる時に使うレンジです。コネクター間で断線していないか? 圧接コネクタのピンの接触はOKだろうか? 等々、テスターが最も必要とされる場面です。しかも、テスター以外の方法で確認することは意外と困難な検査でもあります。

テスターを抵抗(OHM)レンジに切り替えて、更に機能選択(SEL)でブザー音のマークを表示させます 【機種によっては、専用のBUZZ(音マーク)のレンジがあります。】

赤と黒のテスター棒を、調べたい電極間に当てた時、導通があるとブザー音が鳴ります。

【注意】 測定したい装置の電源が入っている状態で、導通試験をしないでください。


電圧を測る
装置に電源が入らない、こんな時に先ず調べるのは、電源にAC100Vが来ているかどうかです。テスターのレンジをVにして、機能選択(SEL)でACにします (機種によってはACVレンジがあります)

赤と黒のテスター棒をコンセントの穴に指し込んで測定します。正常に電源が来ているのであれば97〜103V程度が表示される筈です。テスター棒が互いに接触したりしないよう十分注意してください。

乾電池が使えるかどうかは、テスターをVレンジにして、機能選択(SEL)でDCにします (機種によってはDCVレンジがあります)
黒のテスター棒を電池の平らな電極にあて、赤のテスター棒を電池の飛び出た側の電極にあてて、電圧を見ます。1.4V以上なら使えますが、1.3V以下ならNGです。
テスター棒の赤黒を逆に接続しても測定できますが、その場合は"-1.5V"のように表示されます。

電圧を測る上で注意することは、測定電圧がテスターに表示してある最大電圧を越えないことです。「MAX 600V」 のように表記してありますので、ACでもDCでも、必ず最大電圧以下の電圧で使用します。



テスターのもう少し高度な使い方


ダイオードやLEDを調べる
テスターを抵抗(OHM)レンジに切り替えて、更に機能選択(SEL)でダイオード(矢印記号)のマークを表示させます (機種によっては、専用のダイオードのレンジがあります)

ダイオードやLEDは一方向にだけ電流を通す素子です。通常ダイオードにはカソードマークと呼ばれる帯線が印刷されていて、電流は帯線の方向へ流れることになっています。ダイオード検査機能があるテスターの赤棒には(+)電圧が、黒棒には(-)電圧が出ていますから、下図のような向きにダイオードを測定すると、テスターの表示には”何らかの変化”が表示される筈です。

            (電流が流れる方向)

テスター棒をダイオードの電極から離した時に表示されている状態は「導通が無い状態」です。そして、ダイオードが接続された時、異なった値に表示が変わったら、それが「ダイオードが導通した電圧の値」です。実は、測定器によって「導通が無い状態」の表示の仕方が異なっています。”OL”(オーバーレンジ)のように表示されたり、”1.70”のように、テスターの内蔵電池の電圧が表示される機種もあります。何れにしても、測定した時に、全く表示が変わらないとしたら、その方向には、ダイオードに測定電流が全く流れないことを意味しています。

ここで重要なのは、テスターの内蔵電池の電圧のことです。ダイオードやLEDに電流が流れるためには、たとえ順方向とはいえ、一定値以上の電圧が必要だからです。ところで、電流の流れ易さ(難さ)を測るなら「抵抗Ωレンジ」で測っても良さそうですが、なぜ使わないのでしょうか? それは、抵抗(Ω)レンジで被測定抵抗に加わる電圧は非常に低く、0.2〜0.3Vだからです。シリコンを始め、多くの半導体は、順方向でも、0.6〜0.7V以上ないと電流を流すことはできません。これがLEDになるともっと高い電圧が必要で、低いもので1.2V、白色高輝度LEDになると時には3Vを超えるものがあります。

と言った訳で、低電圧で測定する「抵抗Ωレンジ」では、ダイオードは測定できない訳です。しかも、最近流行りの高輝度LEDは、並のダイオードレンジがあるテスターでは測定不可の場合が多々あります。通常は、内蔵電池の電圧が3V未満だからです。さらに、照明用LEDともなると、名前はLEDでも仕組みが違っていて、内部で多数のLEDが直列に接続されているため、テスターで測定することは通常できません。

なお、LEDの電極にはマークが印刷されていないので、データシートの形状を見るか、切断前の脚の長い方が+(アノード)です。


抵抗値を測る
アナログテスターでは、別項で解説しますが、抵抗値の範囲に合ったレンジに切り替えて、その都度ゼロレベルをアジャストしながら使う必要がありますが、デジタルではこの煩雑さは無くなりました。上にも書きましたが、半導体を、このΩレンジで測ることはできません。あくまで、抵抗器または導線などの抵抗を測るために使用します。
スピーカー接続線の抵抗を調べたりする場合は、テスター棒の接触抵抗自体が無視できない場合がありますので、しっかりと押し付けて測りますが、それでも0.1〜0.2Ω程度は残ってしまいます。


電流を測る
レンジを mA にして、機能選択(SEL)でDCまたはACにします。
テスターで測れる電流の値は普通、数百mA以下です。商用電力のAC100Vや200Vのラインに流れる電流を測ることは絶対避けてください。電力線に流れる電流は、後述のクランプメーターを使ってください。テスターの電流計は通常、電子回路に流れる弱い電流を測るためです。

電圧測定は計りたい2箇所間にテスター棒を当てるだけでできますが、回路に流れる電流を測る場合は、その回路を一旦切り離して、回路間にテスターを入れて測らなければなりません。テスターで測定できる値以上の電流が流れる回路にテスターを入れると、テスター内部のヒューズが切れたり、破損する場合もありますので、十分注意が必要です。計器に MAX 600mA と表記してある場合は、必ずこれ以下であることを確認してから使う必要があります。

大きな電流を測りたい場合は、テスターの電流計を使うのではなく、下記の方法を使います(ただし、この場合も商用電力線に流れる電流を測ることは避けましょう)


これは、テスターを電圧計として使い、測定する電流回路に入れた、低い抵抗の両端に発生する電圧を測定する方法です。
例えば、2Aくらい流れる回路だったら、抵抗として0.5Ωを使います。 すると、回路に2Aが流れた時、この抵抗には
  V=I・R    V=2A×0.5Ω =1V が発生する筈です。
電圧から電流を逆算する時は、 電流=V÷0.5Ω= 2×V です。 0.5Vが発生していたら 1Aが流れていることになります。
注意点は、抵抗の発熱です。消費電力=電圧×電流(W) ですから、 0.5Ωに2Aが流れると、電圧は1V→つまり電力は
 2A×1V=2W  の発熱があることになります。2Wという熱はかなりの熱で、抵抗器にはこの3倍以上の消費電力のもの、つまり10Wクラスの巻き線型セメント抵抗か、ホーロー抵抗が必要です。もちろん短時間しか電流が流れないのであればもっと小さな電力の抵抗でも構いません。なお、抵抗値としては、実際の回路に影響を与えないよう、できる限り低い抵抗値がいいのですが、測定誤差も大きくなるので、挿入抵抗に発生する電圧が、測定回路の電源電圧の数%程度が適当でしょう。

上の方法は、もちろん電流測定機能が無いテスターでも使える方法です。
また、この方法は、テスターばかりでなく、オシロスコープを使って大電流を測る場合も有効な方法ですから、0.1〜1Ωの大きな消費電力型抵抗を用意しておくとよいでしょう。


コンデンサーを測る
上の写真のデジタルテスターはコンデンサーの容量をCapレンジで測れますが、普通のテスターには容量を測る機能はありません。ただし、抵抗測定機能を使うことで、容量の大きな電解コンデンサーの機能が生きているか、見当を付けることはできます。

放電済みの電解コンデンサーの抵抗値を測る場合は、コンデンサーの-極にテスターの-電圧、+極にテスターの+電圧を当てます。厄介なことは、デジタルテスターの場合は+極が赤テスター棒に出てくる機種と、黒テスター棒に出てくる機種とがあることです。これを知るためにははもう一台のテスターが必要になります。

測定開始直後の抵抗値は低い値を示しますが、まもなく∞(導通無し)となればコンデンサーは正常です。
できれば、新品のコンデンサーとの比較をすれば分かり易い結果が得られます。この測定はアナログテスターの方が適していますが、デジタルでも不可能ではありません。なお、アナログテスターは黒テスター棒に+が出てきます。そして反応も早いため、0.1μF程度の小容量のコンデンサまで検査することができます。

テスターの内部電池で充電されたコンデンサーを放電させるくらいでしたら直接両端をショートさせても構いませんが、回路電源で充電されていたコンデンサーを放電する場合は電圧にもよりますが、数Ω〜数kΩの放電抵抗を使う必要があります。




マニュアルレンジのデジタル・テスター



上のテスターはデジタルテスターですがオートレンジではなく、マニュアルでレンジを切り替えるテスターです。
例えば、直流電圧のレンジは 600、200、20、2、200m のように5つのレンジに分かれています。
こようなテスターでDC9Vを測るには、20のレンジに切り換えてから測定します。"9.77V"のように測定結果が表示されます。
2以下のレンジを使うと"1"が表示されたり、機種によっては"OL"が表示されてしまいます。
また、200のレンジを使うと"09.7"、600のレンジを使うと"009" のよう、丸められた値しか表示されません。
つまり、測定する値以上のレンジ中で、最も下のレンジを使うのがコツです。
表示される測定値は後述のアナログテスターのように換算をしなくてもよいというメリットがあります。

抵抗値は、k,M など、各レンジに表示されている単位で読み取ります。

マニュアルレンジのテスターは使う側からするとオートレンジに比べて使いにくいのですが、測定器内部の回路構成はシンプルになるためコストパーフォーマンスは良いのかもしれません。





アナログ・テスター

 YX-360TRとその内部





























アナログテスターは、レンジをノブで切り替えて使います。上の写真のテスターは、12時の位置から右回りに
ACV (交流電圧) Ω(抵抗) DCmA(直流電流)  DCV(直流電圧) となっています。

電圧や電流を測定する場合は値の大きなレンジで測り、指針の振れが小さ過ぎる場合はレンジを徐々に落として、指針が振り切れる手前の適切なレンジで値を読み取ります。



レンジが250Vの場合は、DCVまたはACVの、最大メモリが250と表示してあるスケールの値を直接読めますが、レンジによっては桁を換算して読む必要があります。例えば、レンジが1000Vの場合は最大メモリが10の値を読み、×100にします。

抵抗レンジも ×1、×10、×1k、×100k のような切り替えになっていて、やはり指針で読み取った値に掛け合わせます。指針が20を指していて、レンジが×1なら、抵抗値は20Ωですが、×100kのレンジで読む20の値は、20×100k=2000k、つまり抵抗値は 2MΩ となります。

抵抗測定は、レンジを切り替えたら、2本のテスター棒を接触させ、「0ΩADJ」のボリュームを回して、指針が0を指すように調整してから測定します。内蔵電池が消耗しているとゼロアジャストができない場合があります。

また、抵抗値のレンジでは左端の方のメモリは詰まり過ぎていて読み難くいため、なるべく指針が中央寄りになるレンジを見つけます。レンジを切り替える度に「0ΩADJ」をしなければなりませんが、ここは敢えて我慢のしどころです。


そして、指針の回転中心付近にある調整ネジは、ゼロ位置調整で用です。メーターに電流が流れていない状態で指針が0となるよう、小型ドライバーで調整します。

なお、盤面バックにある鏡は指針のメモリを正確に読むための仕掛けで、写った指針と実際の指針がピタリと重なる位置でメモリを読み取ります。

アナログテスターは、使い方が少し複雑なのが欠点ですが、アナログでなければできない観測もあります。
その一番目の特徴は、例えば、タコ足配線などのため、時々フラつく100V電源の監視ができることです。時にはオシロより敏感に観測することが可能です。自動車のバッテリーの劣化具合も、前照灯をONした時の電圧降下の具合で、慣れれば見当をつけることができるようです。

デジタルの数値はサンプリング間隔以下の変化にはついていけないため、基本的に変化には弱いのです。また、オシロも掃引間のデッドタイム(輝線が帰って、次のトリガが掛かるのを待つ間) があるため、不規則な現象を見逃してしまう場合が多々あります。アナログテスターは、数サイクル以下の瞬停は無理としても、フラつく現象を確実に捉えることができる計器です。

そうです、テスターというと、電圧とか電流の「値を読み取る計器」とばかり思い勝ちですが、実は、電気現象から得られる情報は、スタティックな情報ばかりでは無いのです。デジタルテスターは、値が頻繁にフラつくと、我々には、なすすべも無いのですが(そのフラつきの中には、確かな情報を見出すことは不可能ですが)、アナログテスターの針の動きには、大きな情報が詰まっているのです。オシロスコープは、値より輝線の波形、つまり信号の動きを捉えることが得意な計器なのですが、アナログテスターの針は、低速ながら、オシロ的な働きも示してくれます。如何に高機能なデジタルテスターであっても、この指針の動きを再現してくれることはできません。無論、アナログテスターにも構造と性能上の制約があって、機種によって指針のレスポンス(応答性)などの性能は大きく異なっているようです。

指針の動きには大きな情報が詰まっている!

【解説】残念ながら、指針のレスポンス特性は、表向きのスペックには出てきていません。アナログテスターにも2種類あって、可動コイルを金属線の張力で宙吊りにしたトートバンド式と、ピボット軸受けで支えるピボット式のテスターに分類されるようです。前者は衝撃には強いが、応答性に劣り、後者は優れた応答性を持っているものの、強い衝撃を受けるとピボットが外れる危険性があるなどの弱点があるようです。製造上の難しさもあってか、ピボット式は、徐々にテスターとしては少数派となってしまっているようです。指針の動きの情報を読み取る能力は当然ピボット式に軍配が上がります。

管理人が愛用する写真の機種は今や希少となりつつあるピボット式のテスターです(下写真)。 ピボット式といってもピボット自体は外からは見えませんが、ピボット式の特徴である螺旋状のゼンマイバネが見えます。機械式腕時計のテンプなどの軸受けピボットには宝石のルビーが使われていますが、テスターのピボットは焼入れされた金属製のようです。
ちなみに、限定された角度だけ旋回する支点のことをpivotといいます。





これと同じ部類に属しますが、デジタルテスターよりアナログの方が素早く観測できる例として、多極の中から導通する端子を探す場合も、アナログの針の反応の方が圧倒的に早いため、目的の端子を素早く探し出すことができます。
また、多くの高感度アナログテスターは、9Vの内蔵電池を持っているため、高輝度LEDの検査も可能です。

なお、高機能のテスターは微弱電流(電圧)の測定ができます。写真のテスター(サンワYX-360TR)は、ノブのあたりに昭和が感じられる測定器ですが、フルスケールで、50μA/0.1Vの感度がありますので、電磁誘導で発生する微弱な起電力などの観測にも適しています。また、1Ω以下の低抵抗も、廉価版のデジタルテスターでは正確な値を測定できませんが、分解能0.1Ωまで正確に読み取ることができます。

高性能アナログテスターは、それなりに値段も張りますが、動作原理がシンプルなだけに、大切に扱う限り故障することは、まずありません。電池ホルダーも上の写真で分かるように、ドライバーでネジ締め固定するという、不便と高い信頼性を併せ持つ、すばらしい測定器です。賞賛ついでですが、高性能テスターに付属している国産テスターリード線/棒は、接触抵抗が低く、断線し難いことでも群を抜いています。これは表には出てこないスペックですが、極めて重要な要件なのです。
なお、高感度なアナログテスターになると、100kΩ/V、100mV/10μA、0.1Ω (NISHIZAWA MODEL 3010) などもあるようです。



テスターはアナログ式かデジタル式か?
この答えは明快です。 「両方」です。
時計も、「出勤前、テレビで確認する時刻はデジタルに限るが、部屋掛け時計はアナログでないと不便、腕時計はデジタルでもいいけど、やっぱりアナログ」 と同様に、テスターにも使い分けがあります。その使い分けは

 入門はアナログで、ちょっと調べるのはデジタルで、深く追求するなら、またアナログ!

といったところでしょうか、




クランプ・メーター


テスターで電流を測る場合は、回路の途中を切断して、ここに電流計を入れたり、低抵抗を入れる必要がありますが、クランプ・メーターは上のように、電線を挟むだけで、回路に流れているAC電流を計測することができます。これはクランプ部に誘導される交流磁界を測るタイプですので、直流は不可です。
測定したい線のみをクランプして測ります。通常のAC100Vラインに流れる電流を測定場合は、電源コードが2本に分岐している部分で、何れか片方の線をクランパーで挟みます。2本共クランプしてしまうと、往復の電流が打ち消し合ってしまうため測定できません。

クランプ・メーターの使いかたの応用編としては、電線を写真のように単純に挟んで測定するのではなく、コイル状に電線を複数回絡げてクランプする方法があります。2回巻きつけると、測定値は2倍になり、5回巻きつけると5倍になりますから、弱い電流を精度良く測定する場合は有効な方法です。

写真のように簡単なテスター機能が付属している機種もあります。

なお、ホール素子などを使った、直流を計測できるクランプメーターもありますが、地磁気などの外来要因の影響を受けるため精度には限界があるようです。



LCメーター


コイルの持つインダクタンスと、コンデンサの容量を測定する専用計測器がLCメーターです。
チョークやトランスを自作したり、静電容量の実験をしたりする場合に必要な測定器です。
写真のLCメーターは、3+1/2桁表示、 フルスケールで
 インダクタンス: 2mH 〜 20H 
 キャパシタンス: 2000pF 〜 200μF

電解コンデンサは + - を合わせます。
小さな容量や、小さなインダクタンスを測る場合は長いリード線を使うとと測定誤差が大きくなるため、なるべく短いリード線を使います。




オシロスコープ


プローブ


一定値の電圧、電流の場合はテスターで済みますが、変化する値を観測する場合はオシロスコープが必要になります。写真は昔ながらのアナログオシロですが、基本的な使い方はデジタルオシロにも共通しています。
オシロスコープはつまみが多いので、電気系が得意でない人は敬遠しがちですが、主な機能だけでも使えれば十分有用な測定器といえます。

プローブ
測定信号はプローブに、電圧信号として入れます。測定する回路のグランド(注1)をワニ口クリップで挟み、測定箇所をプローブ先端でクリップします。プローブの先端キャップを回してクリップを外し、針状のプローブで直接測定箇所に当てることもできます。

プローブのグリップ部に ×1  ×10  の切り替えスイッチがありますが、これは入力信号のレベル切り替えスイッチです。通常は×10を使い、プローブを高い内部抵抗で使います。これは、被測定回路になるべく影響を与えないためです。この時、オシロの測定された電圧を10倍に換算して読み取ります。 入力の信号レベルが小さい場合は ×1 を使い、測定された電圧はそのまま読み取ります。

【 注1】 ワニ口クリップは通常、被測定回路のグランドに接続しますが、実は、ワニ口クリップは「測定値の基準」であり、プローブで観測するのは「基準から見た電位」です。つまり、ワニ口クリップは任意の位置に接続することができます。例えば、回路途中の抵抗に流れる電流値を見たい時は、この抵抗の両端にワニ口クリップとプローブを接続すれば、ワニ口クリップ側を基準とした電流の値が観測されることになります。


入力 (CH1,CH2)
信号の入力コネクタは2チャンネルあります。普通はCH1で測定しますが、比べたい信号がある場合はCH2に接続します。

CH1、2表示切替 (V MODE)
ボタンで、垂直軸にどのチャンネルを表示させるかを選びます。
CH1 だけを押すと チャンネル1だけが表示されます。CH1とCH2を二つ押し込むと、画面には二つのチャンネルが表示されます。
CHOP は、比較的遅い掃引画面の場合、CH1とCH2を相互に切り替えながら同時に観測する表示モードです。
ALT は、高速掃引画面の場合、CH1とCH2を交互に表示するモードです。

CH1↑↓、CH2↑↓ (V.POS)
つまみで、トレースされる輝線の縦位置を調整します。0ボルト位置を合わせる場合は、AC-GND-DC切り替えスイッチをGNDにしてから合わせます。なお、このスイッチをACにすると、入力信号の直流成分がカットされたものになりますから、通常はDCにしておきます。

横位置  (H.POS)
波形の横位置を調整します。波形とメモリを合わせて、時間データを読み取り易くすることができます。

CH1感度、CH2感度 (VOLT/DIV)
垂直軸の感度を切り替えつまみで合わせます。メモリに書いてある数値はスコープの1目盛あたりのボルトです(ただしプローブを×10にした場合は測定された値を10倍に換算する必要があります)
つまみは二重になっていて、感度切り替えは外側の大きなつまみで切り替えます。内側のつまみは感度微調整用ですが、通常は校正(CAL)位置に回しきっておきます。

トリガのソース (SOURCE)
トリガ(TRIG)の機能はオシロスコープで最も大切な機能といえます。トリガは拳銃の引金のことですが、オシロスコープは入力信号が一定の電圧レベルになったら、引金(トリガ)が引かれたように、輝点(スポット)を掃引(スイープ)します。スイープしないと、画面には何も現れませんから、トリガ条件をうまく設定することが、オシロを使いこなす第一条件です。

測定信号をCH1に加える場合、トリガのSOUCEとしてCH1を選びます。これは、CH1に入ってくる信号に合わせてスイープさせる方法です。CH2を選択するとCH2の入力でスイープさせることができますが、普通は使いません。LINEやEXTも使いません。

トリガ結合 (COUPLING)
トリガ信号の入力への結合方式を指定します。通常は、入力信号の交流成分を使ってトリガするのでACを指定します。トリガを鈍らせる場合は HF REJ を使います。

トリガの傾斜 (SLOPE)
信号の立ち上がり部分でトリガする場合は+、立下り部分でトリガを掛ける場合はにします。

トリガのレベル (TRIG LEVEL)
トリガを掛ける信号のレベルを調整します。
なお、このつまみを押し込むとAUTOになって、入力信号が無くとも自動的に掃引することができますから、通常はこのモードにしておきます。
引き出すと NORM 掃引になり、信号がツマミで設定したレベルになるとトリガが掛かり、掃引されます。条件に合致する入力信号が無い場合は、画面は何も表示されない状態になります。条件に達する入力がある度に、画面は上書きされることになります。
なお、デジタルオシロの場合は、もうひとつ SING というモードがあります。これは、トリガ条件が成立した時、1回だけデータを取り込んで表示し、上書きしないモードです。

時間軸切り替え (TIME/DIV)
つまみを切り替えて、観測しやすい時間で掃引します。このつまみは3重になっていて一番外側が主時間切り替えです。最も内側の小さいつまみは校正ですから、普通はCAL位置にしておきます。
なお、B掃引機能というのがあって、時間軸切り替えの中側のつまみで掃引時間を決め、波形の一部だけを拡大掃引して、この部分の波形時間を測定する機能もあるのですがここでは省略します。(複雑な割にはあまり使いませんので)

校正信号 (CAL)
オシロには校正波形の発生源が付属してます。写真例の装置では操作面の左下部に、プローブでクリップできる端子が出ていて「0.5V P-P」と書いてあり、Prak to Peak で0.5Vの1KHz矩形波が出ています。感度を確認する場合、およびプローブ部分のトリマを回して周波数特性をフラットにする時に使います。

以上の操作は写真の機種の例で説明しましたが、具体的なツマミの動かし方の違いはあるにせよ、オシロスコープであれば、どの機種でも同様な操作機能があるはずです。



デジタル・オシロ
デジタルオシロもアナログオシロと基本的には同様な使い方ですが、1回だけの入力データがそのまま画面に残るという特徴がありますので、トリガは SING モードを有効に使うことができます。また複数の画面をメモリーに記憶させて参照したり、RS232CやUSBでデータをPCに送ることができます。
また、表示画面や操作つまみの無いデジタルオシロもあります。このオシロはPC画面上で操作し、データもPC画面に表示されます。操作の補助も細かく表示されて非常に便利ですが、それなりに測定環境が限定されてしまう欠点もあります。

なお、注意することとして、アナログ・オシロの場合は対応可能な周波数帯域近くまでは問題なく表示できて、それ以上は感度が下がるだけですが、デジタル・オシロの場合は、○○Msps (メガ サンプリング速度/秒)と書いてある場合は、データ取り込みの周期であって、実際に取り込んで、波形らしい波形で表示できるのは、この1/6〜1/10なので、注意が必要です。100Mspsの場合は16メガ程度の信号までしか、有効に観測できないということです。これより早い成分の信号を観測すると、信号波形に干渉が起きて、全く別もののデータに見えてしまうことがあります。また、2現象で観測する場合は実質的なサンプリング速度はさらに半分になります。
Mspsではなくて、MHz表示の場合はアナログオシロに準じますので、何れの表示法か注意してください。



ロジック・チェッカー(LOGIPULSER)

ロジック・チェッカーあるいはロジック・テスターは、回路の信号がHかLかを素早くしらべるための測定器です。
写真は 長年使い込んだ LOGIPULSER ですが、優れものの測定器です。ワニ口クリップをGNDと+電源に接続して、測定針を回路に当てると、音とランプで回路のH/Lを知らせてくれます。切り替えスイッチで、NORMALとPULSEを切り替えることができます。

PULSEモードにすると、短いパルス(正確にはロジックの変化)を拾って、ピッと音を発してくれます。稀に発生する短いパルスなども、音であればリアルタイムで現象を認識できるため、オシロより的確に判断できる場合が多々あります。
また、ノーマルモードで音を聞いていると、周波数の変化や、不規則に混じるパルス動作なども判るため、オシロ画面で見るより、感覚的に素早い判断ができる場合も多いのです。

特にマイコン開発時には、クロックの動作確認はもとより、ポートの動作確認や、各出力ルーチンの動作確認、あるいは、デバッグ中に、空きポートから確認パルスを出して、必要な関数の機能を確かめるなど、このロジパルサーは絶大な威力を発揮してくれます。特に、LとHとフロート(スリーステート)を区別して表示してくれる測定器は、知る限りこのLOGICPULSERだけです。

このように、優れた特性を持つ計測器ですが、写真の製品は、製造元で20年程前に製造を中止したとのこと。内部の回路は、トランジスタと12石とC/Rだけ。回路設計者の高いレベルが伺われる一品です。

現在、ロジックICで構成された、
似た名前の商品が発売されているようですが、どうも、かなり違っているようで、ネット上の評判もイマイチのようです。再登場が待ち望まれる測定器です。

→この測定器の詳細はLOGIPULSERで取り上げましたので参照してください。



サーモカップル(熱電対)



上は温度計。下の目立つ箱が主役では無く、ライターの炎を当てている部分がこの写真の主役です。この針金、異なる2種類の金属を先端で溶着してあるだけの簡単な仕掛け。他端でも同様に溶着してあります。両端間に温度差があると、温度差に応じた電圧が発生しますが、この電圧を測れば温度差が分かるという仕掛けです。
従って、熱電対が溶けない限りは、このような高い温度でも測れます。
ちなみに、箱の部分は秋月電子のキットですが、OPアンプの増幅とテスターを使い、水の氷点と沸点を基準にすれば原始的な温度計を自作することもできます。熱電対も異種金属線(銅-鉄 等)の端を捻ることで、簡易的には自作できます。複数の熱電対を直列接続することで、大きな電圧を得ることも可能です。
熱電対を被測定箇所に密着させるには、耐熱ガラス粘着テープが適しています。





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