メカトロニクス 回路設計のための
回路要素


◆マイコン周辺回路などに使われる回路を集めました。
特に、基本となる電源回路や入出力回路に応用できる代表的な回路要素です。


 リレーによるAC回路ON/OFF

マイコンのポートでAC24V回路やAC100V回路を制御する場合、最も一般的なインターフェースです。
出力ポートはプルアップしないで使います。
RLはドライブAC負荷に適合したリレーを使用してください。

負荷がリレーの場合は、回路を断続する際の電流、あるいは電圧の過渡現象は比較的穏やかですが、負荷がランプの場合はフィラメントが白熱するまでの短時間に流れるラッシュカレントに耐えられるものを、負荷がモーターやソレノイドのような誘導性負荷の場合は逆起電力による影響を十分考える必要があります。少なくとも抵抗負荷の2〜5倍の余裕を見ておく必要があります。

D1は、回路がOFFされたとき、リレーのコイルに電流が流れ続けようとするフライホイール電流を逃がすダイオードです。これが無いと逃げ場を失ったコイル電流は、OFFされたMOSFETのソース・ドレイン間に非常に高い電圧を発生し、素子を破壊する場合があります。

フライホイール・ダイオードがあると、コイル中に蓄積されたエネルギーが放出し切るまでOFFは若干遅れます。大きなエネルギーが蓄積されるソレノイドなどの場合は、回路中に抵抗を入れたり、バリスタと呼ばれる電圧が一定値以上の時に抵抗値が低減する素子を使用する場合もあります。


SSRによるAC回路ON/OFF

リレーに代わってSSR(ソリッドステート・リレー)で回路を断続します。

SSRの入力側は通常発光ダイオード型で、駆動電圧はDC3〜15Vのような範囲になってます。出力側はゼロクロス型か非ゼロクロス型で、ゼロクロス型は、AC電源が0V付近に降下した時にONするタイプです。急峻な電圧突入がないため、ノイズ面で有利になることがあります。

電磁リレー同様、負荷がモーターやソレノイドのような誘導性負荷の場合、余裕を考慮しておく必要があります。

Tr1にトランジスタを使っているのは、マイコンのポートがイニシャル前にフロート状態(ハイインピーダンス)にある時、AC回路がONされないようにするためです。トランジスタは積極的にベース電流を流し込まない限りONしないため、ポートがイニシャライズ後、プログラムで1が出力されて初めてONさせることができます。前例同様出力ポートはプルアップしないで使います。


DCモーターON/OFF回路

2SKで始まるNチャンネル型MOSFETを使ったDCモーターON-OFF回路
DCモーターを単に回転させるだけで、逆転もブレーキも不要ならこの程度の回路でOKです。

下は2SJで始まるPチャンネル型MOSFETを使った回路。GND側に負荷を入れる場合の回路です。
ポートを1にした時に駆動されます。



LED ON/OFF回路

電流が数mA程度のLEDをON/OFFする回路です。ポート出力をLにすると点灯します。

ポートは一般的に、Hにして流し出せる電流(IoH)より、Lにして吸い込める電流値(IoL)の方が大きいため、吸い込み電流(シンク電流)を使います。


DCモーター正逆転ブレーキ回路

東芝のTA8428KはDC24V,1.5Aクラスのフルブリッジ・モータードライバーです。
    ブレーキ  逆転   正転   OFF
 IN1  H      L     H     L
 IN2  H      H     L     L

のように制御でき、過熱、過電流保護機能も備わっています。ディスクリートでこのような機能を満たす回路を作るのはかなり大変です。



TIのモータードライバ
東芝のドライバは使い易かったのですが、製造中止の方向が出されています。他のメーカーからも似たようなドライバは出されていますが、信頼性の高いフルブリッジドライバを探すのは厄介です。そんな中でお薦めはTIの DRV8872

  IN1 IN2
  0   0  停止
  0   1  逆転
  1   0  正転
  1   1  ブレーキ

ISENは過電流検出抵抗を入れます。
 Imax = 0.35 / Risen
nFAULT はプルアップしておくと過電流や過熱エラー信号が出力されますが、使用しなくても構いません。


大電流LEDドライブ


反射光や、遠距離のLED光を利用する時はLEDも定常光ではなく、間歇発光を利用します。

半導体一般の性質として、電圧は一瞬でも許容値を越すと素子は破壊しがちですが、素子が過熱していなければかなり大きな電流を流せるという性質を利用して、ON:OFF時間比(デューティー比)を高くして瞬間的な大電流をLEDに流すことができます。

PNPトランジスタを使い、エミッタ→ベースにシンク電流を引き、エミッタ→コレクタに主電流を流します。

なお、保守作業でCPUが停止した場合もLEDを破損させないようにする考慮が必要です。ソフト担当者はタイマー割込みを使いたくなりますが、555のようなハードを使った方が安全です。


 スイッチ入力回路


CPU(マイクロコントローラー)にスイッチの信号を入力する場合は、10kΩ程度のプルアップ抵抗を付け、スイッチでグランドに落とします。

回路は簡単ですが、思わぬ動作に悩むことが多い場面でもあります。

まず、スイッチですが、ON,OFFの時に5〜20mセカンド間、接点がバウンドしていわゆるチャタリングが発生します。悪影響を避けるため、昔はTTL回路でFF(フリップフップ)などを入れることもありましたが現在は通常、ソフト対策をします。

一旦信号の状態が変化したら、後続する30ms間は、入力を禁止するような手段です。

ただし、電源ラインから入ってくるACノイズなどが目立つ場合は通常入力がしにくいこともあり得ますので、チャタリング防止処理をする前にまず、1ms以下のノイズをキャンセルするようなソフト対策をした後で、このチャタ対策をする必要があります。

経験から言えば、1ms間隔で3回程度信号が一致するような論理をとればノイズは排除できます(電源フィルターやアース対策は無論した上での話しです)


 5端子 定電圧チョッパ

LM2575を使った定電圧回路です。3端子レギュレーターに比べ、発熱が無視できる程少ないため、普通は放熱板が不要です。電力効率が上がるのはもちろんです。

LM2575-5.0は5V専用ですが、LM2575-ADJは外付け抵抗で出力電圧が可変になる便利なICです。もちろんチョッパ型ですからAD変換や、高ゲインOPアンプの電源に使う場合は要注意です。このような場合は、7V近くまでLM2575で下げた後、3端子で5Vにするような工夫もあります。

モーター等の電圧が24〜36VでCPU回路が5Vのような場合、2出力のスイッチング電源を使うより、単電源を使い、基板の中でLM2575-5.0を使ったほうが全体価格は一般的に下がります。


 可変電圧型 降圧チョッパ
秋月から出ているsharpのPQ1CZ1 はR1に可変抵抗値を使うことで出力電圧を変更できます。100kHz発振回路が内蔵されているため外付けcは不要です。Dはショットキーバリアダイオードを使います。
出力をoff制御しない場合、5番端子は未接続でもokです。 




 3端子レギュレーター

おなじみの3端子です。入力電圧>出力電圧 + 3V
0.1μの積層セラミックコンデンサは寄生発振防止
放熱はヒートシンクを使います。
なお、7905というレギュレーターは負電源用の3端子ですが、種類によっては、端子の並びが異なっていますので要注意です。

ヒートシンクの熱計算
1Wの消費電力により温度が1℃上昇するヒートシンクの熱抵抗値は 1 ℃/W (または1 K/W)。
熱抵抗 37℃/W のヒートシンクを、半導体温度max 105℃ 周囲温度max45℃で使うと、
ヒートシンクから放熱される電力は (105-45) / 37 = 1.62 W  従って、
三端子のIN-OUT間のドロップ電圧が4Vの場合、
4V × I = 1.62W  → 最大出力電流 I は405mA
(注)シリコン半導体の許容温度が約150℃であっても、保護回路がこの温度以下で動作する場合がある。
ファンで強制空冷する場合の熱抵抗値は要実測



 可変電圧レギュレーター

NJM317やLM350T は可変電圧型のレギュレーターです。R2に可変抵抗器を使うことで出力電圧を調整できます。
発熱量に合ったヒートシンクを使います。


TTL

CPUが一般的でなかった二昔前、TTLは電子化の華でした。あらゆる回路はTTLで構築されていました。次第に出番は減りましたが今でも大切な要素です。

ローパワーTTLは74LS00のようにLS表記が入ります。各社の型番の先頭記号は下記のように異なりますが機能は同じです。

  SN: テキサスインスツルメンツ
  MC: モトローラ
  LM: ナショナルセミコンダクター
  TC: 東芝
  μPD: NEC
  F: フェアチャイルド

NAND 7400 は基本中の基本です。 NANDは両入力に1が入った時0が出力されるゲート素子ですが、組み合わせ方によってNOT、OR、AND、XORと総ての論理ゲートを構成できる不思議なゲートです。

なお、DIP型ICは横長に置いて、左側にクボミまたはボッチがあるように見た場合、下列左端が1ピンで、上列左端が最終番号ピンです。SIP(一列)ICも型番名が読めるように見て、左端が1ピンです。 

INVERTER 7404は単にロジックを反転するがけですがやはりよく使われるゲートです。

OPEN-COLLECTOR INVERTER 7406 は通常のゲートICが、トーテムポール型出力と呼ばれる回路構成になっていて、約0Vか5Vかの出力が得られるのに対し、トランジスタのコレクターがそのまま端子に出てきているICです。

トーテムポールICはひとつの出力ゲートに複数の入力ゲートを接続することはできますが、逆に複数の出力ゲートを並列に接続することはできません。オープンコレクタはプルアップ抵抗を外付けすることで多数の出力ゲートを並列につなげることができます。

もうひとつの使い方は、出力電圧の変換です。06の出力耐圧は+30Vですから、5Vを越える出力が必要な場合はこのICを使います。なお7407は信号が反転しないバッファです。


 コンパレーター

OPアンプ(オーピーアンプまたはオペアンプ)と称されるICは、中に多数のトランジスタやFET(電界効果型トランジスタ)が組み込まれた高性能な増幅回路です。

2入力の電圧を比較するOPアンプはコンパレーターとも呼ばれています。-入力に加えられた電圧より、+入力端子の電圧が少しでも高くなると、出力はHになります。そうでない場合はL(0V)が出力されます。

フォトトランジスタに入る光量が一定以上になったらONと判断し入力ポートへ信号を送ったりする場合に使用します。比較入力側を可変抵抗にすればスレッシュレベルを変更することができます。

なお、OPアンプは通常+電源と-電源を必要としますが、LM339 (4回路入り)、LM393(2回路入り)は、単電源でも働くOPアンプです。ただし、出力はオープンコレクタですから、10k程度の抵抗でVccへプルアップします。また、0V付近ではもちろん注意も必要です。



トランジスタ反転回路

よく見受けられるトランジスタ1段の信号反転回路です。
詳しくは、LTspiceで回路設計の項を参照してください。


フォトトランジスタ回路

LEDと組み合わせ、フォトインタラプタなど光検出に使われる。検出レベルが光量で変化するため、用紙検出では直接反射光や透過光を利用するのではなく、メカ式レバーを介して検出する方法が確実です。コレクタ抵抗はフォトトランジスタの特性に合わせます。
R1の値が大きくなり過ぎて、Hの安定性に不安が出てくる場合は、コンパレータを使います。



OPアンプ反転増幅回路

入力はR1(10kΩ)を介してOPアンプの-入力に加えられます。-入力というのは入力電圧が上がる方向に変化すると出力電圧は下がる方向に変化する入力端子です。

もし-入力端子2から出力端子1に接続された抵抗R2が無い状態であれば、例えば入力が0Vから更に下がって -0.1V になったらどうなるでしょうか?OPアンプの増幅率は極めて高いのですが、例えば低めに1万倍(正確には-1万倍)としても、出力には
  -0.1V×-10000 = +1000V
が出力されようとしますが実際には電源電圧で飽和してしまいますので、この場合は5Vになってしまいます。

さて、抵抗R2を入れた状態ではどうなるかというと、出力の電圧はR2を通じてOPアンプ自身の-入力に返されていますから、出力電圧が上がろうとすると、入力端子2の電圧も上がる方向になってしまいます。-入力端子2の位置で見ていると、左側の入力信号はR1を通して下げられる方向に変化し、出力側からはR2を介して上げられようとします。状態はどこかでつりあうはずですが、それはOPアンプの+入力端子3の電位と、-入力端子2がちょうど等しくなった状態、つまりグランド電位0Vです。

-入力端子はGNDには接続されていないにも係わらず回路が動作することによって0Vに拘束されるのです。これはイマジナル・グランド(仮想接地)とよばれています。

もうひとつのポイントとして、OPアンプの入力抵抗は極めて高く、電流を流し込んだり引き出すことはできないことことも留意してください。そうすると仮想接地ポイントでは、

 【 R1から入力側に流れ出す電流量】 = 【出力側からR2を通じて流れ込む電流量】

ですからR1とR2の両端の電圧の比は抵抗の比と全く同じになります。入力に-0.1Vが加わった時、出力電圧は1Vになるわけです。

増幅率は1万ではなくR1とR2の抵抗比である10になったことになります。

出力の一部を負の入力側に返すことを負帰還(フィードバック)といい、電子制御の重要な手法となっています。抵抗の比を100にすればゲイン100の回路となります。

ただし、フィードバックは高い周波数成分まで考えるとかなり難しいので注意が必要です。


OPアンプ非反転増幅回路

入力をOPアンプの+入力端子に入れ、負帰還は図のR2、R3のように掛けると信号を反転しないで増幅することができます。この回路では2番ピンが理想的な仮想グランドにはならないので、バランスを取るためR1を入れています。


OPアンプ によるボルテージフォロワ

増幅率1の非反転回路です。特徴は「高入力インピーダンス、低出力インピーダンス」です。インピーダンスとは交流まで含めた抵抗値のことです。

他の出力回路にこのボルテージフォロワを接続しても殆ど電流を吸い込んだりしないので影響を及ぼすことは少なく、一方出力に他の回路を接続した場合は十分大きな電流を供給できる回路 ということになります。


TL497A によるDCコンバーター回路



コイルLのインダクタを使って電圧を変換する方法はDCコンバーターとして広く使われています。電圧を下げる場合は、Lとスイッチ素子を出力電流回路に直列に入れて、ONしても電流が急に流れ始めない性質を利用します。逆にLとスイッチ素子を出力とGND間に入れて、流れている電流を急に切断する時に発生する高電圧を利用するのが昇圧回路です。スイッチングのON-OFFが高速にできると、小型のインダクタで済み、高い効率が得られます。

TIのTL497Aは昇圧も降圧もできるコンバーターとして知られ、2020年現在もアマゾンなどで入手できるようです。
上の二つの回路は昇圧回路、下の二つは降圧回路。TL497A単体の最大出力電流は500mAですが、トランジスタを使ったブースター回路でこれを増大することができます。

一番上の回路で、DC5VをDC12〜24Vに昇圧する場合を例にすると、
スイッチング周波数はCtで決まりますが、tonの範囲は25〜150μsなので、100μsでは、 Ct(pF)=12×ton(μs) → 1200 ということで Ct=1000pFが使えます。
Rclは 0.5V/0.5A = 1Ω
Lは Vi=5Vの場合、計算上 L(μH)=Vi・ton/I(pk) = 5(V)・100(μ)/0.5A =1000μH ですが、範囲50〜500μHにすることが求められているので、トロイダルコアの470μH を使います。
Vo=21V にしたい場合は
 R1=(21-1.2)kΩ = 19.8kΩ
にすれば良いことがわります。固定+半固定VRを使うか、2本直列で19.8kになる10kの抵抗を選んで使います。
リップルを低く抑えるためにはCoに大きめの容量の電解コンデンサーを使います。






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