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          機器に使われる材料

このページでは、機器に使われる一般的な材料の特徴と、その使いかたを取り上げます。

その昔、ナイロンが発明されたとき、「鋼鉄より強く」がキャッチフレーズにされましたが、むろんナイロンの板に鋼鉄の釘は容易に打ち込めますが、ナイロン製の釘を厚い鋼鉄の板に打ち込める訳ではありません。しかし、用途を限定すればこのキャッチも正しい場合があることは確かです。
また、例えば、アルミ合金は、同じ寸法形状では強度において鉄鋼には勝てませんが、厚みを倍にすれば、重量は7割程度で、たわみ強度で3倍近い値を得ることができるように、必ずしも表向きの材質の強さには頼らないで問題を解決する方法もあります。

以下の解説に出てくる材料は、比較的一般的に使うことができる材料ですが、各素材には、それぞれ異なった特性があるため、特性を生かした使いかたをすることで、より価値を高めることができるはずです。また、処理のしかたを変えたり、複合素材にすることで、更に高い価値が得られる場合もあります。


鋼材

SS材
SS400 (旧名 SS41) 一般構造用圧延鋼材 
SS490
 (旧名 SS50) 一般構造用圧延鋼材(高強度)



強度が高い、構造用の鋼材で、記号の数値は最低引っ張り強度です(SS41は41kg/mm2)。
鋼板、棒鋼、型鋼、平鋼 など、多種多様な形で生産されており、構造物や建造物に広く使われ、溶接にも適しています。
熱処理はできませんが、窒化処理で表面を硬化させることができます。
装置の両側板を平行に保つための角型ステーや、丸ステーとして、また、強度が必要なブロック状の機構部品としても使われます。
表面処理は一般的に、溶融亜鉛メッキ(ドブヅケ)、または Zn-CM1 (電気亜鉛メッキ + ユニ・クロメート処理)が使われますが、内部の部品であれば酸化皮膜処理材で黒染処理するだけの場合もあります。


製鉄】 高炉の中で鉄鉱石にコークスと石灰石を混ぜて製銑される銑鉄には多量の炭素が含まれているため脆い。この銑鉄に石灰石を混ぜ、酸素を吹き込んで不純物を燃焼させてしまうと鋼(はがね)ができる。
この段階で、中に含まれている酸素を残したまま鋳込んで作られる鋼がSS材。Rim(縁)ができたような鋳塊となることからRimmed steel(リムド鋼)と呼ばれる。炭素は酸素と反応して、ほとんど抜けてしまうため、柔らかい鉄が生成される。
一方、アルミなどの脱酸剤を加えて酸素を取り除いてしまうと、中に炭素が残ったままとなるため、焼入れが可能な鋼ができる。リムド鋼の生成時には激しく火花が飛び散るのに対して、死んだような静かな鋼ということから、この鋼は Killed steel(キルド鋼)と呼ばれる。多くの鋼はリムド鋼やキルド鋼をもとに作られれています。

なお、古代の製鉄は紀元前1500年頃、始まったとされています。鉄鉱石に炭を混ぜて、送風しながら高温で燃焼させると、酸化鉄が還元されて海綿状の鉄が得られます。これを加熱しながらハンマーで叩き続けることで、不純物を押し出して鉄鋼を作っていたようです。

日本刀の玉鋼の製法はタタラ製鉄(タタラはふいごの意)と呼ばれ、海や川で採取される砂鉄が使われます。炭火に絶え間なく空気を送り、砂鉄から酸素を奪うことで還元し、取り出した鉄鋼を何度も折り返しては打つことで、鉄の純度を高めると同時に強度を高め、更には、刀の中心部に炭素含有量の低い鉄を挟むことで折れ難い刀身を実現していたのです。



熱間圧延軟鋼板
SPH (SPHC,SPHD)   熱間圧延軟鋼板)



高温状態で圧延された鋼板で、t=1.2mm〜14mm が製造されています。
圧延されたままの状態では表面に酸化膜が付着しているため”黒皮”と呼ばれています。
厳密な規格はありませんが低価格なため、強度や厚み精度が求められない用途に用いられます。




熱間圧延酸洗鋼板
SPHC-P

SPHを酸洗いして、表面の黒皮を除去した板材です。
SPCCより軟らかく加工が容易。
このままでは錆び易いため、メッキなどの表面処理をして使用します。
主な板厚は t=1.6、2.3、3.2





冷間圧延鋼板
SPCC
  一般冷間圧延鋼板
SPCD  深絞り用冷間圧延鋼板
SECC  電気亜鉛めっき鋼板



冷間ロールで延ばして作られる、低炭素量の鋼板で、曲げ加工や絞り加工に適しています。
価格的にも廉価で、広範囲に使われる材料です。
強度はそれほど強くはなく、カバーなどに用いた場合、衝撃で比較的容易に変形することもありますが、軽負荷であれば、各種機構部品としても十分使うことができます。
アングル形状にしたり、波板形状、ビード(紐出し加工)で強度を高めれば大きな荷重を支えることもできます。
バーリング加工でネジを切ったり、エンボスで突起を打ち出すことができます。無数の小さな打刻痕を付けて表面を硬化させた板材は、全体のタワミも除去されるため、精密な電子機器の部品としても使われています。
熱処理はできませんが、窒化処理で表面を硬化させることができます。窒化処理された板材は摩擦係数も下がるため、摺動機構の寿命と信頼性を格段に高めることもできます。
表面処理は、亜鉛メッキ、ニッケルメッキ または、焼付け塗装が用いられます。
SECCは ボンデ鋼板、ジンコート、クロメートフリー などの商品名でも販売されている表面処理済みの鋼板です。板厚が0.6、0.8などであれば端面の錆が目立たないため、準外観や、装置後面にも使用可能な素材です。

板材の各種加工方法に関しては、板金加工品の設計を参照してください。


加工硬化】 金属原子の最外郭の電子は自由に動けるため、原子がきれいに並んでいる結晶の状態では、金属は比較的柔らかく、力を加えて塑性変形させると、結晶構造の面に沿って、原子が滑るように移動します。しかし全原子が一様に滑るのではなく、結晶内に不連続な転位構造が多くなるに従い、金属原子は次第に動き難くなり、硬化します。
SPCでも一旦曲げた部分は硬くなってしまい、元の形状に戻すためにハンマーで叩くと更に硬くなることが経験の上からも知られています。この現象は加工硬化と呼ばれます。
この性質は、金属を硬化させる加工法としても利用されています。リブを打つと構造的に強度が増すだけでなく、リブ部分が硬化する効果も使われることになります。また、平面のままであっても細かい打刻痕を全面に打つことで板の硬度を増すことができます。ただし、叩く、特に曲げるの回数が度を超すと金属疲労のため極度に脆弱化します。



S-C材
S20C  機械構造用炭素鋼(炭素含有率 約0.20)
S45C
  機械構造用炭素鋼(炭素含有率 約0.45)



炭素が含まれる鋼で、焼入れ、焼き戻しをして用いられます。S45C (炭素含有量 0.42〜0.48%) は代表的なS-C材です。鋼板、棒鋼の形で製造されています。
SK材やSKS材程ではないにせよ、ある程度の強度と粘りを持っているため、大型ボルト、ナット、ピンや駆動軸、力を受けるアームなど、各種機構部品として使われます。
焼入れによってS-C材は硬度が上がりますが、このままではモロくなってしまうため、温度を上げて焼き戻し(炉内徐冷)、または焼きならし(空冷)をすることで、耐衝撃性、靭性、強度が上がります。
S45Cの場合は、800〜850℃ になるまで加熱したら、油で急冷し、 150〜200℃ で1時間保持し焼き戻しします。

0.1%程度の低炭素鋼を使い、鋼材の表面に炭素を多く浸透させる浸炭焼入れは、内部に粘りを残して表面を硬くさせることができます。
また、35Cまたは45Cを使い、高周波焼入れをすると、表面だけ硬化させることができます。
S-C材は合金鋼に比べ安価で、加工も容易ですが、体積の大きな部品の焼入れは合金鋼に劣ります。
表面処理には 亜鉛メッキ、ニッケルメッキ または、焼付け塗装が用いられます。


焼入れ、焼戻し】 炭素が含まれる鉄を焼入れすると、何故硬くなるのだろうか?
鉄の結晶構造は、常温ではフェライト(鉄分子が結晶の立方体の各頂点8個 + 立方体の中央位置に1箇にある体心立方格子)の形態が安定しているが、高温ではオーステナイト(立方体各頂点に8個 + 6つの面の各中央に1個鉄分子がある面心立方格子)が安定している。オーステナイトは鉄分子間の隙間が大きいため炭素が入り込めるが、フェライトは隙間が少ないため炭素が入りこみ難い。高温のオーステナイトをゆっくり冷やすと炭素はフェライトから分離して鉄炭化物(セメンタイト)層を作る。しかし、急冷すると炭素はフェライトの結晶の中に入り込んだままの状態となるため、炭素がフェライト結晶を押し広げようとする内部応力が残留し、硬い組織になる。いわば、多数の微細なバネを結晶の中で押し縮めた状態になるため、鋼の結晶構造は動き難くなり、硬化する。
なお、鋼材は焼入れによって硬化するが、もろくなるため、強靭さを得るために、適度な温度に再加熱処理する。これを焼戻しという。


窒化処理】 大砲の砲身内面が摩滅しにくい理由が、硝煙と摩擦熱による壁面の硬化によるものであることが、ドイツのアドルフ・フライ博士により発見された。
アンモニアガスや窒素雰囲気中で500〜550℃、数時間以上暴露することで、表面(0.2〜0.8mm程度)に硬い窒化物層が形成される。
Al,Cr,Mo などを含む鋼に特に有効であるが、チタン、アルミ、SPCなども硬化させることができる。

商品名: タフトライド、マルチナイト など



高張力鋼材
SM50   溶接構造用圧延鋼材
HT50   溶接構造用圧延鋼材

合金成分などを調整してSS材より強度を高めた鋼で、鋼板の形で製造されています。
船舶や車体の強度を高める目的で開発され、自動車には多量に使用されて、Si-Mn,Ni,Cr,Moなどを含んだハイテン材は、橋梁、高圧力タンク、高層ビルなどにも使われています。
自動車のアルミ軽量化が進まないのは、同じ強度なら高張力鋼の方が車体を軽くすることができるからと言われています。
表面処理に 亜鉛メッキ、ニッケルメッキ または、焼付け塗装が用いられます。

【注】高張力鋼は高い張力に耐える鋼であって、ヤング率自体が変わる訳ではない。従って、高張力鋼を使って、板厚を薄くすることはできるが、応力による変形は大きくなってしまう。



機械構造用合金鋼

SCr430    
クロム鋼
SCM445
    クロムモリブデン鋼
NSCM439   ニッケルクロムモリブデン鋼

高い強度が求められる機械部品として使われているのが、機械構造用合金です。
SCr430は、大型ボルト、ナットなどに使われています。
SCM445は、安価な割りに高強度で、溶接にも適しているため、自転車のフレームなどに使われています。
NSCM439は、歯車などに使用されています。
表面処理は 亜鉛メッキ、ニッケルメッキ または、焼付け塗装が用いられます。


工具鋼
SK4      炭素工具鋼
SK5      炭素工具鋼
SKS4     合金工具鋼



SK4,SK5は焼入れによって、高い硬度が得られる鋼で、刃物、ヤスリ、板バネ、など広く使われている工具鋼です。
SKS4は、CrとW(タングステン)を含んだ、耐衝撃性の高い合金で、タガネ、ポンチ、高級な刃物に使われます。
特に強度や耐衝撃性が求められる機構部品として使うことができます。
比較的錆び難いため、そのまま使われることもありますが、黒染、ニッケルメッキなども使われます。


S32CC5V  S55CC4V  クロムバナジウム鋼
SUP10     バネ用クロムバナジウム鋼

バナジウムを含む工具鋼は優れた特性を持っているため、高級ドライバーの先端チップや過酷な耐久性が求められるトーションバネなどに使われます。



ステンレス鋼
SUS303    快削ステンレス
SUS304    耐熱ステンレス
SUS430    磁性ステンレス
SUS416    快削ステンレス

クロムを10.5%以上含む鋼はステンレス鋼と呼ばれ、文字通り錆び難い鋼となります。錆び難いのはクロムが表面に酸化膜を作るためです。
SUS303は、軸、板の形で製造され、加工性も良。 ボルト、ナットなど
SUS304は、ニッケルを含むステンで、軸、板の形で製造され、耐蝕性にも優れ、非磁性
SUS430は、鉄とクロムを主成分とするステンの板材、磁性、廉価、加工性良、304に比べやや腐食しやすい。
SUS416は、主に軸で製造さてている。S,Pb,Seが配合されているため切削加工が容易。若干腐食しやすい。

耐塩害や耐候性が必要な環境で使用する場合はSUS304が必要ですが、材料費に加え加工コストが上がります。
加工が容易な、SUS416や430は、SS材にメッキをかけるより廉価になる場合も多いようです。
SUS430は磁性があるため、マグネットの吸着力を利用することができます。



酸化皮膜】 金属が腐食されてできるサビは逆に、金属をサビから護る働きも持っています。ステンレスは「サビない」を意味しますが、実は緻密なサビの膜が素早く表面にできることで内部を保護している金属です。
ステンレスだけでなく後述のアルミや銅合金なども表面に酸化皮膜が発生し易く、酸化膜ができてしまうと、メッキやハンダ付けが困難となってしまいます。昔、ハンダ付け前に塩酸を塗っていましたが、これは塩酸が持つ酸化膜除去作用を利用したものです(もっとも、塩酸が残ると金属を腐食してしまうため今では見られなくなってしまいましたが、)
しかしこの方法は有効で、酸化皮膜を除去することで、ステンレスやアルミをメッキしたりハンダ付けすることが可能となります。



非鉄金属

黄銅
C2700 (BsB)   黄銅
C3602 (BsBM)  快削黄銅



黄銅は真鍮(シンチュウ)とも呼ばれる黄色みを帯びた金属で、銅と亜鉛を主成分とする合金です。
腐食しにくく、比較的柔らかいため、加工は容易です。5円硬貨も黄銅です。
C2700は、棒形状、板形状で製造され、配線器具、カラー、カシメ部材などに適しています。
C3602は、鉛が含まれるため、切削性に優れ、精密な軸加工に適しています。
美観を保つためにはニッケルメッキをします。


リン青銅
C5191   (PBB2)   バネ用りん青銅



Cu(銅)を主成分に、Sn(スズ)、P(リン)を配合した合金です。
バネ性を持ち、高強度で電導性に優れているため、板材はスイッチ接点やコネクター端子に用いられます。
りん青銅、またはその鋳物は耐磨耗性が高いため、すべり軸受けにも用いられます。

【注】一般的な機器には摩擦係数が低いためボールベアリングが多く使われますが、ボールベアリングは点で荷重を受けるため、小径のミニチュア・ポールベアリングでは騒音や寿命の点で問題が伴う場合があります。軽荷重の用途には、多孔質の含油軸受け、またはテフロンを含んだドライ軸受けが多く使われています。
また、軸径が70〜80mm以上で3000rpmを越す場合も、転がり軸受けは寿命の点で不利になります。高速で大きな荷重を受ける場合は、りん青銅などを使った滑り軸受けが有利になります。軸受け内部に油溝を切ったり、カーボンとの複合構造にします。


アルミ合金

A5052    耐食アルミ
A2014    高強度アルミ
A2024     超ジュラルミン

アルミニウムは比重2.7と軽く、熱伝導性も良いため、食器を始め多種用途に使われます。
板材、棒材があります。
A5052は、適当な強度があり、機械加工性も良いため、軸や板材として広く使われています。
部品としてこのまま使えますが、陽極酸化でアルマイト層を作ると表面が硬化して傷がつき難くなり、またアルマイト層の表面に形成される微細な孔に着色材を加熱処理で封じ込めることで、着色アルマイトができます。白アルマイト処理記号はWA, 黒アルマイトは BA です。特にBA処理は、熱伝導性に加え、熱輻射機能を高くすることができるため、放熱性を高めることができます。
アルミ押し出し成形は、アルミサッシに見られるように、一定断面形状でアルミをダイスで押し出す成形法で、小さな断面であれば比較的低コストで型を起こすことができ、断面の一部が欠けたネジ下穴を形成することもできます。多くのヒートシンクも押し出し成形で作られています。
アルミを使う上で制約されるのは、スポット溶接が出来ないこと (ただしTIG溶接と呼ばれる、不活性ガスを使った交流溶接は可能)。 また、塗料皮膜が剥がれやすいため、通常の塗装には適していません。シルク印刷なども特殊のインクで行う必要があります。また、アルマイトは絶縁面となります。


マグネシウム合金
AZ31     マグネシウム構造材



マグネシウム合金は比重が1.8と、アルミを越す軽量素材で、高い強度があるため、カメラや薄型ノートパソコンなどに多く採用されている素材です。
特徴としては、アルミに比べ、比熱が小さい、切削加工が容易、振動エネルギー吸収性が良い、などですが、欠点としては、古くはマグネシウム粉末がフラッシュとして使われていたように、発火しやすいことです。しかしこれも、近年改良されてきているようです。
マグネシウム合金の用途は今後更に拡大する可能性があると考えられます



焼結金属
SBK                 銅系焼結合金
メタルインジェクション素材  Fe,Ni,SUS系



焼結金属は、細かい粉状の金属を焼き固めた状態の金属です。型成型が必要なため量産が前提となります。
最も普及しているのは、銅系の焼結合金で作る軸受けです。焼結金属の隙間にオイルを浸透させた軸受けは注油が不要なため、オイレス軸受けとして多種販売されています。
焼結合金製の軸受けは比較的安価で、回り止めの付いた形状も多いため使い易いのですが、注意点としては、規定以上の力で厚入すると変形してしまうこと、リーマ加工をするとオイル孔が潰れてしまうため厳禁、PV値は意外と小さいこと、摩擦係数も案外大きいこと、などです。(これらの特徴の多くは、ドライブッシュでも同じではあるのですが、)



メタルインジェクション・モールド加工は、アルミや亜鉛など低融点金属しか扱えなかったダイキャストと違い、鉄系の焼結成形が可能な新しい加工方法です。材料となる金属粉末と樹脂バインダーなどを金型内に射出成型後、脱脂、高温焼結するもので、切削加工に次ぐ精密さで、高密度、高強度が得られる加工法といわれています。材質も各種鉄鋼、SUSなど広範囲な素材が可能とされています。



ハニカムコア
ハニカムコアは素材の名称ではなく、素材形状を指し、蜂の巣構造をいいます。
薄いアルミ合金板を重ね、交互位置を溶着した板を拡張することで、蜂の巣状に加工し、上下をパネルでサンドイッチすることで、軽量にして剛性の高い素材が形成されます。
ミーリング、レーザーなどで後加工が可能です。
航空機の構造材としても用いられます。




プラスチック

ABS
アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンからなる重合樹脂。先頭文字をとってABSと呼ばれます。
金型を使ったインジェクション成形で、最も頻繁に用いられる素材の一つです。
ABSにゴムを加え、柔軟性を高めたABSも広く使用されています。
着色も自由であり美観に優れているため、電化製品の外装など、特別な強度を必要としない各種部品として使われています。また、低発泡させて木材の代用とする用途もあります。
弱点としては、耐候性にやや劣り、直射日光下では劣化します。溶剤やアルコールにも弱いため、洗浄にあたっての注意が必要です。
一般的なABSは可燃性ですが、難燃素材を合したFR-ABSもあります。
強化ABSはガラス繊維などをコンパウンドして作られます。


塩化ビニル   PVC  
塩化ビニル、または硬質塩化ビニルは、その殆どがパイプとして使われています。耐水、耐薬品性も高い素材です。
しかし、塩化ビニルは、機械強度の低さ、成形条件の違いによる寸法の変動、温度耐久性の低さ(50℃程度)などの理由から、一般的には機器の素材としては不適当とされています。しかし、これらの特性をわきまえて使うなら、極めてコストパフォーマンスの高い素材と考えられます。実際、水道管パイプで作った用紙搬送ローラー、用紙巻き取りパイプなどは、見た目に驚かれる以外、これが原因となるトラブルは発生しなかったというのが私的な経験です。


ポリテトラフルオロエチレン     PTFE
通称テフロンで知られる有名な素材です。
この素材は、あらゆるプラスチックの中で最も安定した素材で、耐温度は-100℃〜+260℃、吸水率0、摩擦係数0.04、不燃性、と頭抜けた特性を持っています。このため、シール材としては最適で、Oリングなどに使われています。焦げ付かないフライパンとしては誰もが知る用途ですが、粘着材にも貼りつき難いため、高級なハサミや、ピンセットの表面にも使われています。
金属の表面に薄いテフロン層をコーティング加工することもできますが、簡易的には市販されているテフロン・テープを使う方法もあります(ただし、コーティングと違い柔らかな表面しか得られません)。


ポリアセタール樹脂   POM
商品名、デルリン、あるいはジュラコンとして知られる優秀なエンジニアリング樹脂です。
耐衝撃性はプラスチック中、最大で、疲労にも強く、寸法安定性、耐磨耗性にも優れています。耐油性があり、吸水性は少ないため、少々の水分が付着する環境でも使え、弱点は少ないのですが、可燃性で、紫外線に比較的弱いとされています。
ギヤやカムとしては、後述のポリカーボネートやナイロンを越えて、最も多く使われている素材です。
インジェクションだけでなく、機械加工にも適しています。


ポリプロピレン   PP
プラスチックの中では最も普及している材料の一つ。繊維、包装材、部品材料、フィルム、等、広範囲に使用されています。フィルムとしてはポリエチレンより優れています。
菓子類やインスタント麺の包装材としても使われていますが、安価なプラスチック中では最高の耐温度性があり、100℃以上にも耐え、耐薬品性、屈曲疲労性に優れているため、食材の密封パック容器にも使われています。


繊維強化ポリプロピレン   FRPP
ガラス繊維を強化材として混入したポリプロピレンはバンパーや、遊具などの素材としても使われています。


ポリカーボネート  PC
POMと共に多く使われる代表的なエンジニアリングプラスチックです。
耐衝撃性はPOMに次いで大きく、耐候性が大きく、耐熱性は100℃以上〜-100℃。絶縁性に優れ、寸法精度が高い。
このため、電気部品に適しています。連続的な力には必ずしも強くありませんが、衝撃力には強く、透明性も良くできるため、機動隊の防護盾に使われたことは有名です。
アクリル板に比べ、熱による塑性曲げ加工がやや困難ですが、薄い板材でも高い強度が得られるため、近年はホームセンターでも販売される加工用素材になってきています。


ナイロン    PA66
ナイロンには2種類あり、ひとつは ナイロン6で、染色性が良いため繊維などに使われます。
もう一つは、ナイロン66で、工業用に使われるナイロンはこれです。
ナイロン66は、耐磨耗性、自己潤滑性に優れているので、力が掛かる部分の受け部材として適しています。歯車、軸受け、カムなどPOMに次いで多く使われています。また、ガラス繊維と練り合わせることで高い強度が得られます。
ナイロンは、熱、水、酸、紫外線に弱く劣化します。特に水分を吸収して強度が落ちてしまう点には注意が必要です。


アクリル     PMMA
透明性が高いためガラスの代わりに使われ始めたプラスチックです。空襲に飛来して墜落したB29のガラスの破片を擦ると独特な臭いを発したところから臭いガラスと称せられたのは有名な話。
切断、加熱曲げ加工が容易で、着色もでき、耐候性にも優れるため、照明器を入れ店頭の広告ボックスとしても普及。板材はホームセンターでも簡単に入手できるため、専用接着材と共に工作にも使われます。
強度はPCに比べ劣り、可燃性なため、装置に組み込む際は注意が必要です。


ポリエチレンテレフタラート    PET
正式名称を言われても判る人は少ないプラスチックですが、ペット・ボトルのペット(PET)です。
ペットボトルに圧搾空気を入れて水ロケットにしたり、切り広げて風車を作ったりしても分かるのですが、PETは材質として高い強度を持っています。フィルム素材として優れており、マイラー・フィルムの商品名でも知られています。
強度、耐久性があるため、機器の中のガイド・フィルム、操作部のシート・フィルムなどの用途で使います。




合成ゴム

ニトリルゴム
    NBR
最も普及している合成ゴムです。耐油ゴムとも呼ばれます(ただし、溶剤で膨潤するため要注意)
シリンダーのパッキン、用紙送りローラー、ゴム版、ゴム脚、などにも広く使われます。オゾンで劣化します。


クロロプレンゴム   CR
商品名ネオプレン。機械的強度、耐候(耐オゾン)性に優れ、耐熱、耐寒、耐油、耐薬品にもある程度優れ、
難燃性、低ガス透過性、接着力性もあります。
ベルト、ホース、接着材原料、スポンジ、電線被覆などに使われています。


エチレンプロピレンゴム   EPM
耐候、つまり耐オゾン性には優れるゴムですが、鉱油や有機溶剤には劣ります。
屋外で使われる防振材などに使われます。
同系列の EPDM の低硬度品は摩擦係数が高いため、用紙分離に使われます。

ウレタンゴム     UR
ウレタンゴムは力学的強度に優れ、耐磨耗性の高いゴムです。
タイプが2種類あって、
ポリエステル系のゴムは耐油性はありますが、熱と水に弱く、加水分解します。
ポリエーテル系のゴムは加水分解には強いのですが、耐油性に劣ります。
ウレタンゴムは機械加工も可能なため、型無しでのローラー加工など、少量生産にも適しています。

発泡ウレタンは発泡させたウレタンで、ウレタンフォームとして、マットレスなどに使われています。
現場発泡のウレタンフォームや現場発泡の硬質ウレタンフォームは、建造物の断熱にも広く使われています。


フッ素ゴム    FKM
耐油、耐熱、耐候性が高いため、Oリングとして多く用いられます。
価格的には高価です。


シリコーンゴム    MQ
耐熱性が高く、200℃
難燃性、電気絶縁性、撥水性、汚れが着きにくいなどの特徴もあるため耐熱ローラーなどの部品として使われます。


ブチルゴム   IIR
気体の透過性が極めて低いゴムとして有名です。耐熱、耐オゾン、絶縁性 にも優れています。
タイヤのチューブ、 防振ゴム など


【注】ゴムの材料には元々弾性があるわけではなく、生ゴムに見られるような流動体であるが、長い鎖状構造のゴム分子の多重結合部の途中途中を、硫黄で橋を架けるように結合させることで弾性が現れる。硫黄などの架橋作用のある物質を加えて加熱することを加硫と呼んでいる。過度に加硫するとエボナイトのような硬い樹脂となる。

加熱しながら加硫と共に金属と接合する方法はゴムの焼付け加工と呼ばれている。大きな接合強度を必要としない場合は、ゴムの収縮力を利用して金属軸にゴムローラーを圧入する際に石鹸水を塗布して挿入の容易化を図ると共に、接着後の強度を高める方法もある。

ゴムの硬度を調整する方法としては、軟化材の混合比を変えるのが一般的であり、ゴム硬度95°〜40°が得られる。

スポンジゴムは発泡剤により発泡させる方法が一般的であるが、液体などを含ませる目的の場合は、気泡が独立している泡では不適なため、ゴム原材料に塩を混合して加硫後、塩を水中で揉み出す方法が取られる。


複合素材

繊維強化プラスチック   FRP



特にガラス繊維を使った材料を GFRPと呼ぶ場合もありますが、単にFRPという場合は最も普及している積層ガラス布強化エポキシ樹脂を指します。
GFRPの引っ張り強さ、曲げ強さはほぼAl合金に匹敵します(ただしヤング率は数分の1)
貼り合わせ一品加工もできますが、プレスやインジェクション加工も可能。
レーシングカーのボディだけでなく、量産車両の一部にも使われます。



炭素繊維強化プラスチック  CFRP

ゴルフシャフト、釣竿、ヨット、モーターボートに加え、新世代の航空機やロケットの材料として使われています。
代表的な炭素繊維はポリアクリロニトリ(PAN)繊維を不活性ガスの中で蒸し焼きにして炭素だけを残す。
比重は鉄の1/4で、引っ張り強度は10倍。
この炭素繊維を編んで、熱硬化性樹脂で固めたのがCFRP。
価格的にはきわめて高価。

CFRP製自転車フレーム


自然素材

機器の素材として自然素材を入れるのことに抵抗を感じる人もいると思いますが、この素材の可能性を捨て去るのはもったいない話です。


皮革
牛革は、中〜軽荷重での摩擦ブレーキやクラッチ摩擦材として、優れた特性と耐久性を持っています。
また、水洗フラッシュバルブのパッキン材として牛革は、人工材では得られない耐久性を持つと言われています。
可動メカニズムで構成される遊戯機器は過酷に使われることで知られていますが、かつて米国製の遊戯機器の中には多くの牛革クラッチが使われていました。(現在では、ゴムとセラミックと鋳鉄片などを固めた摩擦材が使われるようですが、)


フェルト
フェルトは羊毛に石鹸水を含ませて揉み、繊維を硬く絡げるような加工方法で作られます。
アップリケ用の低密度品から工業用の高密度品まであります。
フェルトもまた皮革と同じく、優れた特性を持っています。
特に、ピアノのハンマーはフェルトの特性が生かされ、強い打撃音から、ごく弱い打撃音まで出すことができるのは合成樹脂では全く不可能とされています。
軽荷重で、クラッチ、ブレーキとしても使うことができます。


木材/
機器の素材として、現在の国内においては見向きもされない存在ですが、この先を考えると、極めて重要な存在になるべき材料でもあります。
特に日本には潤沢な森林木材が、儲からない林業という、お荷物状態で眠っているのです。木材を切り出しに山に入るのは、安い輸入木材をネット経由で大量に買い付ける作業に比べ、劣ったビジネスであると、誰しもが思っている限りは、まだこの国は、本質的には某国と同じ後進国の部類かも知れません。
建材としては一部で、不燃化、高強度化、高層化への試行が続いていますが、今後は、森林資源を活用する機器・機材の開発と共に、機器そのものの中に、材料として木材を取り入れる努力が望まれます。


柿渋

柿渋は素材そのものではありませんが重要な特性を持っています。
プラスチックの登場により柿渋の活躍の場は減ってしまったが、プラスチックには望むことができない価値があるため見直される可能性があります。
柿渋は6月頃の未熟な渋柿のヘタを取り、ミキサーなどで破砕し、絞って濾過した液を1ヶ月以上発酵させることで得られます。
和紙、木材、綿、麻などの素材に塗ったり浸して、乾燥させることで、素材を耐水化、強化、防腐防虫化

用途: 魚網、醸造圧搾袋、団扇、雨合羽
     板塀、柱、型紙、和傘、殺菌、防カビ、染色、石鹸





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