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板金加工品の設計

街で見かける「板金加工」の多くは、車体の凹みキズの修理のことですが、これは板金加工の特殊な例に過ぎません。


板金加工は、金属板を素材として、各種技法と組み合わせることにより、さまざまな部品を作り出すことができます。板金の素材は、範囲が広く、強度、重量、耐久性、耐候性など、目的に応じて、いろいろ選択することができます。その最大の特徴は、他の加工品に比べ、比較的安価で強い部品が製造できるところにあります。また、少量試作品から、型を使った大量生産まで対応することができます。

機械部品点数割合の中で、板金部品はかなりの割合を占めると言われています。情報機器に組み込まれる、1mmにも満たな板バネ接点から、航空機の翼と胴体、巨大建造物の骨格まで、板金加工品は現在では最も多用途に使われている加工品ともいえます。

しかし、自動車向けを除く、プレスによる絞り加工や、量産金型抜きは、残念ながら海外シフトが進み、現在の日本国内では以前ほどの活気が見られませんが、高機能、少量多品種向けの板金加工品の重要性は決して下がったわけではありません。板金加工の技術は失ってはならない大切な技術です。

このページでは主に、家電、事務機器、設備機器などに使われる板金部品の設計法を考えてみます。



板金加工法のいろいろ
                                                         写真:yahoo画像より

ボール盤 : 穴あけ
  世の中に最も普及している工作機械は、多分電動ドリルだが、その次に普及しているのがボール盤。
  量産には用いられないが、最も重要な工作機械のひとつであることに変わりはない。
 



けとばし(フットプレス): 小物板金の曲げ、抜き
  脚でペダルを蹴飛ばすようにつかうことからこの名前がある。曲げ型や抜き型をセットして各種軽作業ができる。

フットプレス

プレスによる絞り加工:  絞り型を使用して成型  鉛筆キャップから車両のボデーに至るまで、
  雄雌金型を使い、大きな圧力をかけて平板から曲面を形成。 1回で絞れない形状は、複数型で徐々に絞る。
  部品の一部のみを打ち出して絞ることもある(放熱口、補強ビード)

 プレス

プレス抜き加工: 抜き金型で打ち抜き加工   側板、プレート、フレーム など
  多数の穴加工を1回の抜き打ち作業で完了する総型や、1箇所の穴やコーナー取りをする部分型をプレス機に
  セットして加工する。抜き力に合わせたトン数のプレス機が使われる。
  総型はレーザーやタレパンに比べ加工費を大きく下げることができるが、金型費が上がる。

プレスブレーキ(ベンディングマシン)による曲げ加工:  角度曲げ
  板材を曲げる場合に普通使われる加工機  NCで自由な角度曲げができる加工機もある。
  ダイのV溝部に、パンチの刃を一定量押し込むことで、板金を曲げる。押し込み量の加減で曲げ角度を調整することができる。
  コの字曲げ用パンチとダイを使うこともできる。
  ダイあるいはパンチは、組み合わせにより、必要な曲げ幅にすることができる。
  板の材質や板厚のばらつき、板目との角度等で微妙に曲げ角度や曲げ内Rが変わってくる。
 プレスブレーキ

タレパン(タレットパンチ)による打ち抜き加工:  回転タレットに多数の雄雌型を装備した装置で、丸穴、角穴、つなぎ抜き
  異形穴、エンボス、バーリング下穴など。 打ち抜き加工機では最も普及している。
  基本的な抜き穴をつないで抜ける限り、タレパンは高価な総型を起こさないでもほとんどの穴加工をこなすことができる。
  ただし、つなぎ抜きにより縁のタレが不連続となるため、外観部品には適さない。
  また、市販の丸抜き型を使った場合0付近の公差となるため、メッキ後はマイナス寸法となることに注意。
  鋭い抜きバリが発生するので、メッキまたはバリ取りが必要となる場合がある
 タレットパンチ

レーザー加工機による加工:  自在な穴形状および外形加工   タレパン機能を備えたレーザー複合機もあり
  簡易的なレーザー加工機は表面彫刻専用だが、大型レーザー加工機は20mmを超える板厚切断も可能
  加工精度は打ち抜き加工には及ばないが、100分の5程度の精度も可能。
  試作〜数十個単位の加工に適している。
  機械打ち抜き加工と違い、セッティング条件により加工寸法誤差やバリの量が変わるため、管理が必要である。
 レーザー加工機

ヘラ絞り加工:  円盤状の板材を回転させながらヘラで徐々に絞る加工  食器、照明器具など
  専門技術を持つ工場がある。
 ヘら絞り加工

型を使わない曲面加工: 船舶外板はバーナーによる線状加熱の塑性変形  新幹線先端カバーはハンマー打ち出し加工
  職人技による一品製作

シャーリングによるせん断加工:  素材板の切断
 シャーリング加工機


アーク溶接: 中型〜大型部品 までの代表的な溶接方法
  母材と溶接棒の間に火花放電を発生させて金属を溶着。 ただしアルミのアーク溶接は困難。
  板と板だけでなく、板と軸、板とブロック鋼材を溶接することも可
 アーク溶接

スポット溶接: 2枚の板材を両側から銅電極で挟み、大電流を流して抵抗発熱による溶着
  絶縁性材料はスポット溶接不可。 銅、アルミなど、電気抵抗が低すぎる材料も不適。
  板部材上に別アングルを結合したり、複数の板部材を立体的に組み立ててモノコックボディ構造にすることも可
 スポット加工機

アルゴン溶接:  不活性ガスであるアルゴンガス中で同素材を使い電気溶接するため 変形が少ない精密溶接が可能
  アルミ同士の溶接も可能
  アルゴン溶接機

ろう付け : 銀ろう、ハンダによる簡易接合
  余談だが、アルミはハンダ付けできないと思われているが、これはアルミ表面にすぐ酸化皮膜ができてしまうため。
  アルミの上にハンダを盛りながらコテで擦ると酸化皮膜が内部で剥がれてアルミとハンダが融着する。
  この原理は他にも使える可能性がある。

接着剤: 面と面の接合には有効  エポキシ系接着剤  嫌気性ロックタイトなど

リベット: 古典的な手法だが、加熱による変形変質を伴わないため、アルミの接合に有効。
  接着剤と併用することで高い強度を得ることも可能
 リベット加工

ワイヤカット: 細いワイヤ電極を巻き取りながら、火花放電でNC加工する。
  金型製作に用いられる。 加工速度は遅いが多数枚の板金を同時に切断することができる。
  ワイヤカット加工機

放電加工:  原理的にはワイヤカットと同じだが、ワイヤ電極ではなく、メス型の電極を使い放電で加工物を彫る。
  彫りこみ 金型製作
  放電加工機

爆発加工 :  火薬爆発の圧力を利用して絞り、深絞り加工  チタンなどの難材の加工も可

腐食(エッチング)加工: 腐食液を使い、材料の不要部を溶かして除去する。
  素材表面は予め感光レジスト膜を塗布し、パターンを露光して硬化させ、腐食しない部分に保護膜を作り腐食する。
  リーフや微細穴加工、 プレート、精密ネット

シルク印刷:  表面に図柄や文字の印刷
  シルク印刷機


曲面印刷: シリコン型による転写印刷

バリ取り: 板金の穴あけ、打ち抜きに伴い発生するバリを取る加工。 回転ブラシ、バレル研磨、化学研磨など
 バレル研磨機

バフ研磨: 柔らかい布などでできた、バフと呼ばれる研磨帯(盤)を高速回転させ、砥粉を付けながら加工物の
 表面を磨いて艶を出す加工
 バフ研磨機


メッキ処理

亜鉛メッキ
鋼材の表面は錆びが出るため、表面を亜鉛で電気メッキ処理後、表面を保護するためクロメート処理する。
処理記号: Zn-CM1     膜厚: 5〜20μ

ニッケルメッキ
電極を使った電解またはイオン還元による無電解法でメッキ層を形成する。
処理記号:
     Ni    (電解)       膜厚: 3〜20μ
     KNi   (化学ニッケル)  膜厚: 3〜8μ

クロムメッキ

クロムメッキ、高耐磨性、保護性の高いメッキ
処理記号:
    Cr                膜厚:0.1〜0.5μ
    HCr  (硬質クロムメッキ) 膜厚:3〜7μ

アルマイト処理
アルミニウムの表面に陽極酸化膜を作り、硬化させる処理。表面は絶縁される。
処理記号:
     WAM  (白アルマイト)   膜厚: 6〜10μ
     BAM  (黒アルマイト)   膜厚: 15〜30μ
     Hal   (硬質アルマイト)  膜厚: 10〜100μ

黒染め:
黒染め液を使い、鉄の表面に四三酸化鉄膜をつくり保護する。表面が太らない。
処理記号: BK




塗装/表面処理

焼付け塗装
: アクリル系、ウレタン系塗料で 120〜200℃、30分程度焼付けることで、自然乾燥より硬い表面皮膜が形成される。

静電塗装: 塗料を霧状にして静電気力で付着させ焼付ける。 量産向け

粉体塗装: 溶剤や水を使わず、粉体塗料を静電気で付着させ、焼付けする。 皮膜が厚くなる傾向あり。溶剤を使わないため 環境設備の負担が少ない。

焼入れ: S45C、SK、バネ用炭素鋼板などを加熱急冷後、靭性を高めるため、焼き戻しする。一連の工程をQTという。
 部分焼入、全体焼入れ、高周波焼入れ(表面焼入れ)

窒化処理: 窒素化合物を熱処理で表面だけを硬化させる。 処理時間は数時間〜50時間  摩擦抵抗軽減
 メッキ無しでも防錆効果あり(ただし、色は黒色または灰色) SPCCでも表面が硬化する。
 タフトライド、タフトライト、イソナイト などは何れも窒化処理ないし窒化浸炭処理の商品名。

SB(サンドブラスト): 金剛砂の砂吹き処理で表面美観処理、 ヘアライン処理も同類 (SUS304には不適)

サンダー加工
: 溶接箇所を滑らかにしたり、バリ取り

パテ埋め: 溶接の接合部分をパテで補修したあと塗装する。



主な板金素材

● SPCC
もっとも広範囲に使われている一般用の冷間圧延鋼板で、価格は鋼板の中でも安価。防錆のためのメッキ処理、または塗装が必要
SPCD,SPCEは深絞り用の板材

用途: ケース、機枠、側板、パネル、フレーム、カム、アーム、アングル、ボディ、管、外壁、その他の板状部品

強度: 強い応力や、繰り返し応力が加わる用途には一般的には不適。 しかし、折曲げや、打ち出しリブを入れることにより、何倍も強度を増すことができる。 また、加圧摺動する部分にSPCCを使うと、2〜3か月で摩滅してしまうところにグリースを併用するだけで10年以上の耐久性が得られるなど、単に高価な素材に頼るのではなく、潤滑や表面処理でSPCCの弱点をカバーすることもできる。潤滑グリースが使えない場合は、SPCC表面を窒化処理することで防錆、低摩擦化、耐磨耗化することができる。

標準的な板厚: 0.4、0.5、0.6、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.3、2.5、2.8、3.2 


●SECC
電気亜鉛メッキ済みの鋼板、 商品名「ボンデ鋼板」または「ジンク鋼板」と呼ばれる場合もある。 家電製品などに多用されている。ただし、切断した場合は切断面に防錆皮膜が形成されることをうたう商品もあるが、レーザーカットした場合は無効である。
クロムフリー」は、六価クロムが含まれない環境対策を重視した鋼板で、近年一般化しつつある。

素材厚:  ほぼSPCCの板厚をカバーしているが、メーカーにより差があるため注意が必要、特に海外においては代表的な板厚、1.0,1.6,2.0などは比較的容易に入手できるが、他の板厚は普及していない場合がある。

剛性:  SPCCより強い。


●ステンレス鋼板
SUSは、SPCCより強度があり、各種部品に加工可能  ミガキ材は外観部品としても可

SUS304  別名18-8ステンレス  耐錆、耐熱、非磁性、高強度  SUS430に比較して加工が困難で高価格
SUS304-CSP  板バネ鋼  焼き入れ処理をしないとバネ性は少ない
SUS430  磁性  加工し易く廉価  304に比べ塩水などで腐食しやすいが、室内用途なら錆びは出ない

標準的な板厚: 0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8 0.9、1、1.2、1.5、2.0、2.5、3、4 
SUS304-CSP :0.1、0.12、0.15、0.2、0.25、0.28、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.4、1.4、1.6


●その他の鋼板
SK4、SK5  炭素工具鋼  焼き入れ材  高強度、耐磨耗
S45C  ミガキ平鋼    焼き入れ材  高強度
SS41(SS400)  一般構造用圧延鋼材  SPCより高強度




●アルミ合金板
価格はSPCより高いが、重量は約3分の1と軽く、錆びないため多用途に使われる。
板厚もSPCより厚いものがあるため、マシニングセンタによる切削加工も可
表面をアルマイト処理することで、硬化、美化することができる。

A5052  最も一般的な耐蝕アルミ合金
標準的な板厚: 0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.5、1.6、2、2.5、3、4、5、6、8、10、12

A2024  高力アルミ
標準的な板厚: 0.8、0.9、1、1.2、1.5、1.6、2、2.5、3、4、5、6、8、10、12

弱点
 塗装が困難(剥がれ易い) 
 レーザー加工が困難
 鉄鋼との溶接は不可


●その他の非鉄板材
C5191P、C5212P    りん青銅  電気接点  耐磨耗性
C5210P    ばね用りん青銅
C2801P    黄銅 高強度
C2600P    黄銅 深絞り用



図面作成上の注意
図面記号だけでは不十分な場合は、図面中に注意書きを入れること。特に重要な内容は「注書き欄」では無く、図形から直接引き出し線で指示する。また、目的用途を簡潔に記して加工者の注意を促してもよい。
 例: 
  外観面につきキズなきこと
  指示面側にスポット凸痕禁止
  指示範囲の角隅部は補強部材の溶接禁止
  折り曲げのための切り欠き幅3mm以下
  操作部につきバリ不可
  指示面は用紙搬送面につきバリ禁止
  溶接位置決めのためのエンボス可




板金の曲げ位置
板金の曲げ内寸法は、少なくとも板厚の1.5倍を確保します。こうすることで、正確な曲げ寸法が得られます。
曲げに接近した穴は、ニゲの切り欠きを設けます。



板の端部で曲げが必要な場合は曲げの逃げを設けます。
また、曲げに接近した穴が必要な場合は、下図右のように曲げ逃げの穴を作ります。


コーナーの曲げは下図(上)のように隙間を設けますが、隙間ができると困る場合は、下図(上)のように隅部を、突き当てて曲げることも可能です。
←突き当て曲げ





スリットやVノッチで穴の変形防止
写真下のように、曲げ位置に予めレーザーでスリットを入れておいたり、曲げ外にクサビ状のVノッチを打ってから曲げると穴の変形を抑制することができます。






補強リブ
補強リブ を打ち出すことにより、曲げ部の強度を増すことができます。





ビード(紐出し)
板金を紐状に打ち出す加工方法です。板金は平面のままでは強度が低く、容易に撓んでしまいますが、ビードを打つことにより大きな強度を得ることができます。平行に複数本のビードを加工したり、クロスに打つ方法もあります。
強度以外の目的として、
 静電気による用紙吸着防止のためのリブ
 感光ドラム式プリンタの熱定着に伴う装置内結露対策として、搬送面のリブ
があります。 ビードを出した後、ビードの凸側を曲げ内側にして、直角方向に曲げることもできます。







切り上げノッチ

上図のように切り上げたノッチは、部材間の位置決めや、組立ての位置決めに使われます。
なお、「ノッチ」は「クボミ」または「刻み」の意味に使われる言葉で、業者によっては別表現が用いられます。




タップ加工とバーリング
  タップ加工できる最小板厚
ネジの種類    通常負荷    軽負荷
M2          1.2        1.0
M2.6         1.2        1.2
M3          1.5        1.2
M4          2.0        1.6
M5          2.3        2.0
M6          3.0        2.5
M8          3.5        3.0

板厚が薄いため、ネジが立たない場合は、バリが立った穴を穿け、この穴にネジを切ります。
記号は M3BR 、M4BR のようにBRを付けます。(加工標準参照)







抜き加工の限界寸法






曲げの限界寸法


板金の曲げ角度の許容差は ±1°
縁から曲げ内までの限界寸法は 3.5t





曲げ内Rを小さくする
最小曲げ内Rは、
SUS430 で1t
SPCCで 0.5t〜1t

トライキング(突起付きのパンチ)を使うか、下図のように曲げ内側に予めVノッチを打ってから曲げることで、曲げ内Rを0に近づけることができます。





板材の圧延方向
圧延板には、板目があるため、バネ鋼などの硬い板材を使う場合は、図面に 「圧延方向⇔」 の指示が必要です。
繰り返し応力に対する強度を上げるためには、圧延方向に直角に曲がるようにします。
また、曲げ加工が必要な場合は、圧延方向と45°にして、曲げ加工と応力による曲げが両立できるようにします。





スポット溶接


二つの板部材をスポット溶接で組み合わせる場合は、上図のようなSPW記号を使い、おおまかな溶接位置と個数を示します。
なお、外観に支障がなければ、例のような、位置出し基準穴(φ3穴)と打ち出しエンボス(φ2.9 打ち出し高さ=1/2 t)を用います。



下図は折り曲げた自部材のコーナーをスポット溶接により箱形状にする方法。
部材全体の強度を向上させる目的としても使われます。






曲げに伴う変形の対策
板金を曲げると曲げ部に変形が発生します。下図左のような曲げにはならず、実際は下図中央のように、曲げの変形が発生します。この変形は、板金部材の端面を他の部品に突き当てて使用するような場合は障害となるため、下図右のように曲げの角部を削除するなど、ニゲを施します。




また、この曲げ内側への膨張は、誇張して図示すると、下図上のように、長尺のアングルを変形させます。
この変形を、逆に曲げて補正することは必ずしも容易では無いため、下図下のように、二つのアングルを逆側に当てて曲がりをキャンセルする方法が有効です。






板金カバー
装置寸法が100〜800mm程度までの装置の場合、装置の外装カバーは、t=0.8 または 1.0  SECC の板金カバーを使用することができます。

角部の突合せは、粗いピッチの点付けで板あわせをした後、必要強度が得られる程度の溶接をしたあと、ディスクサンダーなどで角研削、パテ埋めで仕上げます。
カバー内面はコストダウンのため塗装は不要 (板金切断面に塗装が必要な時は指示します)

加工工場が確定している場合は、工場の設備に合わせて、最適な部品形状を決めることができますが、加工先が不特定の場合は加工機や加工技術が異なるため、溶接による板継ぎの寸法等は省き、出来上がり外形寸法のみ指示します。


板金カバーの例)





側板間隔の精度の確保
装置の主要な機構を側板でサポートする構造は広く用いられていますが、カバーなどを取り付けると、側板に歪みが発生して障害を引き起こす原因となります。これを防止するには下図のように、フロートさせて取り付ける方法が有効です。





金型無し、または汎用金型で加工できる形状
以下の部品形状は専用の抜き型や曲げ型がなくても、タレパン、レーザー、プレスブレーキなどで加工することができます。
左下の大きな曲げRは、三本組ローラーで曲げることもできますが、プレスブレーキで位置を少しづつずらしながら浅く突いて曲げ加工することができます。






【後記】 日本の町工場における板金加工のレベルは、多分、戦前からかなり高く、ブリキやトタン、時には米軍払い下げ品を素材にした各種加工が行われて来たようです。夜店で売られた金魚ジョウロや、ポンポン船も、見よう見まねであっという間に各地の下町工場に広がっていったに違いありません。欧米での業者組合内、あるいは一部の学術研究機関内で発達した歴史とは根本的に異なった背景を持っているようです。

戦前どころか、種子島伝来以前からこの国には、そういった「見よう見まね文化」があったのかも知れません。「見まね」は悪い意味合いで取り上げられるケースが多いのですが、芸術でも学問でも、最大のオリジナリティ-は模写模倣からスタートすることは確かであり、漢文の丸暗記が、長きに渡って日本人の脳を鍛えてきたように、モノ作りの世界でも模倣こそは、最大の武器でありえたのです。

以前から、海外に出向く機会のある折には、現地の現場工場を垣間見させてもらうようにして来ましたが、板材の曲げ断面、旋盤の切削屑、工具の手入れ加減、どれを見ても、その国のもの作りの水準が一目で感じられるものですが、ここ数年、特に日本近隣の国々の下町工場で作りだされる部品品質の変貌には凄まじいものがあります。日本製工作機械が入ったせいだと、現実を認めたくない輩は言うでしょうが、それは全く的外れな偏見でしかありません。

この東アジア周辺に、見よう見まね文化が広がりつつあるのです。日本の加工製造技術が拡散し、この東アジア一帯で開花しつつあるのです。加工技術ばかりでなく、設計技術も広がりつつあるのを、肌で感じるこの頃です。最近、私は会ったこともない海外の加工先に設計図面をメールで送ることもあるのですが、回路基板にせよ、機構部品にせよ、間違いが起こることはまずありません。
このこと自体は、極めて嬉しい事実であるのですが、反面、各種問題で少なからず頭を痛めた国内での、ここ10年を思うと、過ぎる不安を払拭するのは困難でもあるのです。










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