TopPage

  めざせ復刻 LOGIPULSER
 -- マイコン・デバッグに最強のツール --

 このページは電気測定器の使い方 の中で取り上げた商品名 LOGIPULSER の復刻をめざす記事です。LOGIPULSERは岩島電子工業で製造販売された、デジタル回路の信号を検出し、これをLEDの光と音で表示する優れものですが、既に製造中止されて20年以上も経ています。しかし未だ、この測定器の復活を望む声が絶えません。

似たような商品は、「ロジックチェッカー」「ロジックパルサー」「ロジックテスター」などの名で出回っていますが、その殆んどは、CMOSロジックICを利用した簡易なもので、LOGIPULSERとは似て非なるもののようです。

LOGIPULSERは、下の写真のようなもので、内蔵基板は幅15mm、長さ142mmの片面基板に搭載され、プラスチックケースに納められています。




ワニグチクリップ(黒)を測定する装置のグランドに、ワニグチクリップ(赤)を装置の+電源に接続し、LOGIPULSERのプローブを測定回路に接触させると、Lなら緑、Hなら赤のLEDが点灯し、小型スピーカーでHかLかわかります。

モードスイッチをNORMALからPULSEに切り替えると、ロジックが変化した時に黄色のLEDが点滅し、音が知らせてくれます。

動作は高速で、CPU回路やハード回路のテストに最適で、クロックが発振しているか、トリガ信号が働いているか、などなど、オシロでも捕まえるのが困難なパルス性信号、特に短いトリガ信号や、ごく稀にしか発生しないヒゲ状パルスも確実に検出できます。
また、周波数の変化などはノーマルモードを使って、耳で感覚的にキャッチできる点も他の測定器には真似ができない芸当と言えます。

LOGIPULSERが持つ、もう一つの特徴は、ハイインピーダンス(回路のフロート状態)が分るとう機能です。デジタル回路は、HかLか、何れかの状態を取る回路とされていますが、実はどちらにも属していない状態があり、それがハイインピーダン状態です。テスターでもオシロスコープでも、ロジックスコープでも、この区別はつきませんが、私が知る限り、唯一これが分るのがLOGIPULSERです。

LOGIPULSERの仕様では4V〜16Vの電源で動作するとされています。トランジスタの耐圧はもっと行けそうですが、電解コンデンサの耐圧やLEDの電流を考えると止めた方がいいでしょう。

簡単に使えて、オシロやデジタルオシロのように厄介なトリガ条件を捜す必要もなく、デジタル回路の取り扱いにおいては手放せない便利な測定器であることは間違いありません。

特に、マイコンシステム開発には強力で、目的ルーチンの通過を確認したい場合は
  PORTB ^= 0b01000000;
のように、ポートBのb6を反転させたり、ヒゲパルス発生ルーチンを挿入することで簡単に確認することができます。




回路

さて、内部の回路は長らく不明でしたが、追っかけて調べたのが下の回路。回路図における各部品の配置は実際の配置にほぼ準じています。詳しくは、下のpdf回路図で見てください。


LOGIPULSER回路.pdf


この回路図左端には、測定信号V2を入力しています。
右端の下側はクリップで接続する装置の電源です。

回路右端の小型スピーカーは、直径9mm〜12mm程度の基板取り付け型のダイナミック・スピーカーを使います。自励式ブザーや圧電ブザーは避けてください。

中央左寄りのNORM/PULSEと書かれた部分は、基板取り付け型の2極双投(2回路2接点)のスライドスイッチです。入手困難な場合はトグル型でも構いません。

LEDは、角型か3mmの、緑(Low)、赤(Hi)、黄色(Pulse)が適当でしょう。

他に、赤と黒の小型ワニグチクリップとコード、テスターリード棒を改造して作るプローブなど。

トランジスタはオリジナル回路では2SC945と2SA1015が各6本使われていますが、2SC945に代わって2SC1815の方が入手しやすいでしょう 。何れも秋月電子で10個ないし20個1パックで\100とか\200くらいで販売されています。本来、2SA1015も2SC1815も東芝では製造が中止されていますが、台湾製の同番同スペック品が供給されています。

CRも特殊なものではありません。電解コンデンサは耐圧25V。小容量のコンデンサはセラミック。Rは1/4W型のカーボン型です。

これらのパーツもトランジスタ同様、秋月やネット販売されています。

問題は基板ですが、機能だけでしたら、ユニバーサル基板で作るのが最も簡単ですが、プローブ付近にLEDとスピーカーを組み込もうと思うと、オリジナル同様、基板化するしかありません。片面で十分なので、がんばれば手作りも可能でしょう。ページの後ろにパターンの引き回しを参考として付けておきました。図は部品面側から見ていますので、半田面パターンは反転してください。細かい寸法は実際の部品に合わせます。

ちなみに、ケースを自作する場合はホームセンターで売っているダークグレーかダークブラウン t=1.5 または2.0のアクリルをアクリル接着材で組立てするのが間違いのない方法でしょう。この場合、スイッチはスライドスイッチより、トグルスイッチの丸穴の方ほうが加工しやすくなります。




回路の働き



わかり易いように、回路をブロック化したのが上図です。L検出回路(左上部)、H検出回路(左下部)、マルチバイブレータ回路(右下)、パルス検出回路(右上)の4ブロックに分かれています。

HとLの検出回路はそれぞれ別の差動回路で、比較検出レベルは入力と反対側のトランジスタのベースに接続された抵抗で作っています。

スピーカー音はマルチバイブレータ回路が使われ、HとLで周波数を変えています。

パルス信号はH検出信号と、L検出信号の微分信号をORし、ワンショット回路をトリガーしています。この回路は単安定マルチバイブレーターと呼ばれ、通常は555などを使ってしまうため、このような回路を見かけることはありませんが、ここではICよりずっと小さく組み込んでいます。

各回路ブロックはシンプルで無駄な回路を省いていますが、細かい配慮がされています。デジタル回路向けの測定器ですが、アナログ回路の高い技術に裏打ちされた回路構成が採られています。回路を学ぶ者にとって、とても勉強になる回路といえます。


蛇足かも知れませんが、誤ってプローブに電源電圧を越える電圧を入れてしまってもQ4を破損させてしまわないように、Q4のベース部分に、GNDとVへ逆向きの2本のクリッピングダイオードを追加した方が良いと思うのですがオリジナル回路には入っていません。




動作をシュミレート

LTspiceを使って、ノーマルモードの動作波形を調べたのが次ぎの画面です。

上から、入力信号、Hi-LEDの電流、Lo-LEDの電流、スピーカーの駆動電流



HレベルとLレベルの検出は重なり合うことが無いように、配慮されています。
スピーカーの発振音は、Hi が1.5kHz、Loで1kHz となっています。これがピーポー音の発振です。



下図は、パルスモードの動作波形

上から、入力信号、Pulse-LEDの電流、スピーカーの駆動電流



LEDとスピーカーからは、信号が変化する度に、160ms程のパルスが出力されています。
ピーピー音の発振です。



下図は幅250nの正パルスに対するPulse-LEDの反応。負のショートパルスにも反応します。
(オリジナルのLOGIPULSERの仕様では50n)





このパルス検出回路はリトリガー(再トリガー)機能を持っていますから、下図のようにワンショット周期より短い間隔のトリガが入力されても動作が停止してしまうようなことはありません。




参考パターン図

半田面パターン(反転).jpg

部品面.jpg

参考 半田面写真(反転).jpg

参考 部品面写真.jpg

注)部品面にはジャンパー線(2箇所)があります。

なお、このページで使った回路のLTspiceソースを下に添付しておきます。2SC1815と2SA1015のスパイスモデルは本サイトのLTspice入門の記事を参照してください。動作確認だけでしたら、LTspice標準のNPNとPNPトランジスタでもできると思います。

LOGIPULSER.asc








inserted by FC2 system